十月のエリーゼ 第二十四話
「山車のルートも安定して参りましたわね!私の作品はこれだけではございませんのよ!ぽちっとですの!」
ジョゼが御者席に設置されていくつかのボタンのうちの一つを押すと、山車の台車の回転を利用した機構のギアが噛み合い、動作を始める。
「見て!あのゴリラ、腕が動くわ!」「カバが口を開けてる!」
ゴリラは腕の付け根が回転し、カバは顎が上下する。
観客の、主に子供達から喝采が上がる。ジョゼは少しだけ残念そうに呟く。
「象さんの鼻とライオンのお口は間に合いませんでしたの」
「サリエル!これは何の騒ぎだ!」
ロータリーの一番外側に辿り着いたばかりの騎乗のサリエルに、別の騎馬が近づいて来た。リシャール・モンティエ大尉だ。
「えっ、あ、あの」
サリエルは自分の変装が全く通用していない事に困惑した。
「その、色々な誤解があってですね、お嬢様もあの魔女も悪くないのです、それなのにこんな事になってしまったのは私の不徳と致す所なので」
「かいつまんで話せ!」
「お嬢様を助けて下さい!」
モンティエもたまたま別の用事で部下を連れ近くを通っていた所を駆り出された。近頃は労働争議でも何でもすぐ、暴動鎮圧だと言って呼び出される。
周囲の馬鹿騒ぎは狂気じみていた。ロータリー交差点の周りは群集で埋め尽くされ、皆帽子やらハンカチやら振り回して、パレードと演奏に歓声を上げている…
歓声は巨大な風船に乗ったエレーヌが近づいた時に一番大きくなるので、ロータリー交差点の周りには一つの波が出来、回っていた。
「何をどうしたらこうなるのだ…」
モンティエは眉間を押さえる。あんなふうに風船に乗って空を飛び周り、皆の喝采を受けている人間を見るだけで、自分まで恥ずかしくなる。
しかし、サリエルは助けを求めているし、何より風船に釣られたエレーヌの表情は、この状態を楽しんでいるようには見えなかった。
それでも少し前までのモンティエだったなら、こんな乱痴気騒ぎに関わるのは全くの御免だと、例え師団のド・コルヴェ大佐に命令されようと無視してこの場を離れていたかもしれない。
けれどもモンティエは先日、エレーヌが人命救助で見せたノブレス・オブリージュの輝きが脳裏に焼き付き、忘れられずに居た。
ここで晒し者の恥のと恐れるようでは、自分は男と居えるだろうか。
「くっ…」
モンティエは馬を駆り、馬車や自動車が密集し、巨大なメリーゴーランドと化したロータリーに挑む。
「今行くぞー!」
どうにか、駅馬車の屋根やらを伝い、七人の小人の山車の一つの所まで、消防士の男の一人が辿りついた。しかし。
「うわあああーっ!?」
男が飛びついた途端、小人の山車の台車は壊れ、男は小人もろとも投げ出されてしまった。
「危ない!」「うおお!?」
間一髪、立ち上がった消防士はどうにか轢かれる事を免れ、ロータリー中央の庭園に逃れる。
小人は六人になってしまった。
次に辿り着いたのは騎馬の警邏だった。
「君、止まれ!止まりなさい!」
警邏は御者席のジョゼを説得する。しかし。
「貴方が止まるのですわ!」
「えっ…」
ジョゼはフルーレのような物を抜き、警邏の肩を切っ先で突くのではなく、側面で軽く叩いた。すると。
「ぎゃああっ!?」
火花が散り、警邏は危うく落馬しそうになった。火花を恐れ、馬が馬車から離れるのを警邏は止められなかった。
「あの女の子、本物の魔女だぞ!」
「そんな馬鹿な!?」
それを目撃していた、駅馬車や辻馬車の乗客がざわめく。
「エレーヌ様のお誕生日パレードを邪魔する者は、誰であれ許しませんのよ!パレードは私が守りますわ!」
