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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第1章:捨て駒の戦場

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第1話 無能な俺

俺は仲間を見捨てた。

助ければ全員死ぬからだ。

——この世界では、それが“正しい”。


煙の中を、這うように進む。

息を殺す。音を立てない。


(あと少し——)


焼けた匂い。血の匂い。

視界は悪いが——十分だ。


(このまま抜ける)


その時——


「……いたぞ」


低い声。空気が凍る。


(まずい)


一人の兵が、呼吸を乱している。

肩が上下し、抑えきれていない。


目が合う。


(……だめだ)


このままじゃ——音が出る。


一瞬だけ迷う。


(助けるか?)


だが——


(無理だ)


助ければ、全員死ぬ。


口だけ動かす。


(——逃げろ)


兵の目が揺れ、理解する。


次の瞬間——走った。


「こっちだ!!」


敵が追う。足音が遠ざかる。


静寂。


誰も動かない。


(……)


胸の奥に、わずかな引っかかり。


だが——


「……行くぞ」


声は静かだった。


誰も何も言わない。ただ進む。


(これでいい)

(生きるためだ)


それでも——

ほんのわずかに、何かが残った。



——少し前。


俺は何度も「すみません」と言って生きてきた。

頭を下げるたびに、笑い声が聞こえた。


それが、三十八歳になった俺——

山田の口癖だ。


学生時代はいじめられた。

唯一信じていた親友にも、笑いながら裏切られた。


社会に出ても同じだった。

職を転々とし、気づけば何も残っていない。


バイト先では全員年下。

——なのに、一番使えない。


誰にも期待されず、ただそこにいるだけの人間。


「……なんでこんな人生なんだろうな」


そんな言葉を、何度も飲み込んできた。


ある日の帰り道。


「山田さん、今度飲み会やるんですけど来ます?」


後輩の軽い誘いに、少し迷って——頷いた。


当日。笑い声。軽い会話。

一見、普通の飲み会。


だが——


(……ああ)


すぐに分かった。


——俺は“いじられ役”だ。


視線。間。言葉の選び方。


(こういう空気、何度も見てきた)


「山田さんって、苦労してそうですよね〜」

「その歳でフリーターって逆にすごいですよね」


笑いが起きる。


「はは……そうかもね」


また、笑って流す。


会計の時だった。


「山田さん、最年長なんでお願いします」


(……やっぱりか)


「悪い、そんな余裕ない」


「え〜、マジですか?」


笑いながら、少しずつ空気が冷える。


(ここで断れば、空気が壊れる)


一瞬だけ迷って——


「……足りない分は頼む」


結局、頭を下げた。


店を出て、一人になる。


「……疲れた」


(分かるのに——)

(何も変えられない)


その時だった。


——占い。


古びた看板が目に入る。


普段なら入らない。だが、その日は違った。


「……占ってもらえますか」


中は薄暗かった。

フードを被った占い師が一人。


『あなた、“人の顔色を読みすぎて壊れた人”ですね』


心臓が跳ねる。


『でも、それは欠点ではありません』

『ただ——使い方を知らなかっただけ』


差し出される水晶。


『手をかざしてください』


半信半疑で手を伸ばす。


その瞬間——光が弾けた。


「なっ——!?」


『これよりあなたは、別の世界へ行きます』

『どう使うかは——あなた次第』


視界が歪む。


(待て、これ——)


意識が落ちる。


最後に聞こえたのは——


『——今度は、うまく使いなさい』



気がつくと——土の匂いがした。


「……どこだ、ここ」


見知らぬ景色。粗末な服。


「おい! そこの奴!」


武装した男たち。血と鉄の匂い。


(……戦場?)


「怪しいな。敵の間者かもしれん」


「違っ——」


腕を掴まれる。


「弁解は無用だ。斬れ」


(は? ちょっと待て——)


刀が抜かれる。


その時——


「待て」


低い声。


一人の武士が前に出る。


鋭い目。荒い口調。


だが——


(……違う)


(息が乱れてない)


周りの兵は肩で息をしている。

なのに、この男だけ整っている。


視線が鎧へ向く。


(……綺麗すぎる)


血も泥も、ほとんど付いていない。


(戦ってない)


思考が繋がる。


(こいつ……逃げてたのか)


(手柄が必要だ。だから俺を“間者”にする)


理解した。


(ああ……まただ)

(こういう“取り繕った顔”)


口が動く。


「……おかしいです」


「何だ?」


「あなたの鎧、この戦場にしては綺麗すぎる」


空気が止まる。


「まさか——戦っていないんじゃないですか?」


ざわめき。


(当たりだ)


「本当に戦っていたなら、その状態でここに立っているのは不自然だ」


周囲の視線が変わる。


「違う! こいつが——」


「焦っているのは、あなたの方だ」


静かに言い切る。


「功を立てられず、このままではまずい。だから俺を利用しようとした」


沈黙。


「……刀を収めろ」


重い声。


格の違う武将が立っていた。


「面白いな、お前」


喉が鳴る。


「どこで、それを身につけた?」


答えられない。


ただ——人の顔色を見て、生きてきただけだ。


そして理解する。


この力は——


人に好かれるためのものじゃない。


“見抜いて、選ぶためのもの”だ。


誰を生かして、誰を切り捨てるか。


その全てを——俺が選ぶ。


(次は——誰を選ぶ)


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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続きも毎日更新していきます。

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