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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第3章  法国聖都_迷宮踏破編
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かき氷

 法国への出発まであと5日。今日は孤児院に来ている。天気はいい。というか良すぎる。かなり暑い。残暑というやつか。


 眩しく照らされている中庭では、ロゼッタと子供達が元気よく動き回っていた。


「うむ!皆良い動きだ!次は三の型だ!行くぞ!」


「「「はーい!」」」


 ロゼッタの右脚が鋭く走る。三の型はローキックらしい。当たったら折れそう。


 ロゼッタが子供達に教えているのは、帝国騎士流の捕縛術らしい。見ていると、相手の体のどこかに損傷を与えて動きを封じるのがコンセプトのようだ。

 対象の骨を折って制圧するのは、果たして捕縛術と呼んでよいのだろうか……?


「コーサクさん?どうかしたっすか?」


 視線を外していたオレにリックが話し掛けてくる。


「いや。なんでもないよ。悪いね。続きを説明しようか」


「はいっす」


 オレとリックは中庭の日陰部分で、頭を突き合わせている。魔道具の使用方法をレクチャー中だ。

 以前、人攫いが出たときに使った、子供達の場所を指す魔道具を初めとして、いくつかの魔道具をリックに預けていくつもりだ。


 オレ専用に作った魔道具なので、普通の人には使いづらい。リックの意見も聞きつつ、その場で改良している。

 オレ達が法国へ行っている間は、何かあっても助けにくることが出来ないので、万が一の事態への保険だ。


「こっちが防壁の魔道具ね。アクセサリー型の発信の魔道具を装備している人の周囲に、防壁ができる。緊急時は発動して投げればいいよ。効果範囲に入ったら、かってに防壁を展開するから」


「はいっす!」


 説明はもう少しかかりそうだ。種類も多いし、あとで説明書も作って渡そう。


 オレが説明しているすぐ横では、タローが地面に寝そべっている。そのタローに寄り掛かるようにして、ミリアが眠っていた。さっきまでは、ロゼッタの捕縛術教室で体を動かしていたが、疲れてしまったようだ。


 それにしても、こうして子供達と比べると、タローは大きくなったな。まあ、白狼は大人で全長3mくらいらしいので、まだまだ子供だろうけど。

 ……3mか。ちょっと家のリフォームが必要かも。まだ先だけど。魔物は寿命が長いから、成長の速度も少し緩やかだ。人間ほどではないけどな。





 ロゼッタと子供達が休憩に入る頃、ちょうどオレの魔道具の説明も終わった。


 暑い中で動き回った皆は、かなり汗をかいている。水分補給が必要だろう。秋とはいえ、気温が高ければ熱中症にもなる。


 久しぶりにあれやってみるか。そういえば、この世界に来てから食べてないな。夏の風物詩なのに。


「リック。ちょっとお使い頼まれてくれる?」


「いいっすよ。何買ってくればいいっすか?」


「氷。塊のままで。え~と、氷屋で売っているやつなら、5個でいいや」


「了解っす!行ってくるっす!」


 リックが風のように走っていく。さて、オレも準備しよう。最低でも2ヶ月外出するので、家の冷蔵室から悪くなりそうな食材を孤児院に渡すために持って来ている。

 その中に果物も何種類かある。シロップというか、ジュースみたいになるが、まあいいだろう。


 これから作るのはそう、かき氷だ。





 イルシアに声を掛けて、かき氷のシロップを作っていると、甘い匂いに反応した子供達が寄ってきた。


「なにこれー?」

「ジュース?」

「飲んでいい!?」


「もう少しで分かるから、イルシアの言うことを聞いて、お椀とスプーンを持ってこい」


「みんな。コーサクさんの邪魔しちゃダメよ。こっちを手伝って?」


「「「はーい」」」


 子供達がイルシアの元に駆けていく。オレ以外には素直だ。協力して、テーブルや食器類を運んでいる。ロゼッタもそっちに混ざっていた。


 オレの方は準備できた。出来上がったのは、果汁100%のフルーツジュース(果肉入り)だけど。まあ、市販のシロップより体にはいいんじゃないだろうか。


 あとは、リックがいつ帰ってくるかだな。


「ただいまっす!」


 ナイスタイミング。リックが帰ってきた。氷は風で空中に浮かんでいる。


「おかえりー。ありがとう」


「いえいえっす」


 まあ、リックに頑張ってもらう本番はこれからなんだけどね。


「さて、リック。ここから先はリックの協力が必要だ。手伝って欲しい」


「っ!はいっす!何でも言ってくださいっす!」


「え~と、じゃあ……」





 この世界にかき氷機は無い。ならばどうやってかき氷を作るのか。答えは簡単。人力である。


「いくっすよー!」


 防壁に固定された氷に向かって、リックが魔術を発動する。オレが渡した金属片を巻き込んで、風が渦を巻く。


 小さな竜巻が氷にぶつかり、ガーッと削り始めた。柔らかな白い結晶達が、下に置かれたお椀に積もっていく。


「「「「おおおおー」」」」


 成功だ。人力、というか魔術式のかき氷がここに成功した。さすがリック。凄まじく緻密な操作だ。風の精霊に愛されているだけはある。


「出来ったっす!」


 小山になったかき氷にシロップをかける。ほどほどに。かけ過ぎると、すぐ融けるからな。今もシロップをかけた場所からゆっくりと凹んでいる。


 最初のかき氷は、一番小さなミリアに渡した。赤く鮮やかに染まった氷を、ミリアが小さな口に入れる。

 全員の視線がミリアに集中した。


「っ!美味しい……」


 よし。問題なくできたようだ。


「つぎ、ぼくー!」

「わたしもー!」

「はやくー!」


 ミリアの食べる姿を見て、テンションの上がったチビッ子たちが寄ってくる。そんなにいっぺんには作れねえよ。


「コーサクさん!このくらいなら、5つ同時でも行けるっす!」


「え、マジで?え、じゃあ、お願い」


 この精度で、5つ同時。行けんの?


 残る4つの氷も防壁で空中に固定する。


「いくっす!」


 リックの言葉と同時に、5つの竜巻が立ち上げる。シンクロしたように、それぞれの氷を削って行った。

 すげえな。さすが風の精霊使い。魔術の二重発動だけでも難易度は高いのに。軽々と5つ同時とは。


 勢いよく出来上がるかき氷。協力して器を替え、シロップをかけて行く。あっという間に、全員にかき氷が行き渡った。予想以上だ。リックには少しサービスしよう。


 リックも含めて、全員でかき氷を食べる。熱を持った体に、冷たい食感が心地よい。果物そのままのシロップは少し酸味が強いが、これはこれで美味しいな。


 ああ、そうだ。言い忘れていた。


「みんな。あんまり勢いよく食べるなよー。頭痛くなるから」


「ぐむう……」


 隣で呻き声がした。視線を向けると、ロゼッタが涙目でオレを見ている。手元の皿には、かき氷がほとんど残っていない。


「……コーサク。言うのが少し遅い」


 どうやら、頭痛に当たってしまったようだ。辛そうに顔をしかめている。


「ははは。ごめんね」


 次からはもう少しゆっくり食べるといいよ。来年はちゃんと夏に作るから。


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よろしければこちらもどうぞ! 『お米が食べたい』シリーズ作品

〇コーサクの過去編 : 『ある爆弾魔の放浪記』  

〇ルヴィ視点の物語 : 『狩人ルヴィの故郷復興記』

シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
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