ジョゼは愉快そうに叫ぶ。どうもそのフルーレの柄には、何かの線がついている。カトラスブルグの人々はまだ、スタンガンなどという物の存在を知らない。
モンティエは馬でゴリラの山車に近づいていた。この場所なら御者からは見えないだろう。山車に馬の行き足を揃え…山車の上に転げ落ちるように、モンティエは降り立つ。勿論こんな訓練などやった事がある訳が無い。
次はライオンの山車か。モンティエは山車の乗ったまま、前の山車に繋がっているロープを引き寄せる。
「大尉ー!気をつけて下さい!」
「…!お前はまた…!」
そこへ…またオーブリーに扮した粗忽者がやってしまう。サリエルとしては声援を送ったつもりなのだが、それでジョゼに、モンティエが後ろでしている事がバレた。
「…大尉というのは…前に少しエレーヌ様と話をしていた殿方ですわね!貴方はサリエルお姉さまが呼んだピエロでは無いの!?一体どちらの味方ですの!」
ジョゼはオーブリーにそう叫ぶと、御者席で立ち上がり、ハンドルを固定する。彼女は定期的に電気を流し馬を追う装置を既に取り付けてあった。
「自動運転ですわ」
あのフルーレを持ったまま、ジョゼは伯爵屋敷の馬車の上に上がり、小走りに駆けて飛び…ひらりと、アーチのある山車に着地する。
「もう馬車を止めるのだ!やめろ!」
象の山車まで来ていたモンティエが叫ぶ。
「貴方にはエレーヌ様のお誕生日を祝おうという気持ちがございませんの!?やはり殿方は話になりませんわ!エレーヌ様はこのジョゼが守りますの!」
モンティエもアーチ山車に飛び乗る。陸軍大尉である彼はサーベルを提げている。
「おい!魔女と王子様の対決だぞ!」
「気をつけろー!その魔女は本当に魔法を使うぞ!」
駅馬車の乗客が叫ぶ。
ロータリー周辺の狂気が増して行く。
周囲の建物では、勝手に入り込んで二階から見物しようという者も多かった。
バルタザールの店は幸い少しだけロータリーから離れていたので、乱入者は居なかった。しかし三階という高さは、風船で釣り上げられたエレーヌとちょうど同じくらいの高さだった。
「お嬢様、本当に喜んでるのかな…ここまで派手好きな方ではなかったような…」
ミリーナは心配そうに呟く。
マナドゥは腹筋の崩壊に苦しんでいた。ロータリーの景色が正視出来ない。
「やはり…あの方が僕にはよく解りません…」
他の生徒達は無邪気に喝采を上げていた。
コンスタンは腕組みをして困惑していた。
「この演出はちょっとやり過ぎではないかしら…芸術的とは言えませんわ」
「行けー!王子様!!」「魔女を倒せー!」「お姫様を救えー!」
笑っていた。観客の殆どは笑っていた。叫ぶ者も黙って見る者も。
カトラスブルグの街がこんなにも多くの笑顔に包まれた日が他にあっただろうか。
「何たる事だ!何たる事だ!」
金管楽団の指揮者はそう叫びながら懸命に指揮棒を振っていた。彼の楽団がこんなに大きな、調和の取れた、迫力のある演奏をする事が出来たのは初めてだった。そして多分二度と出来ない。皆何かに取り憑かれたかのように吹いている。叩いている。こんなのは二度と出来ない。
「やめるんだ!俺はこの状況を早く終わらせたい!手加減出来んぞ!」
フルーレを真っ直ぐに向けて来るジョゼに、モンティエは叫ぶ。とは言え身長差は三十センチ以上…こんな小さな女の子相手に、どんな剣を奮えと言うのか。出来れば身長二メートルの大男などであって欲しかった。
しかし。ジョゼの決して鈍くない、むしろ相当に速いフルーレの突撃をサーベルで払ってみると。
「なっ!?」
