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第12話 コルダ地方動乱 ライアスとゲス・イネンの真実

第12話です

リンドルム砦にたどり着いたユウマ達は、ライアスと会談する事になります

今回は戦闘よりも会談と作戦となりますが、ユウマ達、ライアスとゲス・イネン、そしてコルダ街の子爵、それぞれの立場と思惑が交差する回になっています

よろしければ、お付き合いください。


 ライアス隊長と共に襲撃してきたワイバーン討伐を果たした俺とリリアは、リンドルム砦に入った


「改めて挨拶しよう、私はレーヴェンシュタイン王国騎士団所属、第六騎兵旅団指揮官のライアス・カ・レイジャス子爵だ、魔王軍と戦うためにゲス・イネンが率いる第七槍兵旅団と共に魔王軍侵攻部隊と戦ったが、多勢に無勢で敗走し、カサンドラにいる魔族の牽制と残存兵力の再編成と再起の為に、ここリンドルム砦を守っている、王都を救った勇者ユウマ殿にお会いしたうえにワイバーン討伐に加勢出来たことを光栄に思うよ」


「いえ、そんな」


「ユウマに加勢して頂き、感謝いたしますわ」


 ライアス子爵の挨拶に戸惑った俺を察したリリアがスッと前に出てお礼を述べた


「うむ、今後について話し合いたいが、まあ先ずは腹ごしらえといこう、なんでもミナ殿は料理が得意と聞いている、うちの部隊にも調理を担当するものがいるが、食材は量も種類も問題ないがここの所料理メニューがワンパターンになっていてね、ミナ殿が作る料理を振舞うという事で兵士達も楽しみにしているのだよ、うちの料理番も出来れば調理法を覚えたいというので積極的に手伝っているそうだ、一般の兵士たちと同じテーブルで食事にはなるが、どうかね」


 そう言えばミナが厨房に入って砦の厨房係と一緒に料理を作っていると言っていたな、それにワイバーン襲撃とその戦闘で昼食を取っていないことをすっかり忘れていた


「ええと……では、お言葉に甘えます」


俺の言葉にリリアも続く


「砦の兵士の皆さんと昼食、楽しみですわ」


その言葉にライアスが


「ではまいりましょうか、食堂まで私が案内しましょう」


 という訳で、俺とリリアはミナが兵士たちと作った特製料理を食べて腹を満たすと、ミナと合流して3人でライアス隊長の執務室に入った、部屋は装飾も少なく地図や書棚壁に掛けられた剣などがあり、ライアスが使う机と椅子以外は無く、俺達も立ったまま話をするつもりであったが


「客人をそのまま立たせる事など出来んよ」


という事で部下に椅子を持ってこさせると、背もたれは有るものの簡素な木製の椅子が3脚並んだ


「すまないな、このような場所なのであまり豪華ではないが……さあ、先ずは席に座ってくれたまえ」


と着座を薦めたので俺達は椅子に座ると、ライアスが話し始めた


「まずはこのような辺境の砦に赴いてくれたことに感謝する、貴殿が私の友人ガルドの書状の指示に従い、こちらに来ることは事前にガルドから聞いていた、なんでもコルダの街の避難民についての助力という事だが……間違いないかね? 」


ライアスの問いに俺は若干戸惑った


(どうしよう……今までは村長や町の商人相手だから何とかなったけど、貴族相手にどう話せばいいんだ? )


俺が返答を躊躇しているとリリアが口を開く


「ええ、それで間違いありませんわ、私共はコルダの街の避難民の大半が廃砦に半ば強制的に移動させられたこと、そして彼らのいる廃砦は冒険者ギルドを始めとする協力者によってなんとか水は確保したものの、未だに食料の確保に苦労していてこのまま放置すると危険という事を、冒険者ギルドのほうで聞きまして、お渡しした手紙にもあります通り、ガルド様の紹介でこちらに赴いたという訳です」


と代わりに答えてくれた、そして小声でリリアは


「ユウマ、もし貴族との会話が苦手でしたら、ここは私にお任せを」


と言ったので俺は頷くと、リリアは笑顔で返してくれた


(まいったな、後で貴族との会話のマナーとか教えて貰わないと)


と考えつつ、俺は話を聞くことに専念する


リリアの答えにライアスは


「なるほど、手紙の内容も確かにそう書いてあったな……しかし貴殿達は、すでにコルダの街の不自然さは気付いておるだろうが、何故子供が居なかったのか……ご存知かな? 」


