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第16話 コルダ地方動乱 コルダ平原の戦い 二日目

第16話です


会戦二日目、戦況は動き、判断の重さも増していきます

今回は戦闘と、その裏で進む“運用”が中心の回になりますので

よろしければお付き合いください。

最初のコルダ平原での戦いから一夜が明けて、早朝にゲス・イネンさんの兵士に呼ばれて本陣の天幕に入ると、そこにはゲス・イネンさんとライアスさんが今後の作戦について話し合っていた、いや、俺から見た光景は二人が今後の方針で口論になっている様子だった


「だからさっきも言っただろう? ライアス……ユウマ殿の完全蘇生の魔法はこちらの消耗率が7割を超えた時に限ると……初日の戦闘ですぐに使うのはユウマ殿の負担が大きく、しかも敵にその様な場当たり的な対応が露見すれば、連中は長期戦に方針を変えて逆にこちらがジリ貧になりかねん、それに今朝補給物資として届いたアレを使えば現在の戦力でも十分戦えるでは無いか」


冷静に説明を繰り返すゲスに対しライアスは


「しかしだな……万全の態勢で臨めばカサンドラ奪還へ向けてすぐに進軍できるはずだ、今回は1万の軍勢を相手にするわけではない、兵数が互角以上ならばあの装備品と合わせれば相手の兵力が少ない今こそ好機ではないか? 」


ライアスの意見にゲスは反論する


「ライアスよ、それが場当たり的だと言っている、私が言うのも何だがね……相手が伏兵を置かずにそのまま攻め込むとは到底思えんのだよ、援軍があると見てこちらは備えた方が、不測の事態に対処できるというものだ、ユウマ殿の完全蘇生魔法はここぞという場面で使用してもらうべきだ、いたずらに乱用するものではない」


俺はそのまま見ている事は出来ず、そのなかに割って入る事にした


「あの……もしも、いま完全蘇生を使用したら戦局は確実に好転するんですか? そうならば、別に使う事は反対しませんけど」


俺は前日リリアに『使う必要はない』と諭されたにもかかわらず、さっきまでのライアスさんとゲスさんのやり取りを見て、使用する事を容認するかのような言葉を口走ってしまうが、ゲスはそれを断った


「これはユウマ殿、その厚意は有難いがあまり軽々しく引き受けてはいかん、君の能力には代償がある事を忘れたのかね? 」


その言葉に、俺は


「ええ、承知しています……でも100人程度の復活なら大したことでは」


「それだ、その認識が問題だ」


俺の言葉にゲスは遮り反論する


「いいかね? 商業都市カサンドラの人口およそ10万人、そして君たちが今後向かうであろう交易都市ポートルガルは10万人、君の発言から察するに、100人をひと単位で代償を払うと推察するが、であるならば国内の他の大都市も合わせておよそ35万人、そのうちの何割かは復活できないとして、8割の復活でもおよそ28万人だ、それだけの復活の代償を払って、果たして魔王を討伐など出来るのかね? 」


ゲスの言葉に


「それは……わかりません、でも」


そう言った俺に、ゲスさんは更に続ける


「魔王の力がどれ程か未知数なのに、軽はずみに完全蘇生魔法の代償を払って勝てる見込みがあるとは思えん、残念ながらこちらの戦力は魔王には遠く及ばない……兵力を増やしたところで、そう簡単に覆るものではない事は充分承知しているつもりだ」


「確かに……そう、ですね」


俺はそう答えたが……ゲスさんの言葉には嘘が混ざっている、ゲスさんは均衡鎖の影響の事は知っている、だから俺の代償と連動して魔王の力が弱まる事も知っている、だが敢えてそこを言及しないのは恐らく、能力の乱用を避ける為だろう……俺のレベルが最低値の1レベルを下回ると命を落としてしまう、そして魔王を始めとする魔族の力が元に戻ってしまうことが何より危険だと判っているから、敢えて伏せているのだろう