フルーレとサーベルが接触した場所から火花が散り…モンティエの全身を電気ショックが襲う。
「ほらほら!何が手加減でしたの!?」
さらにジョゼの剣の手並みは少女としては全国大会レベルの腕だった。モンティエの腕は青年として全国大会レベルなので、それでも力量としてはモンティエの方が大きく上だったが、この電気ショックのハンデは小さくない。
アーチのある山車の上で展開される魔女と王子の一騎打ちに、嫌が上にも観衆のボルテージは上がる。しかも意外にも体格のいい王子が、小柄な魔女に押されているのだ。
カトラスブルグも他の都市同様、数百年前に魔女狩りが流行したという負の歴史を抱えている。
「魔女を倒せー!!」「魔女に負けるなー!!王子ー!!」
「頑張ってー!!魔女を倒してー!!」
殆どの観客は半笑いで応援しているのだが、一部には本気でそう叫んでいる者も混じっているようだった。
「くっ…もう…よせッ…!」
「うっ…この…えいっ!」
モンティエとジョゼの一騎打ちは続いていた。モンティエは気づいた。電気ショックに耐えるのは辛いが、この力は立て続けには使えないらしいと。何度も続けて剣を交えると、だんだん衝撃が小さくなって行くのだ。
「これで…終わりだ!」
モンティエは一際大きく踏み込むと、ジョゼの手首を掴み、フルーレを奪い取る。このハンデも厳しかった。観衆の前で少女をサーベルで傷つけたら、実質モンティエの負けだったのだ。
「キャーッ!?放しなさい!!放して!」
モンティエはジョゼを小脇に抱えると、伯爵家の馬車に飛び移り、そのキャビンの扉を開け、ジョゼをその中に放り込み、扉を閉め、すぐにアーチ山車の方に戻る。
「…」
先程からロータリー周囲の喝采が、野次が、口笛が、ますます大きくなっているような気がするが、モンティエはそれが聞こえない事にする。
そしてどうやらこの状況では、自分がエレーヌに何か言っても、エレーヌが自分に何か言っても聞こえないようだ。とりあえず彼はサーベルとフルーレを山車の上に置く。
モンティエは風船に繋がるロープを引こうとする…引けるには引けるが、自分も浮かび上がりそうになる。これでも体重が足りないというのか。
背後でジョゼが馬車の扉を叩く音がする…また出て来られて妨害されると面倒だ。
「くっ…屈辱…」
モンティエはそう呟き、腕だけでロープに登りだす。モンティエの足が山車から離れ、ますます喝采が大きくなる。
モンティエとエレーヌの体重の合計は奇跡的に風船の浮力とほぼ釣りあっているらしい。馬車が走っているので風船の高度はぐっと下がって来る…モンティエの足が地面に着きそうになる。
「むうっ…」
モンティエは必死に足を空転させて馬車の走るスピードに合わせ、地面を蹴る。浮力が勝ち風船が再び浮かび上がる。
その様が、見た目が面白かったらしく、近くの駅馬車から爆笑が起こる。
「屈辱…耐えるしか…」
モンティエは屈辱に顔を赤らめつつ、必死で風船の先へ進む。
「きゃあああああああ!何をそこまで接近してますの!!」
ジョゼが舞台に戻ってしまったらしい。悲鳴を上げてアーチ山車の方に戻ろうとしている。
「お嬢様を殿方の物にはさせませんわ!!お嬢様!!今助けて差し上げますわ!」
何をするか解らないジョゼが近づいて来る。モンティエは必死に腕で綱を渡る。しかし風船の高度がまた下がって来て…モンティエはまた足を空転させながら地面をける。また爆笑が起きる。今度は期待して見ていたのだろう、笑い声がさっきより大きくなっていた。
「エレーヌ!大丈夫か!!」
「大尉!!大尉!!」
「そのベルトは外れるか!」