ライアスの問いにリリアは少し考え、そして答える


「教会や避難民の居住区では残念ながらその辺りの情報は得られませんでした、勿論冒険者ギルドもその辺りについて言及はしておりませんでしたわ」


リリアの答えにライアスは


「ふむ、やはり冒険者ギルドも教会も情報の漏洩を恐れて街の中では話さなかったようだな、街を出る時の門番は何処の所属の時に出るようにと言われていたかな? 」


ライアスの問いにリリアは


「街の門番がコルダの街の衛兵の時に出ましたわ……それが一体、何の関係がありますの? 」


その言葉にライアスは何か満足そうに頷くと


「そうか、やはりな……流石ゲス・イネン、駐留軍が門番の時では、あからさま過ぎるからな……ここまではアイツの想定の範囲内、という事か」


ライアスの言葉にリリアは


「先ほどから話が見えてきませんが、ゲス・イネン隊長の想定の範囲内とは一体どういうことですか? 」


と疑問を投げかけるがライアスは冷静に


「ああそうか、申し訳ない……君達には話しておかなければならないな……ゲス・イネン隊長は別に避難民を見殺しにするわけでは無いのだよ、むしろ街にいた方が危険だからこそ、足の遅い子供や老人を先に廃砦……アルガス砦へ避難させたのだよ、何故ならば、あの街の統治者である子爵……エゴトスは魔族と取引をしているのだからな」


 という全く思いもよらない答えが返ってきたのだった……リリアは流石に信じられないといった表情で


「どういうことですの? 先程の街の衛兵の時に私たちが街を出た事と何の関係があるのですか? 」


とリリアが問うとライアスは冷静に答える


「ふむ、君達は冒険者ギルドでリューエ君から話を聞いた時に街の異変にゲス・イネン隊長が関わっている事は『半分正解』と言わなかったかね? 半分とは街の駐留軍が衛兵の代わりに治安を維持している事、そして避難民の大半がゲス・イネン隊長の主導で廃砦へ移動したという事、もう半分は街に子供が居ないのは、居ないのではなく避難民と一緒に廃砦へ向かわせたからだよ」


ライアスの言葉にリリアは食い下がる


「なぜそのような必要があるのですか? そもそもエゴトス子爵が魔族と取引しているという証拠はあるんですの? 」


という、質問に対してもライアスは冷静に答える


「ああ、あるとも……コレがそうだ」


そう言うとライアスは机の引き出しから一枚の羊皮紙を出すと


「これはガルド君がよこした手紙に同封されていた、魔族との契約書だが……その内容は文面の半分が魔族の、もう半分がこちらの言語で書かれていたようだ、そして契約書とは2枚で一対となるように割り印が押されている、魔族の物を手に入れたとは考えにくいので子爵側の控えだろう、ガルド君が言うにはエゴトスの応接間の机に、無造作に鍵付き書類箱が放置されていたので盗んだそうだよ」


 ガルドさんは相当な実力者だとは思っていたけど、やはり困難な潜入もたやすく出来るらしい、ライアスは話を続ける


「内容は『コルダ地方の人間を支配から殲滅へと変更する事になったのでコルダの街の成人の人間及び領主であるエゴトス子爵の命の保証と引き換えに、一帯の人間及び避難民の命を差し出す事、但し避難民が飢えて死ぬことの無いように、特に子供は一部は奴隷として引き渡すのでくれぐれもこちらが手を出す前に勝手に殺さぬように』という物だ、エゴトスのサインと魔族のサインが入っている、確認するかね? 」


そう言ってライアスはリリアに契約書を渡し、リリアはそれを調べるが


「確かに内容はライアス殿が仰った通りですわね、署名のサインもありますわ……でもこれだけではまだ不十分ですわ」


と言って契約書をライアスに返す、ライアスは受け取ると


「ふむ、では君たちが受け取ったという手紙と一緒に受け取った地図は有るかね? 」


 手紙はライアスに渡していたが地図は俺が持っていたので俺はガルドさんから貰った地図を取り出すと、ライアスは


「地図は持っているようだな、あいつは必ずチョットした仕掛けを地図に施す、その地図を裏返しにして、魔力を注いでみてくれたまえ、恐らく文字が浮かんでくるはずだ」


 俺は半信半疑ではあるが早速地図が描かれた用紙を裏返した状態で魔力を込めてみる


……すると徐々に何も書かれていない、まっさらな面に文字が浮かんできた、俺はその浮んできた文字を読み上げる


「なになに……ライアスのいる砦に着いたらライアスの部隊とともに廃砦へ向かう事、そこにはゲス・イネン隊長の手筈でコルダ地方の宿場町や村の住民、そしてコルダの街の子供達と避難民と共に砦の機能復活と民兵の編成が進んでいるはずだ、コルダの街の駐留軍と避難民の残りが街を脱出すると共に廃砦で民兵の蜂起を行い、お前たちは主犯のエゴトス子爵を捕縛するんだ、魔族アダクイカーンはカサンドラにいるので早くてもコルダに到着するまで3日は掛かる、その間にエゴトスを捕縛し迎撃の準備をする事だ……間違いない、確かにこれはガルドさんの筆跡とサインだ」