「何事ですか、ゲス・イネンそれにライアス……ユウマ、何があったんですか? 」


「あの、皆さんなにをもめているんですか? 近くを通っていたら声が聞こえたので気になって」


俺が考えている所にリリアが天幕にやって来た、その後ろにミナもついて来ていた、リリアの言葉に俺は先程のやり取りを話すと


「そうですか、内容は大体分かりました……ゲス・イネン子爵並びにライアス・カ・レイジャス子爵、今回の戦いではユウマの完全蘇生の魔法は使用しない事とします、これは命令です、いいですね? 」


リリアの言葉にゲス、ライアス両名も


「王女殿下の、仰せのままに」


と従った、そしてリリアは俺にも忠告をする


「先日も言いましたが、あまり無茶をしないでください、確かに今までの事を思うと説得力はないかもしれませんけど、それでもあえて言わせて下さい……ユウマ、あなたの完全蘇生の魔法は今使うべきではありません」


「リリア……うん、ごめん……もう無茶はしないよ」


話がまとまり、ほっとしている所に伝令兵がやって来た


「申し上げます、敵の本陣に動きがあります、すぐにご対応を」


伝令兵の報告にゲスが頷く


「ライアス、では当初の予定通りの策で行くぞ、ユウマ殿はこちらの作戦の通りに動いていただけますかな、ああそれと、この魔晶石も持っていってください」


と言ってゲスはメモと、光り輝く六角形柱にカットされた宝石を渡してきた、その石は俺が元居た世界の単三乾電池ほどの大きさの宝石だった


「これは? 魔晶石と言われましたが、魔法に関係するものですか? 」


と、俺が聞くと、ゲスは答える


「その石は本来魔力が不足している状態で魔術師が戦闘時に魔法を発動できるように補助するアイテムであり、魔道具を取り扱う店ではひとつにつき金貨1枚もする高級品です、魔力を補うというこの石の特性を利用すれば、習得しているが魔力不足で使用出来ない魔法も問題無く行使できるようになりますよ、ただ魔晶石は消耗品、一度使用すれば無価値な石となる代物です」


そう言ってゲスは俺に魔晶石を数個とメモを渡す、メモの内容は今回の戦いでの俺の動きを指示したものだった、先ず敵中央に魔晶石使用で可能な限り強力な魔法で一撃を与えて兵力を減らし、その後に敵の本陣に回り込み、アダクイカーンを討ち取る、という作戦だ……俺が本陣へ回り込むタイミングは任意で良いと書いてあった


俺はメモをひと通り読んだ後、魔晶石と共にアイテムボックスに入れてリリアとミナに声をかける


「よし、では行こうかリリア、ミナ」


という俺の言葉に


「はい、まいりましょう」


「みんなで頑張りましょうね」


というリリアとミナの言葉に頷く


「ああ、今度こそアダクイカーンを討ち取る」


そう言って天幕を出ると、リリアやミナもそれに続いた


「さて、俺達も出るとしよう、勇者殿に頼りきりでは騎士の面目が立たぬからな、存分に暴れて見せようぞ」


「フッ、そうだな……魔族の連中に目にもの見せてくれる」


ゲスの言葉にライアスも頷き天幕から出る、最後にゲスが天幕を出る時、背後にある机の作戦地図を見ながら呟いた


「戦闘二日目か」


――コルダ平原の戦い、戦闘二日目


コルダ平原の最前線にライアスが率いる騎兵旅団、その背後にはゲスの率いる槍兵旅団が控え、ライアスの旅団の隣には俺達が遊撃隊として並んでいた、まだ敵の姿は見えないが斥候兵の報告では既に敵は移動を始めたという


ユウマ達が配置につこうとした時、ゲスが呼び止めた


「ああ、ミナ君、ちょっとこっちに来てくれんか」


ゲスの言葉に怪訝な顔をするミナ


「変な事じゃないですよね? 」


「違う、君に渡したい物がある、きたまえ」


ミナが恐る恐るゲスの方に行くと、一丁の見慣れない形のボウガンをミナに見せる


「ゲスさん、これは? 見た所ボウガンに見えなくも無いですけど」


ミナの言葉にクフフフッと笑い、ミナを引かせた後ゲスは説明をする


「ああ、失礼……これは以前、魔術ギルドと軍事工房の共同で開発したマジックボウガンの試作品だ」


「試作品ですか……あれ? ボウガンの矢がありませんけど? 」


「別に矢が無いわけではないよ、これは従来のボウガンとは違い物理的にボウガンの矢を発射するのではなく、魔晶石を装填し、魔力を増幅させて魔法の矢を射出する構造で、装弾性能や連射性能と命中精度が非常に高く、威力もあり、何より従来は傷すらつけられなかった実態を持たない魔物にも有効な打撃を与えることが出来るのが特徴だ」


