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第11話 リンドルム砦とライアス指揮官

第11話です。

道中の出来事で、パーティーの立ち回りが試される回になります。

状況が一気に動きますので、よろしければ最後までお付き合いください。

 ユウマ達がコルダの街を出た頃、街の駐留軍隊長ゲス・イネンは自身の魔導防遮音壁の私室にて、巡回の兵士の報告を聞いていた、兵士からユウマ達が無事に街を出たという報告を受ける

「そうですか、報告有難う」

兵士が私室を出るとゲス・イネン隊長は窓から外を見ながら呟く

「予定通りに若者が踊らされる……ウエッへッへッ、たまりませんねえ……ここまではガルド殿の作戦通りという所ですね、あなたの思惑通り最後までキッチリと悪役を演じて見せますよ、ガルド殿」


 俺達はリンドルム砦に近い宿場町を目指して馬車でコルダの街を出発した俺達は徒歩なら2日は掛かる道のりを1日で宿場町に到着した、早速宿を探して部屋を取る、宿の主の話ではここから山へ向かって丸2日程歩くとリンドルム砦に着くという、商業都市カサンドラにはここからだと乗合馬車で片道2日の宿場町を2つほど経由して更に乗合馬車で2日の距離という事だそうだ、俺達は早めに就寝して朝早く起きる、宿場町は旅の中継地にあるだけあって早朝に開いている食堂があったので、そこで食事を済ませると、装備を確認したのちに宿場町を出た、行先は勿論リンドルム砦である

「しかし、思ったよりは道が整備されているな、これは砦への補給の為かな」

俺の言葉にリリアは

「そうですわね、元々リンドルム砦もアルガス砦……現在の廃砦も王国統一戦争期に周辺地域の防衛として建設されたと聞いています、その為物資の補給を迅速に行う事を優先して道が整備されたのでしょう」

「なるほど、道を整備すると敵の進軍に利用されるという懸念もあるが、王国軍は補給……つまりは兵站を重要視していたという事か」

リリアの説明に俺は頷く

「リリアは王国の歴史に詳しいんですね」

と言うミナの言葉にクスクスと笑うリリア

「ええ、まあ、それなりに教育を受けましたから」

 そう言えばリリアがレーヴェンシュタイン王国の姫様と言う事は教えていなかったな、まあ仲間だから呼び捨てで良いと言ったのに、そんな身分を明かしたらまたミナが恐縮して呼び方を変えるかもしれないし、別に黙っておいても問題ないからミナの方から聞いてこない限りは黙っておくことにリリアと決めたんだっけか

「リリアは神聖魔法の使い手だからな、それなりに高い教育を受けるのは当然だろうな」

と俺が言うと

「ええ、勿論ですわ、歴史を学ぶ事も修行の一環ですもの」

とリリアも答え

「そうなんですね! やっぱりリリアはすごいなあ」

などと会話をしているうちに、日が高くなってきた、恐らく今は昼頃か

「いったんここで休憩しようか」

 と俺は比較的開けた場所を探して、場所を見つけると周囲の安全を確認してから荷物を置く、といっても俺はアイテムボックスがあるのでほとんど荷物らしい荷物は無いのだが。

「流石に上り坂になってきましたので、脚が疲れましたわ」

といって、リリアは脚をさすりながら荷物袋から折りたたみの椅子を出して設置すると、そこに座り、足のマッサージを始める、ミナは

「じゃあ、お昼の準備をしますね」

といって荷物入れから小型の箱状の蓋つきのかごみたいなものを取り出すと蓋を開ける、中には半分に切られたバゲットの間にレタス、スライスしたトマト、ローストビーフを挟んだサンドイッチが入っていた

