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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第二章 笹山楓と高須芽愛里

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66話 稲守任三郎と新人教導任務③

「戻ったよ。ちなみにここのオークは色んな個体がいるから同じ事をするとは限らな…」


「「稲守さん!」」


「おおう、なんだい?」


若い女の子に迫られるなんてのは今までなかった事で、少し緊張というか、引いてしまう。


「聞きたい事が山ほどあります!」


「だから一度戻りましょう!ほら早く!」


「え?あ、うん、じゃあ戻ろっか」


二人に腕をひっぱられながらダンジョンを出て、宿泊施設に向かった3人は、休憩等で自室には戻らず食堂へ直行、長い時間話す為なのか、二人はお菓子類等を多めに買って稲守を席に座らせた。


飲み物を飲んだり、お菓子を食べて少し落ち着いた頃、2人から質問が飛んできた。


「稲守さん、結局ダンジョンって何をすればいいんです?」


何をすべきか、飯岡ダンジョンでも聞かれた事だ。


「自分が気になる事や気になるものを調べて報告かな。例えばモンスターを倒す。言葉にすれば簡単だ。でもそれらを噛み砕いていくとな?モンスターはどういう見た目だ?身長は?力は?武器はあるのかとか、それを全部記録していくとかね。」


2人は端末に稲守の返事を記録していく。


次は戦闘の時に何を考えているかだった。

これは特に笹山楓が気になっていたようで、魔法も気になったようだ。


「考えている事か…相手が何をしてくるかの想定と自分の出来る事のすり合わせかな」


「擦り合わせ、ですか?」


「あぁ、例えば、君たちは現状身体強化魔法、部分強化という魔法が使える。そして銃があるけど、銃が効かない相手なら?」


「どうする…」


「うちは一回逃げる」


「いいね、笹山さん正解だ。全力で逃げる。これしかない。ただし、逃げられない場合は自分の中にある手札でどうにかするか、その場で手札を増やすしかない」


「魔法ですね」


「そうだ。魔法はまだまだ発展途上だからね。スキルなんてのもあるけど未だに条件はわかっていない」


「稲守さんはどっちも使えるんですか?」


「んー…まぁ、君たちならいいか。使えるは使える。何かは言わないけどね。手札は隠しておくもんだし」


指を立て、口元に沿えながら言う。


「魔法も別にすでにある魔法を使わないといけないわけじゃない。自分で作れるものだ」


「それなんですけど、身体強化魔法の詠唱が長いので、どうにかって考えたのですが…発動はしないし疲れるわで散々でした」


「身体強化魔法は今の詠唱文は負荷はあるけど、効果は絶大なんだ。実際に簡易版が作られたけど、効果はほぼ意味がない、切り傷が少し早く治るとか、火傷がしにくいとか、そういった方向性で強化というものではなかったかな。」


「うちはさっき使ってた爆発するのが気になる」


恐らく掌底爆破の事だろうが。

正直あの技は使うべきか悩んだのが、一撃の威力がある魔法は持っておいたほうが良いという意味で見せたのだが、案の定だったようだ。


「あれはおいそれと教えられるものじゃないよ。ミスした時点で隙を晒すのと同じだし、冒険したいというのなら、慣れてから教えるよ」


掌底爆破自体は威力も高いのだが、相手の懐に飛び込まないといけないし、稲守のように武道をたしなみ、間合いというものをある程度把握している人間でないと、危険すぎるのだ。


その後はお菓子や飲み物が無くなるまで質問攻めにあうが、特に加賀との関係に力が入っていたようだが、別に恋仲ってわけでもないので、軽くあしらってその日は解散となった。


次の日、今日もダンジョンに潜り、足早に岩山エリアへと移動、身体強化魔法の練習をしながら、岩山エリアでの採掘や、サハギンの池でイワシを回収して帰る毎日が、10日程続いた。


