《……》 ←これの読み方
第二回ですが暫くは基礎的な事をやっていきたくおもいます。
お付き合いいただけましたら幸い。
さて、皆さま、この『こゆるりとした創作論』を読んでいらっしゃると言う事は、少なくとも創作論に興味がお有りと判断致します。
そして、その内の大半の方は小説を書いたことのある方でしょう。
そもそも、『小説家になろう』というサイトですから、小説家を志望している方が大半を占めているのは当たり前の事なのですが。
そんな小説家志望の皆様は、果たして、始めて書いた小説をどのようにして書きましたか?
原稿用紙? ノート隅? テスト用紙? それともパソコンを使用してメモ帳やWordを使用してのあれやこれやでしょうか。もしかすると、スマホや携帯のメールを利用して、なんていう方もいらっしゃるかも知れません。
現代は多種多様な執筆用ツールが氾濫している時代です。ものを書くための道具がこれほどまで多種多様に取りそろえられ、かつ、人々が簡単に手に取りそれを発信できる時代は初めてのことでしょう。
人類有史以来の希有なこの状況を皆様は当時代的に体感していらっしゃるわけですが、その最中において更に小説というけったいなものを書こうとしていらっしゃる。
同時に、前提として皆様は学校教師からこう言われて育ってきているはずです。
「ものや考えは自由に書き記し、表現しても良いんだよ」と。
日本国憲法においてもそれは保証されております。別の法律においては、他者に不利益を与えた場合罰則が加えられますがなんのその。こと、言葉による表現とは自由でなくてはならない、という一種の盲目的そこかしこにあるわけです。
さて、それらの前提を踏まえた場合、一つの問題を抱えるパターンがあります。
「なら、原稿用紙の使い方とか、小説の型とか、そんなの知らないし分からないから、自由に書いてもいいよね? 先生とか、みんなもそう言ってるし!」
大分バイアスのかかった書き方をしておりますが、概ねこういった意見を持たれる創作志望の中高大学生は少なからず存在します。実際、筆者は高校の文芸大会などに幾度か出席したことがありますし、他の場面でも様々な地域の学生と交流させていただきましたが少なくない回数、上のようなことを口頭で言われたことがあります。
ですが、これは大変危険な考えであると言わざるを得ません。
そういうわけで、今回はこの原稿用紙の使い方と小説の型について簡単に説明していきたいと思います。特に後者については、中々どうして一口に言える話ではございませんので、時と場面を見てサイド取り合えるのを前提に、簡易な説明に留めたく思います。
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原稿用紙の使い方、と言いますと、読んで字のごとく「原稿用紙」を「正しく使う方法」の事だと思われる方が多数かと思います。実際の所それで間違っていないのですが、今回はそれを別の言い方になおしたいと思います。
すなわち「文章規則」です。
皆様は、中高大学と様々な場面で作文や小論文、レポートを書かれていることと思われますがそのたびに口酸っぱく先生・教授から文章規則について注意されたのではないでしょうか?
そして、そのたびに、小説を書いている人間としてそんな基本的なことを何度も言わなくても、と聞き流している人が大半でしょう。
ところがどっこい。どっこいです。実のところ、プロ作家でもこれを正しく把握していない人がおられます。そしてそのままに、文庫本として発売されてしまうケースもあったりしたり……その場合は、正直なところ作家の責任と言うよりは校正・校閲などを担当された方の責任ではありますが、それはともかくとしまして。
こと、作文や小論文などに使われる文章規則というのは原則として、小説にも適用されます。
第一回で説明していた「文頭の一マス」はその代表的一例ですね。
ともあれ、一言に文章規則といってもその数は膨大きわまりありません。細かいことをあげつらっていったらそれだけで本になってしまいます。
なので、こと『小説家になろう』においてよく見かけるありがちな間違い二つ、三つほどピックアップして数回にわけて説明していきたく思います。
◆◆◆
《三点リーダ》
さて。皆様、特にPCの前にお座りの方は《三点リーダ》と入力し変換してみていただけますと幸いです。お使いの文字入力ソフトによっては変換候補に出てこない場合がありますが、半数くらいの方は…が出て来たのではないでしょうか。
そう。ライトノベルのみならず、小説を読んでいたらよくよく見かける、沈黙や間を表現する点々です。これのことを正式には「三点リーダ」といいます。
使用タイミングについては、皆様よくご存知だと思いますが、基本は沈黙、間の表現。イレギュラーですと目次項目や大段落の区切りを見やすくするためなどに使用しますでしょうか。
概ね、どのように使用してもよい(ただし、時と場合と状況に即してわかりやすく、違和感がないのが前提ですが)ものですが、基本としては「……」という二つが最低限のワンセットです。つまりは、「……」や「………」といった使い方はよいのですが、「…」という使い方は、よろしくない。
さて、ではこれの使用方法でよく見かけるミスでとても代表的なのがこれです。
「・・・」
皆様も、一度や二度、見かけたことがあるのではないでしょうか。