「食堂で食事をした後に、お願いして厨房をちょっと借りて作っておいたんです」

 ミナは簡単に言っているが早朝に入った食堂にはそこまで長く居た訳ではない、という事は食後に短時間であのサンドイッチを作ったのか

「あの短い時間で作ったのか、凄いな」

と俺が感心するとミナは照れ臭そうに

「いえ、そんなに大したことはしてませんよ、中の肉や野菜は食堂の物を購入して、パンは昨夜のうちに買っておいたんです、後は切って挟むだけですから」

とは言うが、パンにはしっかりバターも塗ってあったので食堂の調味料も借りたんだろう

宿場町の食堂の主には感謝しないといけないな

「ミナの作る料理はいつも美味しそうですわ、早速いただいてもよろしいかしら」

「もちろんです、ユウマも早く一緒に食べましょうよ! 」

「ああ、じゃあ遠慮なくいただこうかな」

 こうして昼食を済ませた俺達は、少し休憩した後に再び道を進み始めた、モンスターの襲撃を警戒していたが、比較的見通しの良い地形だった為、昼間は全く遭遇する事は無かった。そして夕方に差し掛かり、辺りが薄暗くなってきたので、野営の準備を始めた、その後は何事もなく、翌朝は簡単な朝食を済ませた後、片付けて再び出発、2日目の昼頃には遠くに山を背に建つ砦らしき建物が見えてきた

「アレがリンドルム砦か、みんなもうすぐ着くぞ」

俺が2人を鼓舞し、引き続き砦へ向かい歩みを進める……が、その時何か山の向こうから黒い影が近づいてくるのが見えた

「何だあれは……鳥か? 」

俺は影を見ると、その小さい影が徐々に大きくなってくる、その影は翼と尻尾があるように見えた

「んん? なんかあの影こっちに近づいて来てないか? 」

俺がリリア達に注意を促すと

「なんでしょう、かなりの速さでこちらに向かっているような…… 」

リリアがそこまで言って、俺はようやく事態の緊急性に気が付く

「リリア! 結界を急いで張って! アレはモンスターだ! 」

 俺の言葉にリリアは片手を上げて結界を発動しミナを守る、ミナもしゃがんで体勢を低くして衝撃に備える、影はいよいよ大きくなりその正体がワイバーンだという事が判る

ワイバーンは俺達の上空で一度停止すると、口を大きく開けて息を吸い込み始めた

「不味い! 」

俺はとっさに地面に手を着くと魔力を注ぐ

「アースウォール! 」

 俺の声と共に地面が揺れ目の前に巨大な土壁が現れる、直後にワイバーンの火球が口から放たれて土壁に直撃、爆音とともに土壁は粉々に砕け散った、しかし火球のエネルギーは土壁に吸収された為、俺達に直接の被害は無い

「ユウマ! こちらへ! 」

 リリアが俺を呼ぶ、恐らく補助魔法を施すのだろう、俺はすぐにリリアの元に向かい補助魔法の防御力上昇、魔法攻撃力上昇を付与してもらう、しかしこんなところでレベルダウンの影響が出てくるとは、油断していたとはいえ、アースウォールがこうもあっさり破られるとは、それに魔力も以前より弱くなった気がする……気がするだけだと良いんだが

「有り難うリリア、念のため隙を見てリリア達は砦へ向かうんだ」

「ユウマはどうするんですか? 」

「俺はあのワイバーンの注意を惹き付けながら攻撃をするつもりだ」

問題はワイバーンが上空に留まっているという事、周囲は見通しの良い草原の為身を隠すものが殆ど無く、上空への攻撃手段が今のところ魔法しかないという事だ

「ミナもリリアについて行って砦まで全力で向かってくれ、ガルドさんの手紙を渡しておく、砦に入ったらそこで待っていてくれ、俺も後から追いかける」

ミナは俺から手紙を受け取ると

「分かりました、ユウマも危なくなったら逃げて下さいね」

「ああ、分かった……よし、行くぞ! 」

 俺は駆け出しなるべく注意を惹き付けるように魔法を繰り出していきながら道から外れてリリア達から遠ざかる、リリア達は砦へ向かって走っていった

「ストーンバレット! 」

 握りこぶしほどの岩が次々と放たれてワイバーンの身体に当たる、余り効いている様子には見えない、だが注意を惹き付けることは出来た、ワイバーンは咆哮を上げると俺目掛けて滑空して来た、俺は剣を構えて走る、ワイバーンが翼と一体になった腕の爪で俺に攻撃を加えようと振り下ろされる、とっさに俺は身を翻す

