第1話 人類を救うと、俺だけレベルが下がるらしい
はじめまして、またはお読みいただきありがとうございます。
本作は「異世界転生×最強主人公」という王道要素に、
「人を救うほど自分だけが弱くなる」という少し捻った制約を加えたファンタジーです。
基本はシリアス寄りですが、息抜きとしてコメディ要素や軽いやり取りも含まれます。
重くなりすぎず、テンポよく読めることを意識しています。
※本作には
・レベルダウン要素
・ご都合主義的な展開
・R15相当の描写(後半)
が含まれます。苦手な方はご注意ください。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「メテオシャワー・ストライク! 」
既に瓦礫と化した王都ファールーンで魔王の眷族である魔物の大群相手に、無数の隕石をぶつける極大呪文を唱える、天空より飛来した無数の隕石が降り注ぎ魔物の大群が焼き払われていく。
「おのれ! 忌々しい勇者め! あと一歩の所を邪魔するとは! 」
それでも生き延びた魔物が数体、俺に向かって来るが、そんなものはとっくに織り込み済みだ! 俺は剣を抜く
「うおおおおおぉっ! 」
向かってくる魔物たちを横一閃に薙ぎ払う
「グエエッ! 」
魔物たちは藁束を斬るように真っ二つに切り裂かれその身が朽ちていった、辺りに静寂が戻る、俺がここに降り立った時は既に王都は壊滅、生き残っていたのは、この国の王様と供回りが数人、そして姫様だけだった。
その最後の生き残りが魔物に襲われる寸前に俺は間に降り立ち戦闘となった、辺りは瓦礫と灰に覆われていて周りは魔物だらけという状況だった。
俺は天に向かって両手を上げて完全蘇生の魔法を使った、天から光の柱が現れたと思うとそれは王都全体に広がって、大勢の人々が歓喜の声を上げた。
王様らしい人が感激している
「おお、これこそ勇者様の持つ古より伝わる神の魔法! この大恩、どうすれば報いることが出来るのか……」
と、その時天から俺の頭の中にアナウンスの声が響いた、と同時にガクンと力が抜けて思わず膝から落ちそうになるのを気合で堪える
「人口20万人の王都の民、復活のペナルティーとして2000レベルを上限と共にダウンします、現在のレベルは7999レベルです」
クッ……いきなり力が抜けるから、もしやと思っていたが
「マジかよ……」
それにしても意外に人が大勢いたんだな、そしてこの魔法を使用する度に今後もこれが続くのか……と、考え込む俺を、何故か姫さんはキラキラとした瞳で見つめていた事に気付く事は無かった、とそこに王様が話しかけてきた
「勇者殿、お初にお目にかかる、私はレーヴェンシュタイン王国の国王、アルド・フォン・レーヴェンシュタインと申す、勇者殿が魔王を討伐の旅に行かれるのであれば是非、娘のリリアを共に連れて行って下さらぬか? 娘は神聖魔法の使い手で此度の魔王軍に対する王都での戦いでは、傷ついた兵士たちを回復させる為、大神官と共におりましたが、多勢に無勢でここまで追い詰められていました」
そしてリリア姫は貴族の作法の礼をしたあと
「初めまして、私はリリア・フォン・レーヴェンシュタインと申します、お願いします勇者様、この私を魔王討伐の旅に加えて下さいまし! 必ずお役に立てて見せますわ! 」
リリア姫の気迫に押された俺はたじろぎながら
「あ……ああ、確かに回復薬は必要とは思う、俺自身も回復魔法は使えるから行く先での怪我人を治してもらう事になるだろうけど、それでも良」
俺が最後まで言い切る前に彼女はパアっと顔を明るくして
「ありがとうございます! このリリア、必ずお役に立って見せますわ! 」
そう言ってリリア姫と共に魔王討伐の為に先ずは交易都市を目指す事になった、しかし人々は復活したが辺り一面建物は以前として瓦礫の山だ、そう言えば人々が復活したものの今後食料はどうするのか、まさか食べ物すらないなんて事は無いとは思うが、念のために王様に聞いてみると、供回りの1人が答えた
「この王都には地上にある食糧倉庫とは別に非常用の地下食糧倉庫があります、それにこの王都の商業区画やいたるところに大量の備蓄が地下に隠してありますので、幸い領内の農地も無事でしたから、大凶作にでもならない限り来年の収穫の時期までは持ちこたえられますよ」
「なるほど、そういう事なら……まあいいか」
