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楽園のMind★Ark  作者: ヒロ・レント
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2/3

生と孤独と再会

この度も生暖かくご閲読して頂ければ嬉しく思います。


まだまだ物語の導入部分と言えるのですがが主要人物が2名登場して、優しく主人公を癒してくれる…はずです(笑)


よろしくお願いします

 

 本当に会えた。


 少女は想っていた。ただひたすらに。


 彼はきっと私の事は分かりはしないだろう。


 それでも会えた。


 あの世界にはもう2度と戻れないのだとしても…。


 出会えたこと、それだけで私はようやくココに居る意味を持つ事が出来るのだから。


 私の本当の世界が、やっと動き始める。







「異世界…??そっかー。戻れないって??僕はまだ寝てるんだね、うん」

「はい、そうです。って言ってあげたいんですけど、これは現実の世界で、ごめんなさい…‥」

「いや…。君が謝る事じゃないんだけど、なんて言うか‥唐突だ。ハハッ」


 僕は何を笑ってるんだか、まぁどのみち夢オチなんだからいいか…。


「だから、一応この世界にも名前は付いてて…【ニア・ルオーゼ】と言う世界です」

「へぇ…‥名前、ニアルオーゼ。聞いたことないや」

「…異世界ですから」


 うん、まぁごもっとも。


「‥‥…あっ、そう言えば君の名前は??」

 僕は肝心なことを聞いていなかったのだ。

「あっ」

 少女はやや慌てた様子で座っていた椅子から腰を浮かせて、ピンと姿勢を正した。

「私、えっと、ヒメカ、です。ただの、ヒメカ。どこにでも居るヒメカ、です」

 ちょっと場違いに戸惑った感じのその言い方が面白くて僕はプッと笑ってしまった。


 すると彼女もつられてかどうかちょっと微笑んだ。

 その笑みは幾分ぎこちないものだったけど、それを差し引いても凄く可愛くてホッとさせてくれるような印象を誘う。

 僕はこの時になって初めて、そのヒメカと言う少女の容姿をマジマジと観察した。

 なんて言うか‥有体にかなりの美少女だった。


 全体的に柔和な丸みを帯びた童顔。煌々と輝く青玉のような、ぱっちりとした円らな二重の瞳。

 そしてピンクのリボンでポニーテールに結ばれた長い髪の色は銀色がかっていて、キラキラと上質な黒真珠を思わせる。

 更に、その恐らくまだ発展途上でありながらややふっくらとした膨らみや滑らかな体の線を、白皙の肩口を露わにした薄水色のノースリーブワンピースがピタリと包んでいた。


「そっか、ヒメカさん…?さっきは、あの…なんて言うか‥‥ごめんなさい。見苦しいものを…」

「えっ?!あっ…はい。ヒメって呼んでくれていいです。それと大丈夫です。何も見てませんから。それと‥・・・色々疑問とか不安な事とかあると思いますけど、私が、付いてますからそんなに気にしなくても大丈夫です」


 いや、流石に色々気にもするでしょ、それは。

 だけどもその時僕は多分、露骨な程に眼を見開いて、目の前のヒメカと言う少女から視線を逸らせなくなってしまっていた。

 それは場違いにも程があり、いとも容易く体中を走っていく電流のような感覚に酔いしれてしまう。

 単刀直入に、明朗快活に言えば一目惚れをしてしまったのだ。


 ………えっ?!


 こんなちんぷんかんぷんな状況なのに??

 アホか、僕っ!


 と、思わず自分にツッコミを入れつつも…

 あれだ。小鳥が最初に目を開いた時に見た相手に無条件の信頼を寄せるように。もしくはこの奇想天外でいて不可思議な今の立場はフラフラと吊り橋を渡っているような感覚でもあると言えなくもない、かもしれない。

 何故かドキドキがずっと止まらないけど、これはきっと一時的なものだ。

 などと訳の分からないフォローを愛しき自分へと送る。


 まぁ今の僕は思考が正常とは言い難いけれど、それでも一つだけ確かなことがあって、それは理由が分からなくとも彼女の優しい笑顔に既視感にも似たものを感じ取って僕はすっかり囚われてしまっていたと言う事だった。