「は…はい!!」
エレーヌは慌しくベルトを外そうとする。風船はまた浮かび、今度は急速に沈んで来る…この落下スピードは危険だ…
「エレーヌ!」「大尉ー!!」
モンティエが椅子のところまで辿りつくのと、風船が最大まで落下するのがほぼ同時になった。
「このッ…!!」
モンティエは再び強く地面を蹴った。今度は二人を乗せた風船が、一際高く。カトラスブルグのロータリー交差点の夜空に舞い上がる…
黄色い悲鳴が、爆発的な拍手喝采が沸き起こる。顔を真っ赤にして吹きまくる金管楽団が見える。ロータリーを回る馬車が、山車が、駅馬車が辻馬車が消防馬車が警邏自動車が…現代に蘇ってしまった地獄絵図が…恐怖のメリーゴーランドが。およそ四階の高さまで舞い上がってしまった二人から…はっきり見えた。
次の落下は大変危険だ。
「エレーヌ!しっかり捕まれッ!」
「はいッ!!」
エレーヌはお姫様抱っこのようにモンティエの上半身にしがみつく。モンティエは素早くロープを手繰って調整する。そして二人は…
「ぐわっ!?」「だ、大丈夫ですの!?」
ライオンの上に、エレーヌを抱えたモンティエは背中から落ちた。ライオンはサリエルが竹で作った骨組みにジョゼの鉄線で補強されており、落下のダメージは決して少なくなかったが、とにかくこれで二人は魔人から解放された。
「きゃあああああああ!!有り得ませんわ!!エレーヌ様を!!エレーヌ様を放しなさい!!殿方にそんな風に抱っこされるエレーヌ様なんて有り得ませんわ!!」
電気フルーレを取り戻したジョゼが象の山車まで迫っていた。
観衆の狂気はますます加速し、拍手では足りないとばかりにそこらじゅうの物を叩き始めた。どこかで窓の割れる音もする。
とにかく一旦エレーヌを降ろそう、モンティエはそうしようとしたのだが。
「きゃっ!?」「なっ…!」
エレーヌのシートベルトははずれきっていなかった。一本外し忘れていたのだ。魔人が再び、エレーヌを空中へさらおうと、その魔の手を伸ばす…
その時だった。勝手知ったるモンティエの愛馬は、主人の危機を今なら救えると感じ取ったか。空馬のまま、ライオンの山車の横へ併走して来た。
「ええい!!」
モンティエは空中にさらわれそうなエレーヌをしっかりと抱え、山車から愛馬へと飛び移る。
「待ちなさああああああい!!」
ジョゼのフルーレが迫る。しかしモンティエがそこを離れる方が一瞬早かった。
観客の中には勘弁してくれと叫ぶ者も出始めた。
泣き笑いで絶叫する観客に囲まれながら、モンティエとエレーヌは馬上でこの地獄のメリーゴーランドの中を回っていた。
二人共これ以上無い程に真っ赤な顔をしているのだが、エレーヌはモンティエに抱きついた腕を離せなかった。一本残っているシートベルトがエレーヌについたままなのだ。腕を離せばまた魔人にさらわれるし、今度はシートベルト一本で宙吊りにされてしまう。
モンティエとしても一刻も早くこの場から逃げだしたいのだが、エレーヌのシートベルトは魔人風船に繋がっていて、魔人風船はアーチ山車に繋がっている。このままでは逃げられない。
ベルトを切りたいが、サーベルは山車の上に置いて来てしまった。
山車の上に…
「…サリエル!?」
「え…ええっ!?」
二人は見た。アーチ山車の上にいつの間にかサリエルが居る。正確にはサリエル扮するオーバン・オーブリーが居るのだ。
「リシャール様!お嬢様を!お嬢様を御願いします!」
「何してるのよ!!やめなさい!!ピエロの分際でーっ!!」
サリエルは必死でアーチに結ばれた魔人のロープを解こうとしていた。しかしなかなか捗らないらしい。