「凄いですね、でも……なんか扱いづらそう」



「操作性は従来のボウガンよりも簡単だよ、だが量産化に当たってコストが高くなってしまって未だに目途が立っていない、このまま試作品を埋もれさせるのもどうかと思ってね」


「それで、私にですか? 」


ミナの言葉にゲスは頷く


「君はユウマ君らと共に魔王討伐の旅をするのだろう? 今後の事を考えれば強力な武器は持っておいて損はないだろう、それに使用した感想を冒険者ギルドやこちらに寄こしてくれれば、何かあった時も支援が出来る、遠慮なく持っていきたまえ、取り敢えずはこの戦いで使用した感想をあとで教えてくれればよい」


「変な事しませんよね? 」


「くどい、私は下衆な事は言ってもゲスな行動はせん……多分」


「多分!? 」


「いや、絶対しない! 少なくともミナ君にはしないと誓おう、さあ持って行きなさい」


「はい! ありがとうございます! 」


と言ってミナはユウマ達と合流した、一部始終を見ていたライアスは


「お前も大概メンドクサイやつだな、ゲスよ」


というライアスの言葉にゲスは表情を変えず


「私を誰だと思っている……憎まれ役を演じてでも、目的を達成するのは俺の役目だ」


そう言ってライアスに返すとライアスも


「ハハハッ、確かに違いない」

と返した、そしてユウマが配置につく時にゲスはユウマに声をかける


「では当初の作戦通りユウマ殿、敵の姿が見えたら魔法の攻撃を……ああ、それと、くれぐれも連中の度肝を抜くような強力なやつをお願いしますよ」


ゲスの言葉に俺が頷く、斥候兵から報告が入る


「まもなく敵の主力部隊がやってきます、数はおよそ850! 」


斥候兵の報告にゲスが反応する


「兵力が回復している……いや、おそらく後方に控えていた補給や支援部隊を引っ張って来たのだろう、思った以上に敵も余裕が無いのだな」


ゲスの言葉にライアスが


「ふむ、ならば予定通り動くとするか……ユウマ殿」


ライアスの言葉に俺は頷くと、魔法を発動させる、ゲスさんから貰った魔晶石を持ち天に掲げると、体中に魔力がみなぎって来るのがわかる、俺は最初の戦い以降使用していなかった魔法『メテオシャワー・ストライク』の派生魔法を使う


「この一撃で主力を叩く、喰らえ! メテオ・ストライク! 」


俺が唱えると上空からそこそこ大きな隕石がひとつ、主力部隊めがけて落下する、敵は反応する間もなく隕石に押しつぶされ、爆風が敵を吹き飛ばす、土煙が舞い上がり視界が悪い中、斥候兵が敵の残存兵力を数える、そして報告が来た