「うおっと! あぶねー 」

爪を回避した俺は剣で爪の根元の翼と爪の間に斬りかかった、斬撃の手ごたえがある、爪が宙を舞った

「よし、片方の爪は無力化できた! 」

しかし、またしてもワイバーンは飛翔して上空へ逃げる、俺は再び魔力を練り上げて魔法を繰り出す、岩の攻撃はあまり効果が無かった

「なら、これでどうだ! アイスランス! 」

 巨大な氷のつららの物体が現れて、ワイバーン目掛けて飛んでいく、ワイバーンは口を開けて火球を放つ、火球は巨大な氷のつららにぶつかり水蒸気が上がる、だが完全には溶かし切れず、ワイバーンの身体に命中する、火球によって威力が弱まったのか期待していたダメージは与えられていない、俺はもう一度アイスランスを繰り出す、今度は火球を出す暇が無かったのかワイバーンの身体からは少しずれたものの、ワイバーンの翼に穴が開いた

「よし、この攻撃は有効のようだな、この調子で……とおお!? 」

上空にいたワイバーンが地上に降りたと思ったら翼と一体の前足と後ろ足で駆け出し、俺に突撃をかけてきたのだ、俺は突進を避けるために真横に飛ぶ、勢い良く通り過ぎたワイバーンはUターンして再び突進してきた! 俺は地面に手をつき魔力を注ぐ

「ここで決める! アーススピア! 」

 俺が魔法を発動した瞬間にワイバーンのいた場所に無数の円錐状の土の塊が地面から飛び出してワイバーンの身体を貫こうとするがワイバーンの移動スピードが僅かに早く、致命傷には至らない、目の前に現れたワイバーンの爪が襲い掛かる、俺はとっさに避けるが間に合わず、爪に当たってしまい真横に弾き飛ばされてしまう、地面を転がり土埃が舞う

「ぐあっ! いってえええ!」

 ゴロゴロと回転する勢いを利用して再び立ち上がるが、口を斬ったようで血が滲む、冗談抜きに痛い、回復魔法で治癒を施すが、衝撃がまだ残っている、幾ら俺でもあんな攻撃をもう一度喰らったらひとたまりも無い、死にはしないが戦闘を続けられなくなる

「サッサと片をつけるか」

 再び地面に魔力を込める、だが今度は時間を掛けずにすぐに移動する、俺を跳ね飛ばしたワイバーンがまたUターンしてこちら目掛けて突進をして来ているからだ

「何度も同じ手を喰らってたまるか! アーススピア!」

再び土の塊で出来た槍がワイバーンを襲う、ワイバーンが回避し始める

「かーらーのー! アイスランス乱れ撃ち! 」

 俺はワイバーンの正面に向けて無数の氷の槍を連続で放つ、今度はワイバーンも直撃を避けられずその攻撃をまともに喰らい怯んだところで、俺は剣を構える

「これで終わりだ! 」

 俺は横一文字にワイバーンを切り裂いた、断末魔の咆哮を上げてワイバーンは崩れ落ちる。


 やっと終わった……とその時上空から何かが飛んできた、それは鋭い爪で俺を攻撃する、とっさに俺は躱したが、剣を構え直したところで俺は目を疑った

「ワイバーンが、もう一匹だと!? 」

 そう、ワイバーンは1体では無かった、いつの間にかもう一匹のワイバーンがやって来ていたのだった、不味い、さっきの攻撃で魔力をだいぶ消耗してしまっている、レベルが1000も下がっているせいで、魔力の上限が著しく下がったのかもしれない、レベルは何も覚える呪文の数を増やすだけじゃない、魔力の総量を飛躍的にあげる事もある、それが王都奪還の時に一気に1000レベルも下がったのだから、その時には使えた超強力な呪文が使えなくなるのも当たり前なのだ、呪文を覚えていても発動に必要な魔力を満たしていないから

「不味い、今まともに戦うには魔力が足りない……多少無理でも剣で戦うか」

しかし、先程の手負いとは違い上空の優位性を把握するワイバーンが降りてくれるかどうか、有るとするなら直接攻撃する瞬間しかない、上空のワイバーンが口を開けて息を吸い込んだ

「やっぱりそうだよなあ、畜生! 」

 ワイバーンの火球攻撃を必死でかわす、スピードに関してはまだ何とかなるが、このままだとじり貧だ、と、その時

「ホーリーランス! 」

 光に包まれ輝く槍が何本も現れてワイバーン目掛けて飛んでいく、これはリリアの魔法か? その時声が聞こえた

「ユウマ! いま助けに行きますわ! 」

 一騎の騎馬が駆けてくる、馬上には銀色に輝く鎧を身につけた男が馬を走らせ、その背後に片手で魔法を放つリリアが居た、騎馬が俺の傍まで来ると、馬上からリリアが降りて俺の元に駆け寄る