「いや、そんな風に言ってくれると僕としても良かったけど‥。あ、僕の名前は」

「クリムさん、ですよね。知ってます」


 こちらも名乗らなければと思った矢先。少女は僕より先に僕の名前を答えた。



「って、え?!なんで??」

「クリムさんのパパに聞いたから、です」

「…って言うか、なんで父さんを知ってるの?」

「ここ…異世界なんだよね??」


 って僕は我ながら馬鹿みたいな質問だと思いながら、自嘲気味に少女に訊ねた。


「そうです。クリムさんから見れば異世界です。どこをどう取っても」


 だけども会話の相手は真面目な表情を崩すことなく返事をする。

 まぁ考えようによっては夢の中だって、ある意味では異世界と呼べなくもないかな。

≪僕が作った、僕の為の世界≫  なんだし。


「貴方がニア・ルオーゼに来た時に手紙を一緒に握っていて、そこに書いてあったクリムさんのパパの伝言に従ってそれを見た私たちがここに…運んだんです」


「伝言…?それじゃ……」


 って言うか今〈私たち〉って言った気がするけど、他にこの家に誰か居るのだろうか。この少女一人暮らしって言うのも考えてみれば変だし、ご両親とかかな。そして父さんの伝言ってことはこの世界と僕の元居た知ってる世界とは絶対不可侵と言う訳でもないってことなんだろうか。

 ともすればひょっとして案外簡単に…。

 取り敢えず自分の夢なんだとしても何だとしても、分からなければいけないことは現状ジェンガの山のようにあって、どこから崩して行けばいいかそろそろちゃんと考えなければと思う。

 下手をして全部の成り行きが不都合に瓦解してしまわないように。とは言ってもまだ僕的にもなかなかにテンパってるのも否めない。


 とそこまで考えた時にヒメカと言う少女とは違った声が思考を遮った。


「恐らく君が今考えてた事は無理さね」


 そして部屋のドアが開いて僕より背が高そうな、でもとてもスリムでいて流麗な雰囲気の大人の女性が入ってきた。

 お母さんだろうか?…にしては若そうだからお姉さん?澄み渡る紅玉色のちょっと吊り目の瞳。ツンとまっすぐ尖った鼻筋。薄めながら瑞々しい薄紅の唇。全体的にほっそりとした印象ながらもしっかりと女性的な部位の主張も怠っておらず、一目で美人と言える容姿。

 そして凛として秘めた強さが内から滲み出るようなカッコ良さも感じる。後頭部でクルクルと纏めた深紅の髪。左右の耳元の揉み上げの部分の伸ばした前髪だけは淡い朝焼け色をしていてそれが印象的に映った。


「それにこの異世界と元の君が居た所には、実は通信の手段が全くない・・と言う訳じゃないけれど、でもそれは凄く困難でいて危険も伴うのよ。ごく一部の人間にしか出来ない事でもあるんだけど」

「私、最初に言いました。もう戻れないって」

「あら、流石ヒメさ。最初に一番辛い事実をズバッと突き付けるなんてね」


 僕の背中に少しだけ変な汗が沸いた。

 そう言えばそんな事言ってた気もするけど。

 本当はちゃんと夢だろうという思いと同じくらいにこの現実が本物の形ある確かなものだったらという思いもあった。

 でもそれを認めてしまうと同時に出てくる色んな謎に今度はしっかり向かい合わなくてはならなかったし、とても僕の脳の処理能力では追い付きそうも無い不安もあった。


 やはり今まで生きて来た世界は僕にとって多少なりとも尊いものだったのかもしれない。あるいは…日々不満が消えなくとも住み慣れた生活から離れると言うのが面倒なだけなのか。