俺が読み上げた後に驚いていると、ライアスは


「アイツらしいやり方だよ、しかしゲス・イネンの悪役ぶりは見事だな、ここまで疑念を抱かせられるのは奴しか出来ない芸当だな、しかしまあ誤解されやすいやつではあるが」


ライアスの言葉にリリアが


「あの……では、教会や避難民の居住区でゲス・イネン隊長が言った言葉は何だったのですか? 」


リリアの問いにライアスは


「ああそれは、貴族としての形式的な手続きの話だろう、王国の貴族に歯向かう事は反逆と同意であるのは間違いないからな、それに避難民の話では最初はすべて受け入れたが翌日になって追い出したのだろう? 恐らく避難民を受け入れた時にエゴトス子爵の動きに不審な点があったのを気付いたんだろう」


その言葉にリリアはハッとする


「それは……たしかに、避難民の方も仰っていましたわね、最初は温かく迎え入れたのに翌日に追い出したと……では、もしや食料不足の事もそうなのですか? 」


ライアスは説明を続けた


「うむ、おそらく避難民を街の食料で支えきれないと相談したというのも、本当はやりようによってはまだ支えることが出来たが、あぶれた避難民を先に魔族に献上するつもりだった事が分かってあのように動いたのだろう、奴はゲスな笑いをする事はあるが悪人ではないからな、そうでなければ俺とアイツとの合計兵力3500人で魔王軍の先遣部隊1万と戦ったりなどするものか、本当に性根が卑しい奴なら派遣前に真っ先に逃げただろう」


ライアスさんの言葉にリリアは黙ってしまう、するとミナが


「でも、じゃあ、何であんな酷い言い方をしたんですか? 本当の事を話せば避難民の皆さんも解ってくれるはずじゃあないんですか? 」


 ミナのいう事も理解できる……だが、ライアスさんの話が真実だとするとその行動は危険な気がする、ミナの言葉にライアスさんも反論する


「確かに君の言う事も正しい、だがエゴトス子爵が魔族に加担していた場合、真実が奴の耳に入ったらどうなると思うかね? 」


という言葉にミナも


「あっ……そうですね、確かに怖い事になるかもしれません」


 と思い直したようだ、確かにエゴトス子爵に事が露見した場合、街に残っていた避難民の命が危うくなるのは間違いない


「ひとつ聞きたいのですけれど、先程私達を襲撃してきた二体のワイバーンは魔族の手の物なのですか? 」


リリアの言葉にライアスは首を横に振る


「いや、恐らくアレはここ最近山に住み着いた野生のワイバーンだろうな、アレは定期的に巣を変えるらしいが、魔族の言葉を理解しているという話は聞かない、もしアレが魔族の支配下に置かれているのなら砦に二匹だけでは終わらない、俺が魔族の立場なら10体まとめて砦の攻撃に当てるだろう」


 しかし2匹でも襲撃のリスクは大きい、ライアス隊長が部隊を砦から出せない理由もそこなのだろう、しかし俺達がワイバーンを倒したことで出陣することが出来る訳だ、だが懸念もある、とリリアが切り出した


「ですが、今回のワイバーン討伐の情報は恐らくガルドの街に届くでしょう、そうなるとエゴトス子爵は計画を早めるかもしれませんわ」


ライアスも頷き立ち上がる


「その懸念はもっともだ、早速出陣の準備をしなければ……だれか、陣触れ陣振れ(じんぶれ)だ! すぐに準備して夕刻より出陣するぞ! 」


ライアスの命令に部下たちが慌しく動き出す、ライアスはリリアに


「姫、あなたが王国正規軍の名代として私や兵士たちに勅命をお与えください」


リリアはゆっくりと立ち上がり


「分かりましたわ……これも王家の勤めであれば、謹んでお引き受けいたしますわ」


ライアスとリリアのやり取りに


「え、えええええっ!? リリアさんって王女様だったんですか!? 確かに上品な振る舞いから何処かの貴族の御令嬢かな、とか思いましたけど! 」


 とミナが驚く、まあ今まで言っていなかったから驚くのも無理無いか……驚くミナにリリアが優しく微笑む


「フフフッ、黙っていてごめんなさいね、でもミナはこれからも同じ仲間である事に変わりはありませんわよ? 」


リリアの言葉に


「ええっと、そういわれましても…… 」


というミナに


「フフッ、今は仕方ありませんが……ユウマ同様、あなたにも社交の場でのマナーは覚えて頂きますから安心してくださいまし、これからこういう場面は何度もあると思いますので」