しかし、思った以上にレベルダウンは身体によろしくない、今後もこのような状況が続くのであれば、果たして敵の本拠地にたどり着いたときに魔王討伐は出来るのか? だが最初から高レベルで降り立たなければまともに目的を果たせるかどうかも疑問だっただろうが、これも神様との約束だ、今は前に進むしかないだろう。
「思えば、そもそもあの出来事が発端だったな」
そう呟いて、この地に降り立つまでの経緯を振り返る
俺の名前は佐藤悠馬家計を助けるために高校を卒業後にすぐに就職、中小企業の工場で現場作業はキツイが給料はそこそこ有る、何より実家から徒歩圏内だったのが良かった、俺は実家から通う事で無駄な住居費を抑え稼いだ金を家に入れて、月3万の小遣いでやりくりしていた。
スマホは家族割にしてランニングコストは下げつつ、ショートメールや無料通話分で最低限のやり取りで使用量を抑えた、もちろんソシャゲはご法度だ。
そんな生活をしていたある日、母親が倒れた。
悪性の腫瘍が見つかって緊急入院、医者からは手術には成功したが再発の恐れがあるのでしばらく入院だそうだ、そんなわけで俺は今日も仕事帰りにドラッグストアで必要なものを買って母親のいる病院へ向かう途中だった、そこで俺の記憶は途切れている。
気が付くと、そこは真っ白な世界だった……雪景色なのかと思ったが寒く無いし、むしろ温かい、足元を見ると何かが見える…何処かの病院の病室、そのベッドに俺の母親が横たわっていた、医師が何かを看護師に言っている、あれ? そう言えば俺は何をしていたんだっけ。
その時声が聞こえた
「お前は母親の見舞いに行こうとしていたが交差点で起きた交通事故で死ぬところだったのだ」
声のする方へ向くと、そこには白髪で白いひげを蓄えた白のローブをまとった老人が居た、何か俺の事を知っているみたいだが……親戚にこんな変わった老人居たっけ?
俺がそう考えていると、また声が聞こえた、やはりこの変な老人が喋っている。
「変な老人とは何だ、失礼な奴め、私は神だ、佐藤悠馬よ」
「なんで俺の名前を知っているんだ?やはり俺の知らない遠い親戚か? 」
「その親戚という考えから一旦離れろ、私はお前を死の運命から救うために呼び寄せたのだ、お前を別の世界へ転移させてあげよう、その代わりに私の頼みを聞いてもらう、もちろん別の世界ですぐに死なぬように強化もしてやる」
「断る」
俺が答えると老人は意外な返答に戸惑っている
「何故だ? 今まで決して裕福とは言えない人生だったのだから報われたいとは思わないのか? 」
「俺だけが幸せになっても、意味が無い」
その言葉に神とやらは納得したような顔で
「ふむ、なるほど……では転移に応じて、私の頼みを聞いたのならば、母親の命を救う……という事ならどうだ? 」
そう言って仙人みたいな白いあごひげをなでる、俺はその様子を見ながら
「それは本当か? 」
「神に嘘偽りなど無い」
まだ不審な点はあるけれど、そもそも神の頼み、というのが判らないと何とも言えない。
「先ずは、その頼みというのを聞きたい」
「うむ、お前の転移先の別の世界……解りやすく異世界と呼ぶが、その世界は魔王と配下の魔物の軍勢によって滅亡の危機にある、お前はその魔王を討伐して異世界を救ってほしい」
なんだそれは? 異世界と言う所は魔王が居るのか? もう少し情報が欲しい
「その世界はどんなところだ、どんな種族が居て、どんな危険があるんだ? そもそも日本語は通じるのか? まさか無一文で放り出すのか? 」
俺が矢継ぎ早に質問すると即座に答えが返ってきた
「無一文で放り出すことはしない、その異世界には様々な人種がおる、エルフやドワーフ、リザードマンなどの亜人種も多い、中にはゴブリンやオークといった好戦的な種族もいるがな、言語については問題ない、転生先でも読み書きや会話が出来るようにしておく、路銀も少しは与えよう……通貨単位は金、銀、銅貨だ、レベルやスキルという概念があり、お前はレベル1からスタートするが、魔物を倒していけば経験値も入りレベルアップも出来る、装備も持たせておく、持ち物が増えるだろうから容量無限のアイテムボックスという便利なものも与えよう、これで納得したか? 」
やたらと長い説明に、思わず俺はため息を吐く
「そうか……せっかくの申し出だが、断る」
俺の答えに驚く神様
「何故だ! 条件は良いと思うのだが? 」
という神に対して俺は答える
