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五:姿勢 みにいくの違い


彼女の父が、入院した。


彼女に言われる。


――明日、一緒に来てくれる?


うん、見に行こう。




翌日、病室。

軽く会釈をして、椅子に座る。

世間話を少し。

体調のことも、少し。

でも、それだけ。

長居はせず、


じゃあ、また来ます。


そう言って、部屋を出る。




帰り道、

彼女はあまり話さない。

しばらくして、ぽつりと。


――……“見に”来ただけ、だったね。


言葉が、残る。





もし、違う“みに行く”だったら。



彼女の父が、入院した。


――明日、一緒に来てくれる?


うん、看に行こう。



翌日、病室。

ベッドのそばに立つ。

顔色を見る。

声の調子を聞く。


痛いところ、ないですか。


コップの位置を直す。

少しだけ、背もたれを上げる。


無理しないでくださいね。


ちゃんと向き合う。




帰り道、

彼女が小さく笑う。


――ありがとう。


その一言で、十分だった。




同じ“みに行く”でも、

向けているものが違う。


次話は明日朝7時に投稿します。

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