ジョゼは悲鳴を上げながら象の山車へ、そしてアーチ山車へと戻って行く。
「解けてっ…解けッ…」
「やめなさああああい!!」
今度はジョゼが戻る方が先になった。ジョゼはサリエルの背中に電気フルーレでの斬撃を浴びせる。フルーレなので切れはしないが、
「ぎゃあああっ!!」
程好く貯まっていた高圧電流はサリエルの身体を駆け抜ける。しかし。
「解けぇぇぇぇ!!」
「放しなさいッ!放せッ!!」
ジョゼは立て続けに斬撃を浴びせるがサリエルは離れない。そしてついに。サリエルはロープを解く事は出来なかったが、ついにそのアーチの骨組みの十ミリの鉄線を素手でねじり切ってしまった…直後、サリエルはアーチ山車から滑り落ちた。
山車から開放された魔人が空に浮かぶ。
エレーヌの問題は解決していない。むしろ今モンティエから腕を放したら上空何百メートルまで連れて行かれるか解らなくなった。
エレーヌは自分がどういう状態になったのかを、モンティエに目で伝える。
真っ赤から真っ青に変わったエレーヌの顔を見て、全てを察したモンティエも青ざめる。
「…逃げていいな?」
「…御願いしますわ」
間違ってもエレーヌを上空にやる事がないように、モンティエもしっかりとエレーヌを抱きしめながら馬を駆る。エレーヌは既に両腕をしっかりとモンティエの背中に回している。
その光景は、他人の目からはどのように映るものか。それが解らぬ二人ではなかった。
「万歳!万歳!」「道を!!道を開けてやれ!!」「二人に道を開けろォォ!!」
それ自体は好都合な叫び声を。周りの辻馬車の御者や乗客が挙げた。
「こんちくしょうめ!!おめでとう!!」「おめでとう若者よ!!」
「結婚式だろ!?今の結婚式だよな??なあ!!」「万歳!万歳!」
「最高に素敵よー!!おめでとうー!!」「素敵ィィい!!!」
駅馬車から、消防馬車から、辻馬車から浴びせられる、祝福の声、声、声。
「幸せな事に巻き込みやがって!次にやったら逮捕だぞ!おめでとう!」
警邏のジョークには離婚するなよという意味も含まれていた。
ロータリーの外はさらに酷かった。幾重にも取り囲む群衆が、この幸せな恋人同士にあやかろうと亡者のように無数の手を伸ばして来る。
勿論一人一人説明して回る事など不可能。発狂するか無念無想でいるか選ぶしかない二人は、誰かにただ一本ベルトを外してもらえばいいんだという事を思い出す事が出来なかった。
そしてその時間が貰えなかった。
「きゃあああああああ!魔女が追って来るわ!!」
「逃げるんだ!君達!」
「道を開けろー!!」
観客の悪乗りは続いていた。
「エレーヌ様ぁぁぁ!エレーヌ様ぁぁぁ!エレーヌ様を返しなさい!!エレーヌ様は殿方の物になどなってはいけないのですわ!!」
ジョゼが馬車を飛ばして迫って来る。観客も他の馬車達も、わざわざジョゼの為に道を空けたらしい。
最早モンティエもエレーヌも、赤いを通り越し青い顔をしていた。二人はしっかりと抱き合ったまま、空飛ぶ魔人風船を引きずり伯爵屋敷の方向へ馬で逃げて行く。
カトラスブルグのロータリー交差点は万雷の拍手と歓声に包まれていた。それは、最後まで素晴らしい演奏を聴かせてくれた市民金管楽団にも、惜しみなく向けられていた。
「あひゃっ!あひゃは、ひゃひゃひゃは、うひ、うひゃ、あひゃひゃひゃひゃ!」
クリスティーナはロータリーから少し離れた道路に止めた自動車の運転席で、もがき苦しんでいた。もう公爵令嬢も伯爵夫人もへったくれもない。おかしいのだから笑うしかない。笑うしか。




