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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第3章  法国聖都_迷宮踏破編
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茸の串焼きと茸スープ

 法国へ出発する当日。幸いなことに天気はいい。旅日和だ。


 魔道具は4ヶ月先の分まで納品した。知り合いへの挨拶も昨日で済んだ。食料諸々も改造馬車に積み込んだっと。

 準備は完了。忘れ物はなし。家の戸締りも抜かりなし。


「じゃあ、出発しようか」


「うむ」


「わふ」


 改造馬車に乗り込む。ハンドルを握るのはロゼッタだ。魔力を供給された動力部が低く唸りを上げる。


「安全運転でお願いします」


「うむ。気を付けよう」


 都市の石畳の上を、低速で馬車が進む。飛竜の革を加工した特別性のタイヤは中々に静かだ。


 人通りの少ない家の近くから大通りへと出ると、かなり注目されることになった。道行く人が立ち止まって凝視してくる。


「目立ってるねえ」


「それはそうだろう。馬に牽かれずに走る馬車は、私もこれ以外には見たことが無い」


 まあ、作るのに金掛かり過ぎるからな。開発と維持費を考えれば、馬に牽いてもらった方が賢明だ。

 普通の人では魔力も足りないだろうし。


 注目を集めながら通りを走り、都市の外へと出た。


 都市を出ると、そこには鮮やかな黄色が一面に広がっていた。たっぷりと実った麦たちだ。視界いっぱいに見える黄金が、風に揺れているのは圧巻の光景だ。

 農家の人達が、収穫を迎えた麦を刈り取っているのが小さく見える。


 氷龍による冷害の影響はなさそうだ。この光景は、確かにオレが守れたものでもあるのだろう。少なくともこの都市では、空腹に絶望する人は出ないはずだ。

 オレだけの力ではないけれど、その事実が少し誇らしい。


「ははっ」


「む?どうかしたのか?」


「いや、なんでも。ただ、綺麗な景色だなあって」


「うむ。そうだな。私も綺麗な景色だと思う。風にそよぐ麦は美しいものだ」


 道の両側に広がる麦畑を眺めながら、ゆっくりと馬車を走らせた。





 無人の道を、改造馬車が颯爽と走る。ずっと真っすぐな道だ。すれ違う馬車がないのであれば、速度を抑える必要もない。


「このペースで魔力は大丈夫?」


「うむ。このくらいなら問題はない」


 改造馬車の速度を上げたロゼッタは、少し楽しそうな表情をしている。問題ないならいいけど。オレも一応ロゼッタの魔力を気にしておこう。


 改造馬車の速度は馬に牽いてもらうより速い。このまま行けば、予定より早く法国の聖都へ着けそうだ。到着が早くて困ることはない。時間が余ったら、お米を探しに出掛けよう。


「ロゼッタ、お茶飲む?」


「もらおう」


 水筒に入れたお茶をロゼッタに手渡す。もう少ししたら、運転交代しようかな。





 夕方。街道から少し外れ、夕陽で赤く照らされた草原に馬車を泊める。近くに小さな森が見える場所だ。今日はここまでだな。


 通常の野営と違い、天幕を張る必要もないので楽だ。2人だけなら馬車の中で余裕で寝ることができる。


 さて、野営と食事の準備をしよう。


「ロゼッタは薪拾いと、焚火の準備よろしく。余裕があったら水も出しておいて」


「うむ。任された」


「タローは留守番な。異常があったら吠えてくれ」


「わふ」


「よし。じゃあ、よろしく」


 オレも森に入る。少し食材の調達だ。っと、その前に虫除けの魔道具起動しないとな。


 馬車に設置された魔道具を起動する。虫だけを弾く弱い防壁が展開された。


「これでよし」


 野営で一番嫌なのは虫だ。毒持ちもたまにいるしな。あと、料理に飛び込んできたら、種を絶滅させたくなる。許されねえぞ。


「タロー。留守番任せたぞ」


「わふ!」


 タローに声を掛けて森へ向かう。季節は秋だ。それで森に入るとなれば、最大の狙いは茸だろう。




 薄闇の森の中。見つけた茸を籠に放り込んでいく。茸は種類が多く、毒茸との見分けは慣れていても難しいものだが、幸いオレには毒見の魔道具がある。判別は容易だ。

 毒の判定が出た茸は無視し、安全なものだけを採取していく。名前も知らない茸が多い。毒が無いのは分かっているが、美味しいだろうか。美味しいといいな。


「まあ、こんなもんかな」


 1食分には十分だろう。あまり採り過ぎるのもよくない。野営地に戻るとしよう。


「茸、キノコ~っと。ああ~。炊き込みご飯とかいいな」


 秋だしな。


「茸と秋鮭とか?」


 いいな。美味そう。茸と鮭の旨味が染みたご飯とか、超美味しいだろうな。おこげが出来れば最高。秋の味をじっくり噛み締めたい。

 炊き込みご飯単体でいくらでも食べれるな。おかずいらないね。


「法国行ったら稲生えてたりしないかな~」


 あるといいなあ~。




 野営地に戻ると、ロゼッタが鍋に水を出していた。隣では焚火が赤々と燃えている。そして、その火に照らされて、首の折れた野鳥が横たわっていた。

 狩ってきたのかな?