「申し上げます! 敵の主力部隊、跡形も無く消し飛びました! 繰り返します、敵の主力は消滅! 」


斥候兵の報告に兵士たちの歓声が上がるが、続いて敵本陣を監視していた斥候兵が報告に戻って来た


「申し上げます! 敵本陣より伝令と思われる兵がカサンドラへ向かって離脱、追いかけますか? 」


という報告にゲスは


「いや、その兵は追撃せず捨て置け、それよりも引き続き本陣の監視を行え」

というゲスにライアスが


「良いのか? これでユウマ殿の魔法が魔王陣営には確実に露見する事になるが」


と聞くとゲスは


「これで良いのだよライアス、超強力な魔法を勇者が未だに使用できると思わせておけば、こちらとしても好都合だ」


ゲスの言葉にライアスは首をひねる


「好都合? 敵からすれば最大限に警戒する相手と認識して対策を練る事がか? 」


ライアスの言葉に、ゲスは眉間に人差し指をあてて目を閉じると


「ライアス……お前は自分で答えを言っている事に気付かんのか? 」


「気付かないって何がだゲスよ」


「ライアス、例えばだ……罠という物は何故みな引っ掛かるのか」


「ゲスよ、それは底に罠があると判らぬように巧妙に隠すからだろう? 当たり前のことを言うな」


ゲスの眉間に益々しわが寄る


「ライアスよ、では仮に道の真ん中に立札が目の前にあって『この先に落し穴などの罠がある、注意せよ』と書かれていたら、お前ならどうする」


「ゲスよ、そんなの簡単だ、先に罠があると判ったのならば、最大限に警戒して進むか、その道と周辺は避けて迂回を……あっ」


「ライアス、そういう事だ……さて、無駄話もここまでだ、敵の本陣まで押し込むぞ」


ゲスに言葉にライアスはニヤリと笑う


「おう、魔王軍に目にもの見せてくれるわ」


ライアスはそう言うと騎兵旅団を引き連れて前進する、ゲスの槍兵旅団もこれに続く、後方には試作のカタパルトがありその役目を待っている


「次は魔族中心の本陣の部隊だ、油断は出来ないぞライアス」


ゲスは槍兵の陣形を対騎兵に組み替え、敵の侵攻を阻むつもりだ、一方のライアスは突撃陣形で中央から直接本陣を攻撃するために槍を構えて前進する


アダクイカーン率いる本陣の魔族部隊が近づいてきた、と魔族が魔法陣を展開し始める、騎兵部隊に魔法をぶつけるつもりだ、だがライアスは怯まなかった、というよりもこちらの意図したとおりの動きだったのか、ニヤリと笑い


「引っ掛かったな! 」


ライアスが停止の指示を出し、前進していた騎兵はぴたりと止まる、そしてその背後からユウマ達が騎兵たちを飛び越えて目の前に現れた、ライアス達が接敵する直前にユウマが飛翔の魔法を騎乗する馬や護衛も含めて発動し、それによって目の前でユウマ達の部隊が急に飛び上がってみえたのだ、ユウマ達は着地するとそのまま魔法陣を目の前に展開する


「ストーンバレット! 」


石の砲丸が魔法陣から連続で高速射出され、魔族の身体を撃ち続ける、石の塊なので威力はそれなりだが連続射出のせいで魔族兵たちの脚が止まる、そしてユウマ達は魔族部隊を目前に左へ避けて離脱、そして入れ替わるようにライアスの騎兵が突っ込んでいく、ライアスの騎兵隊は背中に手投げ槍のジャベリンを背負っている、ライアスは号令をかける


「各員ジャベリン用意! 放て! 」


騎兵は敵魔族兵に突っ込みながら背中に背負っているジャベリンを手に取り、一斉に投げる、だがその瞬間、騎兵が魔法を発動する


「ファイア!」

「ブリザード!」

「サンダー!」


次々に魔法を発動させる騎兵たち、実はライアス達は砦に撤退してから騎兵達には元々聖騎士として入隊をしていたのもあり魔術適正もあった為、魔法を習得させていたのだ


そしてジャベリンには術者の魔法を吸収し魔力がこもった付与魔術のジャベリンと化し、その上に騎馬の速度が乗った騎兵のジャベリンは更に威力を増して、それに当たった魔族兵は


「ギャア! 」

「グエッ! 」

「ガハッ! 」


 と魔法が付与されたジャベリンは物理攻撃ではなかなか倒れない魔族兵を次々と打ち倒していく、魔法を吸収する特注のジャベリンはこの戦いに備えてかなり前からゲス・イネンに依頼して調達してもらっていた、このジャベリンは騎兵が5本2セット計10本を背負っており、リンドルム砦では魔法習得と並行して手投げ槍の騎乗突撃での投射訓練を繰り返していたのだ


次々とジャベリンの餌食になって倒れる魔族兵たちに、アダクイカーンは動揺するが、すぐに対応を始める


「人間風情が、舐めおって! 各員防護魔法展開! 」


 アダクイカーンの命令で魔族兵は防護魔法であるボディー・プロテクションを発動させて魔術防御と物理防御を向上させるが、ライアス達騎兵部隊は構わず突っ込んでくる、そして魔法付与されたジャベリンを次々と投射して魔族兵の中央に穴を開けて行く、陣形が崩れてライアス隊はアダクイの目前まで迫る


