第70話 養老ダンジョン新人教導任務
飯岡ダンジョンでオークまで突破した2人を連れて、稲守、笹山と高須の3人は養老ダンジョンに来ていた。
調査員はまず到着すると、入口近くにある受付で持っている端末を提示する事で、敷地内に入ることができる。
敷地内には整備された宿泊施設に、調査員がダンジョン内で取得したものを一時的に保管、輸送するテント、温泉に武器や銃の手入れや弾薬の補充する場所まで完備されている。
「さて、受付も済んだしまずはチェックインと言いたいところだが、とりあえず今日からの予定を説明するぞ」
「「はい」」
「まず宿泊施設の受付でチェックイン、荷物を降ろして整理したら整備用テントで武器と弾薬の手配、輸送は夜になるらしいからダンジョンは明日の朝からになる。食事は宿泊施設で取れるから好きな時間にとるといい。あとは…そうだな。俺は裏手の訓練場か自室にいるから用があるなら呼んでくれ」
「「わかりました!」」
「質問は…なさそうだな。では解散」
説明が終わり、予定通り宿泊施設にチェックインして、武器と弾薬の手配をして、それぞれが自室に戻る。
「さて、どうすっかなぁ明日から…」
予定では加賀から彼女らの訓練課程や、成長度合い、使ってる銃等の情報は貰っているが実際に見てみないとわからない。
(やはり養老の5階層まで進んでスケルトンと戦ってもらうか…?)
2人にはまだ、死に対する恐怖とそれを克服する意思の強さが足りないと感じた。
オークはまだ強い銃があれば倒せるが、そこから先はそれでは足らない。
(最悪の場合は助けに入れば、追い出してくれるからまだマシか)
新養老ダンジョンの5階層は、基本タイマンでしか戦えず、二人、または後から一人入った瞬間に地面に穴が空き、1階層の入口に戻される。
理由は不明である。
(考えていてもしょうがないし、身体でも動かすか)
自室から出て、裏手にある訓練場へと向かう。
自衛隊も使う施設なだけあって、訓練施設も充実している。
射撃訓練場に、障害物走レーン、サンドバッグのある筋トレ施設等様々だ。
稲守が向かったのは魔法練習用のただ的があるだけの訓練エリアで、的もただの丸太と簡素だ。
理由は魔法によって燃えても良い場所なのと、いちいち的を作っているとコストがかさむため、そこら中に生えている木を自分で切って加工する必要があるからだ。
近場にはチェーンソーや、申請すれば自衛隊の重機部隊がバンドソーと呼ばれる丸太を切断する機械まで運んでくれるのだ。
「お、丸太が積まれてる、誰か来たんだな」
自衛隊に依頼されて半年に数回、運転手が居ないという理由で、自分も使う丸太でもあるので重機を動かして丸太を作っていたのだが、ようやく見つかったようだ。
手ごろな大きさの丸太を身体強化を使って訓練エリアまで移動させ、距離を取って魔法を行使する。
(教えるなら土の槍、光弾、魔弾、風の刃と言った所か)
自爆する可能性のある魔法や、風爆の様に自爆前提の魔法を教えるのは気が引ける。
数発程丸太を攻撃した結果、土の槍が抉り、魔弾と光弾で風穴を造り、風の刃で上下半分に分断される。
「これじゃ薪にすらならんな…砕いて火口にでもするか・・」
端材置き場に丸太だった木材を入れ、新しい丸太を再び的の部分にセットする。
「んー…」
稲守としては今使える魔法に不満は無く、強いて言うなら風爆のような魔法によって強制的に自分の位置を変える魔法が必要なぐらいだ。
「風爆なー…便利だけど痛いんだよなぁあれ」
短文な為、非常時には使いやすく、何度も助けられた魔法ではあるが威力が高いために扱いづらい。
(安全で、移動にも使えような…)
未成年の頃にゲームや漫画を触った程度の稲守には難しい。
ふと、端末を開き、昔とったメモを開いてみる事にした。
以前自衛隊の隊員達と入った時に、刈谷研究所の多田が持ってきた作家が作ったという詠唱文のメモだ。
(えーと移動系、移動系)
メモによると、移動系魔法にはいくつか種類があるようだ。
稲守が使っている風爆のような、風魔法によって吹き飛ばすもの、空中に足場を作るもの、影に入り影の中を移動するものなど、それこそ漫画やアニメに出てくるようなものまで。
(空中…移動…空中で移動か)
グリフォンのような、空を飛ぶ相手はもちろんの事、鳥型の奇襲タイプや、大型犬程の大きさを誇る蜂型のモンスターなどいるため、空中戦は今後必須ともいえる。
飛ぶよりもまずは、空中での移動制御が必要で、高く跳躍するのはいいが毎回風爆で衝撃を食らうのは簡便したい。
(風爆もあるし落下しても大丈夫だろ)
イメージは、風魔法で空中にいる自身を風爆の爆発力を推進剤として使い、空中制動を可能にする感じだ。
身体強化魔法を行使し、跳躍しつつ魔法を詠唱する。
「風、魔、凝、爆、導、圧、放、抜、衝、風制爆!」
落下する直前に手の平を下に向けて魔法を行使、ドンッと大きな音と共に、爆発によって上昇する稲守。
(やばい!飛び過ぎだ!)
跳躍した高さは5m程に対し、風制爆によってさらに5mの高さを飛ぶ稲守。
地面に着地する直前、風爆によって衝撃を殺す。
身体強化によって怪我等はないが、魔法による衝撃が少々辛い程度。
「けほっ、ごほっ」
土煙にむせながら、とりあえずの成功を喜ぶ稲守。
次はこれの短文化が必要だ。
威力の増減、規模の大小など、後は単純に両手で使うか脚で使うようにも変更ができるだろう。
「これ攻撃に使えないか?」
立った状態で魔法を行使、ボンッと大きな音と共に、手のひらから爆風が放たれ、落ち葉が舞う。
(掌底爆破の方が威力あるし、風刃の方が強い。けど打撃と一緒ならそこそこ)
そのまま魔法の調整や威力の調整を続け、短文化に成功した。
「拡、風制爆改)
舞った落ち葉につられ空を見上げると、日が落ちてきたのか空が少し暗くなっている事に気づく。
(一旦戻るか…)
作った魔法をメモアプリに打ち込み、宿泊施設のホテルへと向かった。
(詠唱短縮は魔法によってできるできないがあるのは面倒だな)
この魔法は拡の1文字を追加しただけで行使できたが、風刃ではできず魔力を消費するだけだった。
(ってもうこんな時間か夕飯早く済ませないと混むからな…)
宿泊所では猟師の協力の元、様々なジビエが楽しめる。
通常より高く買い取るという事もあって、常駐して生活している猟師さえいて、常にではないが、新鮮なキョン肉が楽しめるとあってか、夕飯だけを利用する人もいる。
尚猟師自体は熊や狼も出る為その備えでもある。
自室に一度戻り、シャワーを浴びてから食堂へ向かうと、まだ時間が早いからか人はまばらで、屋外の席は人っ子一人利用者はいないようだ。
(懐かしいな、そういえば外で食事してる時に加賀さんが来たんだっけか)
食券を買い、受付に渡してお茶を持って屋外スペースへと出て席に座る。
注文したのはキョンのきじ焼。きじ焼といえば鳥というイメージが強いため、余り人気ではないが一度キョンの肉を蒸してから焼いており赤身なのにやわらかく、稲守のお気に入りだがメニューに並ぶのは稀だ。
外を眺めながら、受付に貰ったアラームが鳴るのを待っていると、屋外スペースへと出る扉が開き、誰かが入って来た