 いや、その両方か。


 とにもかくにも、結局どちらにしてもこの先のこの2人の行動を見守るしかないんだけど。


「それよりミルさんっ…。お仕事は?」

 少女が美女の名前を呼んでさも不思議そうに尋ねた。

「あぁさ。うーん…。なに、あれさ。あたしにかかればパパッとね。ヒメの危険を察知して帰って来たって寸法よ」

「・・・・・私、全然危険じゃないですけど?」

 少女は小首を傾げて怪訝そうに眉根を寄せる。

「‥良く分かりました。おサボりですね。ミルさんだし」

 そしてほんのり笑んだ。

「はっ…?!何その〈ミルさんだし〉って言うのは!あたしを誰だと思ってるのさ。って…〈だし〉‥あたしは出汁じゃないわよっ!!」

「そのままの意味ですよ?ミルさんを出汁にしてもナマケ汁にしかならない‥」

「おいっ!!怠けって何よ?!言うに事欠いて酷いんだけど?…ってね、この大変な時に仕事なんてしてられる訳ないじゃないのよ。ったく…」

「やっぱり…。そしてあっさりと逆ギレですか。それに加えて盗み聞きもどこからなんですか??」

「そっ…それはお年頃の男の子自分の部屋に連れ込んで大喜びしてる、同じくお年頃のお姫様をほっとけないでしょ?保護者として」


 口角を上げつつ謎なドヤ顔で胸を張る美女。


「喜んでないです。それに都合良く保護者にぃにゅぷぅみゅ……」

 そこでミルと呼ばれた女性は、突然目にも止まらぬ素早さで可笑しそうにニヤつきながら、手で少女のほっぺたを挟みながら唇に人差し指を押し付けてムニムニとおちょくりだした。プルルンと言う擬音がぴったりな感じでその指はキラキラと輝く薄桃色の少女の唇に埋もれて揺れる。僕は何だか正視に絶えず目を逸らす。

「おや?クリム君、何照れてんのさ?」

 突然美女の矛先が僕に向いて数瞬見つめ合う。余計恥ずかしくなって俯く僕。何だコレ?

「まぁ、こっちのヒメの方がアレだけどねぇ~。ニハハハッ」

 それでも少女怯まなかった。

「ミ゛ルしゃん‥ぢがふし‥。はにゃひへ」

「え?そうなの?」

「違うし違うし。それ以上言ったら今日の晩御飯はオカズぜーんぶシータケにするんだから」

 少女はそこで徐に自分の唇に押し付けられた指を両手で掴むとミシミシと音がしそうな秘めた力で逆方向にサバ折りの状態に持って行きながら何かを全否定した。


「にゃっ?!ま、待ってっ?待ってってさッ?!イテテテテッ!!はい、わぁったからっ!わーかーりーまぁしーた~っヒメッたら!!!外れない‥」

 涙目の美女。

「てっ・・手加減がっなっいのさぁぁあ」

「何ですかそれ??折ります」

 恐ろしい事をあっさりと言いのける少女。


 僕はどうしていいか分からず戸惑いながら暫く静観していたけど、少女が謎の高握力で美女を圧倒してる様子を眺めつつ、これは止めるべきなのかなと思うに至り静止することにした。

「あの…ヒメ、さん?その辺りにしといたほうがいいんじゃ…」

 けど、さっぱり耳に入ってないご様子。良く見たら目が真っ赤のウサギさん状態。これはヤバイ?