「無茶ですわ! こんなになるまで戦うなんて! 少しは私も頼ってくださいませ! 」

「無茶じゃないよ、だけど、来てくれてありがとう」

「……!! 」

俺の言葉に、一気に顔が真っ赤になるリリア

「ズルいですわ、そんな言い方 」

と騎乗の男が声をかける

「感動の再会の所をすまないが、先ずは目の前の敵を倒すべきではないか? ユウマ殿」

声を掛けられハッとして騎乗の男に声をかける

「すみません、あなたは? 」

「俺の名か? 俺の名はライアスだ、さて話は後だ……牽制は俺に任せろ、ユウマ殿はスキを見せたワイバーンに攻撃を! 」

そう言って白銀の騎士はワイバーンに近づき

「ライトアロー! 」

 光の矢を放ちワイバーンを攻撃する、ワイバーンがターゲットをライアスに変えて滑空を始めるが、騎乗のライアスは巧みに馬を操りワイバーンの攻撃をかわしていく、何回かの回避の後にワイバーンが一度上空に上がる、そして勢いよくライアス目掛けて急降下突撃をするがライアスは機動を逸らして回避すると、目標を外したワイバーンは勢いよく地面にぶつかる、激突の振動と共に再び土埃が勢いよく巻き上がる

「今だ! ユウマ殿! 」

 ライアスの声に応じ、俺は突進しながら魔力を付与しながら構えたその剣を、よろよろと立ちあがってきたワイバーン目掛けて斬りかかる

「うおおおおおりゃあーー! 」

 魔力付与でオーラを纏った俺の剣は、ワイバーンの身体を捉え、肩から脇腹までを袈裟斬りにして真っ二つに切り裂いた、血しぶきが勢いよく飛び散る

ギョエエエエエエッッッ! 断末魔の咆哮を上げてワイバーンは絶命した

「はあ、やっと倒せた…… 」

 俺は剣を鞘に納めて一息をつく、リリアが回復魔法で俺の治療を始めている所にライアスが乗る騎馬がやって来て、ライアスが馬から降りる

「流石、伝説の勇者という所か、ガルドの話は本当のようだな」

「ライアスさん……でしたか、ガルドさんとは古い友人とか」

俺の言葉にライアスは苦笑する

「友人……ねえ、まあ腐れ縁ではあるが、概ね間違ってはいないよ、話はガルドから聞いている、あのワイバーンは最近になってあの山の奥に住み着いていてね、お陰で兵士をまともに動かせなかったんだ」

「私とミナがライアス殿にあの手紙を渡して、砦の見張り兵の報告からもう一体のワイバーンの出現を確認したので一緒に応援に来てくれましたの、ミナは砦の厨房を借りて今頃料理を作っていますわ、炊事担当の兵士も協力しているそうですわよ」

「そうだったのか、ライアス部隊長、協力ありがとうございます、実は頼みがあって砦まで来ました」

俺がそう言うとライアスは制止した

「うむ、大体の内容はリリア様から聞いている、詳しい話は砦で伺おう」

「リリアの事ご存じなんですか? 」

俺の質問にライアスは笑う

「もちろん、元々自分は王国から派遣された部隊だからな、国王陛下とも謁見の間でお会いした事もある……リリア様とも、何度かお会いしているからな」

「そうですわよ、ユウマ……私はこれでも、レーヴェンシュタイン王国の王女なのですから」

リリアの言葉に俺も頷く

「そうだったな、さて、じゃあ砦へ向かおうか」

俺の言葉にライアスは馬から降りて

「では俺は徒歩で向かおう、君達は馬に乗りたまえ」

そう言うと俺とリリアを馬に乗せてライアスは馬を引きながら砦へと向かった


お読みいただきありがとうございます。

今回は砦到達直前での襲撃と救援、そして新たな人物との合流までを描きました。


【以前なら何とかなった】はずの状況が、今はそうはいかない。

この差が、これからの旅に重くのしかかってきます。


次話からはリンドルム砦で状況整理に入り、

避難民の問題と、ガルドが仕掛けた「本題」に踏み込んでいきます。

よろしければ引き続きお付き合いください。

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