「クッ……おのれ人間め! 護衛部隊、防御陣形! 」


 アダクイカーンの目の前に重厚な鎧とシールドを持った重装兵が壁を形成する、ライアス隊はそれを躱して一旦距離を取り迂回すると今度は剣に持ち替えて護衛部隊の居ない背後へ回り込み始める


「そうはさせん! 竜騎兵! 」


アダクイカーンの号令で高高度待機していた生き残りの竜騎兵2体が降下、竜はブレスを吐こうとし、騎乗の兵は魔法を撃ちこもうと魔法陣を展開する


だがそこに遠方から何かが竜騎兵めがけて飛んでくる、下にいるライアスの騎兵部隊に気を取られていた竜騎兵は反応が遅れ2体とも当たってしまう


「くそ! 何だこれは! 煙で何も見えん! ごほっ……くそっ! 」


煙で視界を遮られた竜騎兵は更に下から投げられたジャベリンに翻弄される、ライアス隊を攻撃するために高度を下げたことが仇となり、ダメージこそ少ないもののジャベリンの攻撃に苦戦する


「ゴホッ……チッ、仕方ない上空へいったん離脱するぞ! 」


竜騎兵は再び高度を上げて煙から逃れ、一度体勢を立て直す


その一部始終の様子を後方にいるゲス・イネンの槍兵旅団は確認すると、そこにライアス隊の伝令兵がやって来た


「申し上げます! 本陣に配備したカタパルトの煙幕弾、竜騎兵2体に命中、竜騎兵は戦場からいったん離脱した模様」


「うむ、こちらでも確認した……ライアス隊に伝えよ、そのままジャベリンによる投擲で敵本陣兵力を漸減するようにと」


伝令兵は了承すると、すぐさまライアス隊の元へ駆けていった


「さて、我等も続くぞ! 目標アダクイカーンの本陣! 槍兵隊前へ! 」


ゲス率いる槍兵旅団は前進を始めた


 一方、ユウマ達も迂回してアダクイカーンのいる本陣へ迫っていた、ユウマは剣を抜き、リリアはホーリープロテクションを発動してユウマ達や護衛の兵士に次々と付与、ミナもマジックボウガンを構える、アダクイカーンのいる本陣に近づいてゆく


「みんな! いよいよアダクイカーンを攻撃するぞ! ヤツの捕縛魔法には気を付けて! 」


 ユウマはミナに注意を促す、リリアやミナも頷くとユウマと距離を取って回り込むように本陣へ向かう、ユウマは単騎でアダクイ間の本陣へ向かう、最初に仕掛けたのはミナが率いる部隊だった、ミナがマジックボウガンを撃ち、本陣の魔族兵が数体倒れるとアダクイカーンが気付く


「チッ、うるさいゴミだ、魔族小隊はあの小隊を攻撃して追い払え! 残りの者は敵騎兵隊の突撃を警戒しろ! 」


アダクイカーンも剣を抜き、敵の奇襲に備える、そこにユウマが現れる


「アダクイカーン! 今日こそ決着をつける! 」


アダクイカーンはユウマの姿を確認すると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる


「馬鹿め、また俺の捕縛術にかかりに来たか」


そう言ってアダクイカーンは魔法を発動しようと手を前に出す、その時、横合いから騎兵が突っ込んできた


「先の戦いでの借りを返す! 覚悟しろ、アダクイカーン! 」


攻撃をしたのはライアスの騎馬突撃だった、アダクイカーンは二方面からの攻撃に一瞬対応が遅れ、ライアスの突撃をまともに喰らってしまう、騎兵突撃で吹き飛ばされるアダクイカーンは地面を転がる