その頃には身体強化魔法を発動してからの動き出しも早くなり、オークとの戦いも問題ないだろうという判断を下した。

身体強化魔法は何日もかけて身体と脳に使用感や、どの程度の時間強化されるのを把握する必要があったためこんな時間がかかってしまったのだが。


ちょうどオークに挑戦するという日の朝、偶然非番だった加賀も嗅ぎつけたのか、連絡が入りついていくと言い出したので、断る理由も無く承諾、調査に同行している。


「さて2人とも、どっちがいくかはまぁ、置いておいて、これからオークと戦ってもらう。いいかい?何度も言うけど、侮らず、冷静に、焦ったり、気圧されたら死ぬ。恨みのない相手に殺意なんて持てないだろ?冷静に動け。撃てば倒せるんだから」


「「はい!!」」


「懐かしいですね…」


加賀は初めて挑戦した時の事を思い出していた。

手を握ってもらって、震えがなくなった事を思い出し、少し頬が赤くなる。


「楓ちゃん!今!」


「ね!やっぱり!」


二人はこそこそと話すが、稲守と加賀には聞こえない。


「さて、どっちから先に行くんだい?オークを倒したらインターバルがあるからその間結構暇だからね。その間は訓練か養老ダンジョンに行って他のダンジョンも経験してもらう予定ではいるよ」


「なら私!」


「うち!」


ほぼ同時に手を上げる二人。

という事はお決まりのあれである。


「「じゃんけん!!」」


「「ポン!」」


笹山はチョキ、高須はグー。


「やったっ!」


「負けたか―」


「なら高須さんが先だね。準備できたら先へ進んでくれ。何かあったら端末の右下にある緊急ボタンを押せば、俺たちに通知が行くようになってる」


「わかりました!」


~高須side~


じゃんけんに勝利し、オークに向けて準備を始める。

銃の手入れ、弾倉の確認、防具や服のチェックを入念に進めながら、先ほどの稲守の戦いを脳内で反芻しながらシミュレーションも行っていく。

越生で戦ったオークより素早く、銃に対しての戦い方も熟知している相手だ。

しかも毎回同じオークとは限らないと聞く。


今回は試験の時と違い、念の為に研究所の閃光弾に専用のサングラスと装備は充実している。準備は万端だが、少しの緊張と恐怖が、高須の手を震えさせる。


(大丈夫、散々訓練もしたしいける)


気力で震えを無理やり抑え込み、岩山エリアを出てオークエリアへ続く道を進む。

初めて一人で通る道、暗く、ヘッドライトの灯りは数メートルを照らす程度で、歩いても歩いても先は見えない。


僅か数分だが、来た時よりも長く感じ、高須の心に恐怖の色が出始めた頃、視界にオークエリアの入口が見え始めた。篝火が妖しく入口を照らしている。


(あそこかな)


銃を構え、セーフティを解除し、臨戦態勢へと心と身体を移行させる。


身体強化魔法は持続時間がまだ短い為、短期決戦をするか、脚部か腕部の部分強化の3択だ。


(腕部強化での精密射撃、それも連射しかない)


入口近くまで来ると、反対側にいるオークが見える。


オークはこちらをじっと見つめており、高須が銃を持っていると確認するやいなや、重心を変え、身体を半身ズラし、急所は腕で隠している。


高須は腕部時限身体強化改、つまり40秒から120秒に詠唱文を変えたものを行使して、エリアに入る。


足を踏み入れた瞬間、オークは走り出す。

左右に動きつつ、狙いを分散させるように、頭部や胴体に当たらないように姿勢を低くしている。まるでボクサーのような姿だ。


高須はすかさず走るオークに狙いを定めるが、左右にも動きを加えながら早く動くオークに、無駄玉は駄目だと判断、部分強化を腕部から通常の身体強化魔法へと切替える。


みゃくけつりゅうじゅう、…」


詠唱を黙ってみているオークではない。

高須から魔法の強化が消えたのを感じ取り、距離を詰めるため、フェイントをかけるのをやめ真っすぐに突進をしかける。


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