そう。ここまで読んできたにとっては自明かと思いますが、「・」を三つ並べて、三点リーダの代わりとして使用しているミスです。
大抵の場合、これの原因は三点リーダの変換の仕方が分からない場合に起こります。
「……」というのはよく見かけるけれど、あれを変換で出すには如何すればいいのだろう、と。実のところ、『てん』で変換しますと、大分後方ではありますが変換できます。三点リーダ。また、「・」からも変換できたりしますが、なにぶん文章ソフトによっては出てこない場合もありますから、確実なのは三点リーダを文章ソフトの単語として辞書登録するしかありません。
なので、そこまでの手間暇を掛けたくない。あるいは、書き始めたばかりでそこまでの知識がない、と言う方はとりあえず、これで代用しようと「・・・」のような表記をするわけです。
ちなみにこれは、正式には「中黒」という記号で、使用方法は単語の並列の際に区切ったりするときに使います。
三点リーダ・中黒、みたいな使い方ですね。他、数学記号としては中点という呼ばれ方もします。
じゃあ、なぜ「……」は良くて「・・・」ではダメなのか、というお話ですが――これは、説明しても、納得してもらえない方には納得してもらえない場合が割とあります。
幾度説明しても、幾度解説しても「・・・」でいいや、と言う方はどうしてもこちらを使用するのです。
で、その肝心の理由についてですが、一言、画面が煩雑になる、からです。もっと直截な言い方をしますと、汚くなるのです。
また、今回の始まりに戻って原稿用紙的な話をしますと、「……」ですと二マスですが、「・・・」だと三マスになります。用紙や文字とのバランスが悪い上に、三マスも専有するとなると大変勝手が悪い。
そうした理由から、文章規則上は沈黙や間を表す場合は「……」の方を使用することになっています。
また、そもそも「・」には三点リーダとしての役割が与えられていませんから、記号の使い方としてはおかしいわけです。
多少画面が煩雑になってもわかればいいじゃん?
と、この説明で思われる方が実のところ結構いらっしゃいますが、例えば、小論文やレポート。果ては小説の大賞に応募する際、この表記間違えは減点対象となります。特に、誤字脱字、誤表現は言葉の誤りやイージーミスなど、どうしても起こってしまうミスとして減点も低くすみますが「・・・」の場合は、まず、小説や文章の書き方を知らないど素人、とそれだけで判断される場合があります。
第一回の項目で、国語教師を例えに出しましたが、小説の大賞で下読みをしていらっしゃる方々というのは基本は、バイトです。中には、編集が直々に読んでくれるという会社もあるようですが――その場合でも、最初のふるい落としの段階では、読み飛ばされるのが前提です。
その中で、「……」と「・・・」のミスというのはとてもわかりやすく、大きなミスです。「・・・」が何度も使われているというのは、作者がどのような文章練度にあるかを指し示すかなり初歩的なバロメーターだと言わざるを得ないのです。
内輪だからいいじゃん。別に大賞とかに応募するつもりもないし、評価も気にしてない。
そういう方もいらっしゃることと思います。
ですが、ここは『小説家になろう』で、書かれている文章は「一般に公開」さてれており、評価システムまで実装されている親切設計なサイトがここです。
実際に見かけた方の中には評価や感想を求め、「文章指南や厳しい所、面白くないところがあったら指摘してください!」という旨の依頼を他人に投げかけながら、幾度となくこのミスを指摘されているのになおさない方がいらっしゃいました。
ですが、一つ前提として言えますのは、これは「文章規則」だということです。
規則とは即ち、守らなくてはならないルールです。文章規則ですから、文章を書く上では最低限守らなくてはならないルールな訳です。それを破るには、明確かつ強い意図の元でリスクを背負って行わなければなりません。
例えが偏りますが、ペナルティーエリア内でGKが居ないからと相手FWのシュートを後ろからのスライディングで阻止するようなものです。当然一発レットですが一点が入らないというリターンがある。しかし、同時にその後はPKですから、七割以上の確率で点を取られる。
リスクとしては、これくらいの大きさな訳です。例えがアレですが。
文章規則は、大変、面倒くさい上に、自分は把握している陥穽にはまりやすい項目です。
特に、知っている人間からしてみるとこれが守れていないのは無条件で失笑される原因となりがちなルールでもあります。
同時に、誰もが小説を書き始めたときは知っていたつもりだったのに知らなかったりする項目でもあります。
「・・・」と「……」の違いなどはその代表的なものです。
どうか、一人でも多くの人に読んでもらえるようにとお悩みの、書き始めたばかりの方は一度、『国語便覧』を手に取ってみてはいかがでしょうか。あるいは、国語の教科書の最後の方に、ひっそりと載っていたりもします。学生でない、あるいは大学生であるため手元にそういったものがないという方は「原稿用紙の使い方」や「小論文の書き方」などで検索すると、その手のサイトが見つかることでしょう。
意外と、自分の知らなかった知識がそこに転がっていたりするので、一度は調べてみることをお勧めしますよ?
さて、今回はこれまでです。ではでは。