というリリアに、俺達は苦笑するしか無かった


 リンドルム砦の兵士たちは慌しく、しかし整然と準備を行う、そして広場に集結した1000名の兵士たちが並ぶと、儀礼用の一段高い平台にリリアが立つ、彼女は一度深呼吸をして静かに左手に持った豪華な装飾の施された短剣を抜き、頭上へ掲げると高らかに宣言する


「レーヴェンシュタイン王国国王、アルド・フォン・レーヴェンシュタイン陛下の名代として私リリア・フォン・レーヴェンシュタインが命じます、第六騎兵旅団指揮官ライアス・カ・レイジャス子爵よ、コルダの街に留まる王国第七槍兵旅団指揮官ゲス・イネン子爵と共に、アルガス砦にいる義勇兵らと合流し、コルダの街に居るコルダ地方一帯に混乱をもたらし、己の保身の為に民の命を魔族に売り渡そうとする逆族エゴトス子爵を捕縛し、そして未だにカサンドラに居座る悪しき魔族を討ち果たすのです! 」


 毅然としたリリアの勅命に兵士たちは奮い立つ、勅命を受けたライアスはリリアに一礼すると兵士たちに向き直り


「我らはこれより、リンドルム砦を出てアルガス砦に向かい進軍し義勇兵と合流する、ゲス・イネン隊と共に逆族エゴトスを捕らえるぞ、出陣! 」


ライアスの命令に


「オオーッ! 」


 という返事と共に、軍旗兵が王国騎士団第六騎兵旅団の象徴である『深紅地に金の聖槍と翼』の軍旗を高らかに掲げた


 壇上に同じく立っていた俺とミナはリリア達に


「俺達はライアスさんと一緒にアルガス砦へ行こう、もうエゴトス子爵も気付いて何か動くはずだからな」


その言葉にリリア達も頷く


 リリアは王家の短剣をしまうと、急いで旅の装備に着替えるために奥に下がり、ミナはいつもの革鎧と特殊な弓矢を持ってきた、木製で形は俺のよく知るボウガンのように見える


「ミナ、それはボウガンのように見えるけど、それを使えるのかい? 」


と言うとミナは


「はい、元々猟師のお手伝いはしていたのでボウガンも弓矢も使えるんですけど、ボウガンは高価で個人では持てなくて……それで弓矢も父のお下がりを使っていたんです、だけどそれもオーク襲撃の時に壊してしまって、それで砦の兵士さんにお願いしたら予備を譲ってくれたので、また持つことにしました、これでお手伝いできますよ」


 といって嬉しそうに専用の矢筒も腰につけていた、そしてリリアが着替えから戻って来るとミナの姿に


「まあ、ミナはボウガンが使えるのですね、これで一緒に戦えますわね」


と微笑む


「さあ、行こうアルガス砦へ! 」


俺達はライアス隊長率いる第六騎兵旅団と共にアルガス砦目指して出発した


 場所は変わって同時刻、コルダの街のゲス・イネン隊長のいる駐留軍駐屯場の兵舎に併設された屋敷、ゲス・イネン隊長の私室にて伝令兵の報告のメモを受け取るゲス・イネンは、一読したのちに手早くメモを暖炉に投げ入れて燃やすと、兵士に命令する


「ライアス隊長が出陣との事だ、予定通り我らも事を起こすぞ、急いで出陣の準備を、ああ、街を出る名目は……そうですね、避難民の区画で反乱の兆しがあるので万が一を考えて、街から出た所で取り調べを行うから駐留兵が随伴するとでも報告しなさい、もしも兵士の多さを言ってきたら廃砦と合流する恐れもあるので混乱を避ける為とでも言っておきなさい、あのエゴトスという男は内政に少しは明るいようですが謀略は苦手のようですからねぇ……クククッ」


伝令兵は敬礼をすると部屋を出る


「さて、ライアス君と共に盤面を回しますよ」


お読みいただき有難うございます

今回はライアスとの会談を通して、状況が大きく動き始める回になりました

また、リリアの「王女」としての立場も、これまで以上に物語へ関わっていきます。


 勅命を受けたライアス率いる第六騎兵旅団、そしてコルダの街に駐留するゲス・イネン隊長率いる第七槍兵旅団。それぞれの動きがこれからどのように交差していくのか。

引き続きお付き合いよろしくお願いいたします。


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