「異世界で1レベルからスタート? 魔王を倒すまで一体何時までかかるんだよ、 あんたの言う事が本当なら、そんな悠長な時間は無い筈だぞ? もし仮に首尾よく魔王を倒すことが出来ても、その前におふくろが病気で死んだら元も子もない、どうやら元の現世で命を落とすと生き返る事は出来ないようだしな、違うか? 」
俺の問いかけに神様は唸った
「確かにその通りだ、あくまでも現世で亡くなった場合は現世での復活は出来ない、そういう決まりになっているからな、それに時間的猶予もあまりないというのもその通りだ、お前は、どうしたら引き受けてくれるのだ? 」
神の問いに、しばし考えたのちに俺は無理を承知で提案した
「なら、俺をレベルカンストした状態で転移させろ、最強のステータスの状態なら魔王討伐までの時間短縮になるだろう? 」
俺の出した提案に神は一瞬ギョッとしたみたいだが、すぐに落ち着きを取り戻す
「なるほど、しかしそれならばその対価としてペナルティーを受けてもらう事になるが、それでも良いか」
ペナルティー? 何か嫌な予感がしたので聞いてみた
「そのペナルティーと言うのは何なんだ? 」
そうしたら神はとんでもないことを言ってきた
「転移先の世界のレベル上限は9999、お前は勇者の能力でレベル1から死者を完全蘇生させることが出来る、但しその能力で一人蘇生させる度にお前のレベルが1下がる事になる、異性とのまぐわいでも1回につきレベルが1下がる、しかもこれはレベルの上限まで一緒に下がる、例え魔物を狩って経験値を稼いだとしても上限以上にレベルは上がらぬ、そして上限レベルが1を下回る……つまりレベルがマイナスになった時点でお前は死ぬ。」
流石に理不尽すぎるペナルティーに俺は抗議した
「おいおいおい! 冗談じゃないぞ! じゃあ何か? 仮に1万人を超える街が全滅していたとして、そこの全員を復活蘇生させたら、それだけで俺の一生は終わりって事か? そんな条件を呑める訳無いだろ! 」
神はやれやれと首を横に振ってこう言い放つ
「初めから強大な力を得るという無茶を要求したのはお前の方からではないか、ペナルティー無しというのは通らん……だがまあ、条件は変更してやる、どういう条件でレベルが下がる場合は納得するのだ? 」
どうもレベルダウンのペナルティーは避けられないようだが、条件は緩和できるみたいだ、いっそ1万人蘇生でレベル1ダウンを要求するか? そんなことを考えていたら神は呆れたように言った
「さすがに1万人の蘇生でレベル1ダウンは受け入れられん、100人の蘇生でレベル1下がるというのならば良いだろう、要求はそれだけか? 」
そう言えば考えている事は筒抜けだったな
「他に何かあったか? 」
俺の質問に神は呆れた顔をした
「異性とのまぐわい1回につきレベル1下がるというペナルティーに文句は無いのか? 」
文句が無いわけではないが、自分の過去を振り返っても異性と縁があった事は無い、それが生涯続くという事も無いだろうが意識していないのだから改善する事も無いだろう
「はあ? 自慢じゃないが、俺は生まれて今まで一度も異性にモテた事は無いんでね、縁のない事にペナルティーがあったところで大した問題じゃない、それよりも100人の完全蘇生につきレベル1下がるという条件は通るんだな? 」
と確認すると神はなんか意外そうな顔をして承諾した
「それならば問題ない、お前の転移先の世界では復活蘇生の魔法が可能だ、そしてお前はレベルが上限一杯になっているので、ありとあらゆる呪文を習得し使用出来る、但し、レベルが下がり能力や魔力が下がれば、覚えていたとしても、高レベルの魔法は使用できなくなるが、それで良いか」
神の問いに俺は
「それで良いよ、自分でコントロール出来るならば、それに越したことはない」
俺の答えに神は頷く
「よかろう、最後に救済措置として天聖石という1、5、10、50、100の五種類のレベル上限とレベルの回復が出来るアイテムがある、それは基本的に特定のモンスターを退治する事で手に入る、そして石のレベルが高いほど入手が困難だ、1レベルならモンスターも個体数は豊富だが、5レベルから個体数は少なくなる、10や50は特定のダンジョンでしか手に入らぬ、また使用時に効果があるのは勇者と勇者が加護を与えた仲間のみだ、それ以外の人間が使用しても効果は無い。」
天聖石の事はチョット引っかかったので聞いてみることにした
「その加護っていうのはどうやるんだ? 何か呪文でもあるのか? 」