「グホッ……おのれ、小癪な人間ども! 」


直ぐに立ち上がるアダクイカーン、だがそこに


「させるか! 喰らえ! 」


 と、今度はユウマが斬りかかる、アダクイカーンは剣でユウマの攻撃を受け流しユウマを攻撃しようとすると、今度はライアスが斬りかかってきた騎乗からの攻撃……だがアダクイカーンはライアスの攻撃は難なく躱す、そしてそれを見計らったかのように、今度はユウマが斬りかかる、二人の攻撃に翻弄されて、スタミナを徐々に削られていくが、魔族の身体能力は人間よりもはるかに高い、次第にアダクイカーンのほうがユウマ達を押してゆく


「クハハハッ……先程の勢いはどうした! 人間ごときが我にかなうと思ったか! 」


 アダクイカーンの攻撃にユウマは剣を捌いて対応する、だがライアスは攻撃する隙を見いだせず、先程の突撃が出来ない為ライアスは騎兵隊の方へ戻り本陣の攻撃に切り替える


「すまんユウマ殿! 私は一旦戻り、本陣への攻撃に専念する」


ライアスの声にユウマはアダクイカーンの攻撃を捌きながら


「わかりました! ここは俺に任せて下さい! 」


ユウマの返事を聞いたライアスは


「かたじけない! ユウマ殿もご武運を! 」


そう言っていったん離脱、ライアスは騎兵旅団へ戻っていった、アダクイカーンはユウマへ攻撃を続けながら挑発する


「クハハハッ、仲間を見捨てて逃げおったか、所詮は人間なぞそんなものよ! 」


アダクイカーンの剣檄が激しくなる、魔族の身体能力もあり、一撃が重い


「人間はお前が思っているほど弱くはない! 慢心しているお前に勝ち目など無い! 」


ユウマはアダクイカーンの攻撃を捌きながら、言い返す……だが、やはりレベルダウンの影響があるのか、一撃の攻撃の重さに徐々に押され始める、とそこに


「ホーリーランス! 」


リリアが射程距離ギリギリから放った神聖魔法でアダクイカーンを攻撃する、だが


「小賢しいわ! 」


 アダクイカーンが魔法で防壁をピンポイントで展開しリリアの放ったホーリーランスをたやすく防ぎ消滅させる、そして再びユウマの攻撃をアダクイは難なく捌いていく


「愚か者め! 如何に神聖魔法と言えど、その程度の魔法で我に敵うと思ったか! 」



 だが、ここにアダクイカーンの誤算があった、彼は未だに均衡鎖を理解していなかったのだ、アダクイカーンの力は以前に比べてはるかに弱体化している、そしてそれは『率いている魔族兵』とて例外では無かった、人間の声が響く


「敵本陣は壊滅したぞ! 我らの勝利だ! 」


オオオーッ! という勝鬨の声が広がると、アダクイカーンの攻撃が一瞬ゆるんだ


「なっ……馬鹿な! 魔族が人間に……負けただと! 」


その一瞬のスキをユウマは見逃さなかった、力が緩んだアダクイカーンの攻撃を剣で受け止めそのまま弾き返すと、アダクイカーンの剣は腕ごと切り裂かれて吹き飛び、地面に突き刺さる


「くそ! しまっ」


悪態をつく暇も無く、アダクイカーンはユウマに袈裟斬りに体を切り裂かれた


「グハッ……お……のれ」


そのままアダクイカーンは絶命、体は塵と化して消えていった、ユウマは魔族の将軍であるアダクイカーンを倒すことが出来たが、ユウマには焦りがあった


「今回の戦いはミナやライアスさんが奴に攻撃をして注意を向けた事で隙が産まれたから、勝つことが出来た、だけどもしこれが純粋な一騎打ちだったら……俺の今のレベルがこれならば、もしこれ以上レベルが下がったら……俺は魔王を倒せるのだろうか」


戦いが終わり、リリアやミナが駆けてくることに、ユウマは気付くことなく、呆然とアダクイカーンが倒れていた場所を見つめていた


お読みいただきありがとうございます


この第16話では会戦の二日目が決着し、同時に「勝ち方」そのものが問われる局面に入りました

勝っても消耗は残り、次はもっと厳しくなる――そんな感覚が強くなっていきます。


次話からは戦後処理と、次の局面に進みますので

どうぞ引き続き、お付き合いいただければ嬉しいです。

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