「ただいまー」


「おかえり。薪集めのついでに、野鳥を狩ってきた。夕食に使ってくれ」


 そうらしい。


「了解。別の鍋にも水出してくれる?」


「うむ。分かった」


 野鳥の処理にもお湯が必要だ。ロゼッタの魔力は……申告通り大丈夫そうだ。水も火もロゼッタに適性はないが、野営に使うくらいなら問題なく出せる。


 お湯沸かす間に、オレは茸をざっと洗おう。鍋から水をもらい、ざぶざぶと表面の汚れや土を落としていく。


 茸を洗い終わる頃にお湯も沸いた。野鳥の処理をしようか。


 茹でて羽をむしり、野鳥をバラしていく。最近解体をしていなかったせいか、背中がざわざわする。この野鳥より、今のオレの方が鳥肌かもしれない。


「……」


 いつの間にか、横にタローが来ていた。野鳥を見つめて尻尾を振っている。つぶらな目に食欲が浮かんでいるのが見える。


「……内臓食べる?」


「わふ!」


 即答。タローは内臓好きだしな。野鳥から引き抜いた内臓を渡してやる。うん。いい食べっぷりだ。狼だな。


 さあ、野鳥の処理は終わった。料理に取り掛かろう。


 まずはスープだな。暗くなってきたし、手早く済ませよう。沸かした鍋に、細切りにした玉ねぎと腸詰、小さいサイズの茸を全て投入。以上。

 豪快に煮込んでいく。あとは味を見つつ、塩で加減しよう。


 大型の茸と野鳥の肉には串を打ち、焚火で焼いていく。肉の皮部分から染み出た油が弾ける音がいい。ジューッという音が食欲をそそる。


 火が通り、水分が抜けしわしわになってきた茸に、軽く醤油を振りかける。こぼれた醤油が焚火に落ち、焦げた醤油の匂いが爆発した。腹減ったな。


「ロゼッタ。買ってきたパン出しといてー」


「分かった」


 野鳥の肉には塩と香草を振りかける。これでよし。あとはスープの味付けだけだな。


 茸と肉の串を皿に移し、スープに塩を足して完成。夕食にしよう。




 折り畳み式のテーブルの上に料理が並ぶ。焚火だけでは暗いので、ロゼッタが魔術で光を出してくれた。柔らかな白い光が周囲を照らしている。

 テーブルの上にはパンに漬物、茸と野鳥の串焼き、茸スープが並べられている。美味しそうだ。


「「いただきます」」


「わふ」


 まずは、茸の串焼きから食べてみる。まだ湯気が立って熱そうだ。火傷に注意して齧り付く。


「あふっ!」


 熱っ!噛んだ瞬間に茸のエキスが口の中に広がった。普通に熱い。ほふほふと冷ましながら食べていく。

 美味い。肉厚な茸は歯応えが良く。噛むたびに茸の旨味と少し焦げた醤油の風味が広がってくる。鼻を抜ける醤油の香りが楽しい。ああ、美味しいなあ。


 次はスープに手を伸ばす。様々な種類の茸が入った豪快なスープだ。入れた腸詰の油が、表面で煌めいている。


 器ごと持ち上げて、そのままスープを一口。


「うおお~!」


 キノコ~!すげえ。旨味の暴力。溶けだした出汁がこれでもかと旨味成分を主張してくる。美味い。栄養が体に染みていきそうな感覚がする。

 具材も口にする。煮込まれた茸たちは、それぞれ異なる食感で飽きさせない。


「うん。いいねえ。秋って感じ」


「うむ!美味しいな。茸尽くしとは贅沢だ」


「わふ」


 野鳥の串焼きも美味しい。焼き加減が良かった。皮がパリッとしていい感じだ。口内に溢れる油がたまらない。


 旅先でも美味しい食事を摂れるのはいいことだ。明日の移動も頑張ろう。




 夕食は満足だったが、1つだけ不満がある。醤油で味付けした茸の串焼きは、やっぱりパンには合わなかった。お米があれば完璧だっただろう。


 オレは早くお米を見つけることを改めて決意した。


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シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
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