「お前がその仲間を守ってやりたい存在として認識し宣言を行えばよい、但し、お前自身が直接会って宣言をしなければ駄目だ、やり方は仲間に向かって、最初に相手の名前を呼び、次に『仲間として〇〇に勇者の加護を与える事を、ここに宣言する』と言えば良い、簡単だろう、宣言は一字一句あっていなくとも、宣言として伝わるならば加護を与えることが出来るものとする、因みに人数の上限は無い。」
確かにやり方は簡単だ、だが逆を言えば無尽蔵に仲間を増やすことも出来るという事でもある、ちゃんと信頼関係を結べていれば良いが、万が一魔王のスパイが紛れ込んでいた場合、強大な敵を自ら作り出すというリスクもあるって事になる、あまり軽々しくは使えないな。
「やり方は理解した、分かったよ、その条件で異世界への転移を受け入れるよ」
俺の言葉に神は喜んだ
「おお、やっと承諾してくれたか、では早速転移を始めるぞ、転移先の世界の名はファンタジア・ルーンだ」
そして俺は意識を失った、次に目を開けた時目の周囲の景色は瓦礫と何かの焦げた匂い、背後に聞こえる怯えた声そして目の前に魔物の群れが居た。
「どうかしましたか? 勇者様」
「あ……いや、何でもない、それより徒歩の旅は疲れないか? 」
「いいえ、馬車で移動も良いですが、このような旅も良いものですわね」
王都を旅立ってから3日が過ぎた、俺は徒歩の旅に早々に音を上げると思っていたのだが、姫さんは中々タフなようだ
移動中にリリア姫は俺が王都に降臨するまでの世界の情勢を教えてくれた
「魔王軍は、ここレーヴェンシュタイン王国の治める大陸とは別の、魔の島と言われている所に居城を構える魔族の国なのですが、その魔王軍が、全世界に宣戦を布告したのです」
「その前に王国は何か対策を打っていたか? 」
「それは勿論、各方面に軍を派遣して迎撃に当たるようにしていました」
「その宣戦布告からその1週間後に大軍が大陸に上陸、魔王軍は主要な大都市を狙って侵攻を開始し、全滅させた大都市は占領せず物資のみ奪って戦力を維持したまま進軍、途中の町や村は小規模なものは悉く無視されて、飛び石のように中規模の街や王国軍の砦を壊滅させて物資を略奪し、驚異的な進軍速度で王都まで進軍してきたのです」
という事らしいが、魔王か、或いはその側近はかなり優秀なようだ、この国を亡ぼすという目的を達成するための最短の方法を考えれば当然ながらそうなるだろう、これが支配と統治となればもっとじっくりと攻めるだろう、だが連中は速度に重きを置いた、だからこそ王都にまでたどり着けたのだろう。
魔王軍は進軍速度を重視した、その為、魔王侵攻軍の殆どを王都で迎え撃つ形になり、砦の防衛や大都市付近での迎撃で軍を派遣した事が戦力が分散という形で裏目に出てしまい、王都に残っている守備兵力だけでは打って出る事も出来ず、いよいよ国民も武器を取り奮戦するが、強大な魔王軍に抗う事は叶わず……という事だったようだ。
「所でリリア姫」
「まあ嫌ですわ勇者様、仲間なのですからリリアで構いませんのに」
「ああ、そう? じゃあ……リ、リリア」
「ハイ、なんでしょう? 」
「……なんか、近くない? 」
俺にピッタリとくっつくリリア姫だが平然と
「いいえ、普通ですわ……さあ勇者様、そろそろ村が見えてきましたわ」
リリアは妙にうれしそうなんだが、何故だ? 確かに道中で不意に現れたモンスターを撃退したり、木の枝で怪我をしたリリアに回復魔法をかけたりしたことが結構あったが、それは仲間として当然の事で……あれ? 何でリリア姫は自身の神聖魔法を使わなかったんだろう?
うーん、よくわからん……そうこうしているうちに、ようやく村が見えてきた、だが、村の入り口で目に飛び込んできたのは、村娘が助けを求めて駆けてくる姿と、それを追いかけて来たオークだった。
「お願い……村を……助けて! 」
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
この物語は、
「正しいことをすればするほど、自分が損をする」
という理不尽な状況に、それでも立ち向かう主人公を描いています。
まだ物語は序盤ですが、
これから
仲間が増え
選択が重くなり
レベルダウンの意味も変わっていきます。
更新はできるだけ定期的に行う予定です。
もし続きを読んでみたいと思っていただけたら、
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