それから始まる物語
今回はこの世界の概要説明に触れていく回なります。
それと同時に2人の少女の関係性も段々と明らかに。
短めではありますが、よろしくお願いします!
「そう言えば自己紹介もまだだったわね?遅くなったけどあたしはミル。ミルフィー・エトワール。一応このニアルオーゼでの仕事とも言うべき〔ログ・ハーティスト〕の最上級のオメガ級トップランカーさね!勉強で言えば主席ってとこかしらねぇ」
「元‥ですけど」
とヒメちゃんの補足が入る。
「そうそう、元も元、もう第一線から退いてからはだいぶ経つんだけどね。今じゃその日暮らしのお気楽一般民さね」
「穀潰し、ともいいますけど。昔の栄光じゃお米は炊けないんだから」
「ヒッ、ヒメッ!今そんな事言わないでいいでしょ!」
「大事なことだと思いますけど。今うちは財政難なんです」
「そっ?!それはそれとして後で頼むわ…。これからもっと大事な話するんだからさぁ。大事の前の小事よ」
「ぁ‥逃げた…」
ヒメちゃんがこじんまりとした仕草でガマ口財布のようなものを逆さに振りながら大きなため息を一つ吐いた。
ミルさんは若干引き攣った表情で「・・じゃぁ、続きよ」と言うとまたヒメちゃんをひと撫でする。
「この世界にはデルフィポリスって言う、狩人組合と政府機関の集合組織が中枢を担ってるのさ。そこに属して狩りをして働いている人の事をログハーティストって呼ぶのよ。つまりはあたしも昔はそこに属してたって事。育成カレッジなんかもあるんだけど、それは今は置いといて‥。狩人達ログハーティストは独自にセクトクラブと言う私設チームを作って、互いに競いながらモンスターと闘って暮らしてるって感じさね。勿論、それ以外にも生活に必要な多種多様な仕事や役割はあるわよ。えーっと‥。ここまではいいかしら、クリムくん?」
「ぇっ?!は、はい‥。」
「取り敢えず伝える事は伝えちゃってからご質問は受けようかしら。具体的にはデルフィポリスからクエストを受けてそれを受注して完遂すると見合う報酬が受け取れる仕組みね。セクトクラブのイレブン…仲間同士でこなしたり、腕に自信があるならソロで挑んでる人達もいるけれど。かく言うあたしも今はノラでソロでやってるクチなのさ!例えるなら、一人親方、みたいな感じ?アハハッ」
「親方さん…もっと稼いでください」とヒメちゃんが嘘泣きをした。
「コホンッ。あ、そう言えばセクトクラブには11人以上は集まれない規則になってて、それはどこかのセクトクラブが飛び抜けて大きくなり過ぎるのを防いだり仲間意識を強く持たせるためとかってなってるんだけどさ、まぁそれは特に後者は建前で単にデルフィポリスが管理しやすいようにしてるだけかもね」
そこでミルさんはチラリとヒメちゃんを見やった。
「後、お姫様事だけど。あたしがまだ現役の頃に狩りの最中にとある事情から引き取って一緒に暮らしてるただの町娘さねっ。そしてここは我マイホームッで。さて…大雑把にそんな所だけど、まぁいつまでかは分からないけれど当分はここでクリムくんも一緒に暮らすことになると思うさね!」
「ほえ?!ぁ、え、僕も?!ここで?!」
「なぁーに赤くなってんのさ」
「思春期のボクがイケナイ事考えちゃったかしら?」
「なっ?!なってませんし考えてません!!!」
ミルさんは僕のおでこに人差し指を当てると「ウリウリ~。可愛いのう。よきよき」と言って笑って見せた。その笑顔はとっても可愛いしやっぱりそんなに年上な感じもしない。もしかしたらまだ10代の可能性だってありそうだ。
「ミッミルさん変な事言わないで下さいっ」
≪<ボフッッッ!!!>≫
「クリムさんが困ってるじゃないですか…」
今何が起きたかと言えば美少女が持っていた特大ヌイグルミで美女をぶっ飛ばした。
「クリムさん気にしないで下さいね」
そして何事もなかったかのように少女は真顔でぺこりとお辞儀した。
うーん‥、あ、いや‥、これはむしろ僕は気にしないといけない事案だと思うし、変なこと考えて変な人だと思われて変な所に放り出されでもしないようにしないとだ…。美女の方がその衝撃にどこかへトリップされてるうちに僕は肝に銘じたのだった。
「おいててて…時々思うんだけどさぁ。そのヌイグルミって硬化してるわよね?」
「知りません。続けて下さい」
「あいあい・・・。町娘最強説よね。それでクリムくん何か疑問とかあるかしら?」
疑問、と僕は考えたけど一体何から聞けばいいのか分らない程の情報量だ。こういう時って所謂主人公属性のキャラだったらどうするべきなんだろう、とアホな事を一瞬考えてから、僕も溜め息を一つついた。なかなかにリアルな異世界で、僕の知らない世界。
「正直、何から聞くべきなのかも迷って‥」
「あぁー…。まぁそうよね。でも暫くここで暮らす間に追々…か。ゆっくり、心身ともに落ち着いて。それから始まる物語、って感じさね!」
「はい…」
「そんな訳だからここは自分の家だと思っていいし、これからよろしく頼むさね!クリムくん」
どこか満足げなミルさん。
僕は一瞬躊躇ってから目の前に差し出された掌へと物語のスタートへと手を伸ばして、しっかりと握手をした。
ここまで読んでくれた方どうも有難うございました。
次回はクリムくんのターン、かも?です。




