表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/49

相手をびびらす

というわけで、ようやく準備が整ったのです。

感想など聞かせてね!

では、どうぞ!


※サブタイトルが間違ってた。ごめんね。一個前のサブタイトルでした。内容は大丈夫。サブタイトルのみ修正しました。

 ――もうすぐ始まるのか……!?

 気が付けば数十万の軍が対峙していた。

 僕は唾を飲んだ……。いや、歯車だらけの身体には、唾を飲み込む為の【(ノド)】が無い。だから――。

 ……の、飲んだ気になった。ついでに手足を見つめてみると、記憶にない(いびつ)な鉄棒のようだった。

 ――はぁ……。嫌だ。

 口もないのに、溜め息が出た。

 僕の身体は、見事に喪失武器化してしまって、人間の時の面影がない。

 それなのにしっかり緊張もするし、暇さえあればネガティブな感情が噴き出してくる。一度は覚悟を決めたはずなのに、精神までは武器のように尖らないようだ。

 並んで立っているオハナさんは、じっとしていると部品の塊のようにも見えた。お互い似た姿をしているようだが、歯車の位置だったり色味だったりが僅かに違うようだ。

 ――はぁぁ……。

 二回目の溜め息は、オハナさんと同調(シンクロ)した。


「あれ? なんだかオハナさん、そわそわしてませんか?」


 今、オハナさんと同じタイミングで溜め息をした。その時に繋がった。

 巨人になって同化していた時と同じように、お互いの感覚が共有されてしまうらしい。今回は身体が離れているせいか、四六時中という訳じゃなさそうだけど……。


「え、私? ああいや、皆と一緒よ。いつ帰れるのかなぁって……。その、娘が気になってね……。姉がすぐ隣に住んでいるから、大丈夫だとは思うんだけど、私の事心配してるかなぁと思ってね」

「娘さんはおいくつなんですか?」

「六歳よ。小学一年生」


 オハナさんは若く見えるけど、そんなに大きな子供がいるんだ。


「一年生か……それは心配だなぁ……。娘さんもオハナさんに会いたいでしょう。でも、きっと大丈夫ですよ。お姉さんの所で、元気に暮らしてると思います。だから、とにかく今は、目の前の厄介ごとを片付けて、無事に戻ることを最優先に考えましょう」


 何の根拠も無い慰めだが、他に言葉が浮かばない。


「だよね。落ち込んでばかりいられないか……、皆もおんなじ状況だもんね……。でも、私の場合は仕事もヤバいかなぁ。もうクビになってるかもね……。はぁ……嫌んなる」


 オハナさんの首がカクンと曲がって地面を向いた。


「ああ……そうでしたね。無断欠勤が続くとヤバいんでしたっけ?」

「そうなのよ。嫌味な奴がいてね。……誰だっけボーイの……あれ?」

「それ野崎さんじゃないですか?」

「野崎……。野崎だったかなぁ。とにかくそいつが、私をそもそも嫌ってて、事あるごとに邪魔をするのよ。今回も色々言われてるはずだから、店長も怒ってるだろうなぁ」

「元気出してください。無責任な言い方ですけど、この状況では仕方がないですよ」

「そうよね。一区切りするまでは帰れそうにないわね。ごめんね年上がしっかりしないとね」

「いえいえ。全然助かってます」


 そう言って僕は前を向いた。遠くの敵を観察しながら、頭の中ではママの事を考えた。――僕もママに会いたいな。会って無事だと伝えたい。


 遥か前方に土埃が広がっている。敵軍の動きが騒々しくなってきたようだ。

 

「どうやら、先頭にいるのは第十一書記のゲヘナだ。騎士(ナイト)気取りのゲヘナは、正々堂々と中央突破を仕掛けてきそうだな。カティアよ。お前の進言通り、軍を四つに分けたが……はたして、奴らの突撃を受け止めることが出来るだろうか?」


 カティアの戦車に並ぶように進み出て、ダストンは訊いた。ダストンは、氷で作られた騎馬に(じか)(またが)っている。豊富な体毛を持つ雪男(イエティ)だから出来る芸当だろう。


「せやなぁ、戦場の竜騎兵(ドラゴンライダー)は、凄まじい突破力があると聞いてるで。また操縦してんのが可愛い人形ちゃんやから、ビビッて速度が落ちることもないやろ。あんまり戦いたくはない相手やけど、まあ、この第十三書記のカティアに任せなさい! 必ず受け止めるから。その間に、左軍と右軍を前進させて、左右から挟み撃ちさせてや!」

「当然、相手の左軍と右軍も出てくると思うが、それを撃破してからということか?」

「そうや。右には喪失武器(ロストウェポン)に変身済みの六股君、左には先生がおる。私らの特攻隊長や」

「私の雪の軍勢では、少し数が足りないようだが? そんなに簡単に撃破突破し、中央の敵軍を挟み撃ちになど出来るだろうか……」


 ダストンの大きな瞳が薄くなる。カティアの作戦が通用するのかどうか、頭の中で描いているようだ。

 雪の軍勢は、全体でおよそ十五万ほど。左右にそれぞれ四万の兵力を割いた。カティアと僕と、オハナさんが受け持つ中央には六万、後方のダストンがいる本陣に残りの一万。


「数の不利は、私の喪失武器(ロストウェポン)に任しとき、暴れまくったるわ」


 カティアが拳を握りしめると、ダストンは大きな目玉を僕とオハナさんに向けた。僕達二人は、カティアの号令がかかれば、いつでも発進できるように、戦車の鎖を掴んでいた。


「本当にそいつらが、バースの大地を宇宙(そら)へと追いやった喪失武器(ロストウェポン)なのか? 随分と小さいのだな。いや、充分に強いのは身を持って知っているが」


 言いながらダストンは、左肩を擦った。オハナさんに殴られた場所が疼いたようだ。


「伝説では、神々しい巨人の姿だと聞いていたのだがな……」


 ダストンも、バース創世記の一節を知っているようだ。カティアが答える。


「そのバージョンもあるで、破壊力抜群やねんけど、一回使うと暫く使用できへんねん。今回は小さいので我慢して。て、言うても、山ぶち抜くぐらい強いけどな、まあ見てて!」

「なるほど……。そいつらは、契約で縛っているのか?」

「せやで、なんで?」

「流石だな。喪失武器を契約で縛るなど、恐らく私には出来ない」

「いやいや、ダストンちゃんも色々凄いやん。今度、新しい喪失武器見付けたら教えるから、いっぺん試してみて」

「ふっ。次があればな……」


 カティアに悪気はない。だけど、僕達を物扱いして盛り上がる会話を聞いていると、嫌な気分になった。いつか思い知らせてやろう。外套の端をベッドやカーテンに縫い付けて、「誰の仕業や――!」て、言わせてやろう。よし、決めた。

 だが、そんな復讐のシナリオは、すぐに、どうでもよくなってしまう――。

 目が覚めるような音がした。


 見上げると一部に暗雲が立ち込めていて、そこに、汚れたドレスを着せられた着せ替え人形(プリンセスドール)が浮いていた。目玉が取れていて、真っ黒な穴が二つある。ホラー映画に登場する人形のようだ。

 その洋人形の口元が、顔面の半分以上も開く。そして若い女性の声が響き渡るが、その声はとても陰鬱だった。死者からの伝言のように思えた。


【その通りだダストン。次などないぞ。よく分かってるじゃないか。お前達はここで、私の――、第九書記ニーチェの支配下に入るのだ。未来永劫、家畜として飼ってやる。他は全員細切れだぁ! さあ、始めようじゃないか!】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