 一体目の前で何が起きてるんだ、と思いつつ今度は強めにもう一声掛ける。

「ヒメさーん!!僕、まだ色々と話したい事あるんだけど」

「あ、はい。今この悪魔をやっつけたら…。すぐ終わりますから」

 やっと少女はこちらに気付いてくれた。ギギギギッと油の足りない機械のように首だけをこちらに向けて。

「それから『さん』付けは要りませんから、ヒメって気軽に呼んでくださいね」

「おぉーいっ!!悪魔じゃないしさっ!む・し・ろ、あくまで保護者だからっあたしっ!!」

「………………アホで食い倒れで間男じゃないですか…」

「ヒメ、幾ら何でもそれは酷いっ‥。冤罪さぁ!登場早々デタラメであたしのキャラ崩壊させないでよ!!」

「そうです。崩壊です。この指の末路と同じです」

 少女は静かに言う。

 そして、いつの間にか相手の親指以外の全ての指を強く握り込んで、ジワリジワリと、真綿で首を絞めるかのように関節を逸らしていく。

 取り敢えず本気っぽいのは良く伝わって来たので、ここいらで納めて貰わないとどうにも話も進みそうにない。


 なので更に強くお願いしてみる。


「あのさ、今の僕にはヒメ…ちゃんしか頼りに出来る人が居ないんだ!!!だから、ちょっとだけ冷静になってみて…。君と2人でもっと話がしたいからっ!!」

 ピクッっと悪魔撲滅中の勇者ヒメ様の肩が跳ねた。

 僕は咄嗟に最早凶器化した少女の両手に自分の掌をかぶせる。

「君しか…いないんだ」

「‥私、しかいない…つまり私のそばに居たい…」

「ぇ?」

 僕のセリフは幾分歪められて彼女の耳に届いたようだけど、それでもやっとミルさんと言う女性を脅かした災難は、スッと力を失っていき、少女の輝く瞳はこちらを見た。

 僕は、僕だけの世界の崩壊を救ったんだ、なんて一先ずいきなりバッドストーリーには進まずには済みそうでホッとする。


 しかし、だ。僕とヒメちゃんはガン見で見詰め合っていた。

 両手を互いにヒシと掴んだまま。

 片や半ば完全には覚醒しきってない虚ろな瞳の僕と、片や潤みを帯びた真っ赤に充血した瞳。

「私しか居ない‥。私だけ…」

 何かもう微細なシュチュエーションであったなら何かが起こりそうな予感がしても吝かではない感じだった。

 僕の心の臓がまた勘違いを起こしていつの間にかドキバクしていたってそれはもう許されるんじゃないかと思う程。


 綺麗な姉さんが未だにかなり手の痛みに悶えながらも目の奥だけは爛々と輝かせて僕らを見ていた。

 それに気付いて、僕は慌ててヒメさんの手を放すと態勢を整え直して、綺麗なお姉さんに話しかけた。


「あ‥あの、2人は仲良しなんですね?」


 何その問いかけ、と言うのは置いといて。

「仲良し?それはどっちの2人の事なのかしらね?」

「なっ?!どっちって‥」

 どうやら僕は軽く墓穴を掘った。

「うーん、これぞ正に青春ってやつよねぇ」

「あっ、あの、だから…。ヒメカさんとお姉さんの事です!!」

「ふふふ…。あっそう。まぁね。さっきのを見てそんな風に思うのさね。とは言え、毎日毎日あの子のお陰で退屈しないのは確かなんだけどさ。これからは君の事も含めて楽しくなりそうだわ。もっともっと、ね」

 それってどういう意味なんだろう?こっちはぜんっぜんちっとも楽しくないって状況なんだけど。

「まぁ・・・・・この5年であたしも随分と変わった気もするし、ヒメには謝辞も辞さないけれどさ。…それにしてもさっきのは効いたわ。あの、ただの町娘風情なのに時々見せる怪力にはもうこりごりだわぁ」

 どこかしら感慨深げな様子で、さっきまで摩っていた手を隣にいる少女の頭にポンと置いて撫でながら言う綺麗なお姉さん。何か訳アリなのだろうか?

「シータケもマジで止めて欲しいし。あたし自分でシータケ嫌いな自分を呪うわ。ゴキもオカルトも男だって平気なのにさぁ」

 それに最後の男を嫌いなものの同じカテゴリに入れてるのはどうしてだろう。

「シータケ美味しいのに…。お料理も色々。好き嫌いダメです。キノコ、ノコノコ歩いたりしない~♪でもキノコだって生きてるのっ♪」

 突然何の前触れもなく、少女はポップでキュートなメロディーの童謡っぽい歌を口ずさみながら、いつの間にか部屋のヌイグルミ群の中からキノコの傘に緩過ぎる顔が付いた物を愛おしそうに「可愛いのに…」って呟いてから自分の双丘にムギュッと抱き抱えた。


 お姉さんは、ヤレヤレと言った感じに肩を竦めて僕へとウインクする。

 え?何そのアイコンタクト。全然意味分かりませんが、と言う顔をしてみる僕。

「あら?意味わからない?このうら若き運命の2人の出会いに祝福を、って所かしらね」

 えーっと‥。ちゃんと意思は伝わってた。でもますます意味わかりませんよ、と思ったけど今声には出さないでおく。

「運命じゃないです。埋めますよ?」

 でも少女がちゃんと突っ込んでくれた。

「あぁ、まぁ何よ。せっかくなんだから置かれた状況を楽しまなきゃさぁ。さて、話だいぶ脱線させちゃったし、またお姫様(ヒメ)が暴れだす前に、じゃあそろそろ本題に入ろうかしらね」

「シータケ…」

 綺麗なお姉さんは少女のその一言を聞かなかった事にしたようだった。そして今までのおちゃらけた雰囲気と打って変わって、キリッと真顔でお姉さんは僕の顔を見詰めてきた。


この度も最後まで読んで頂いて有難うございました!!


正直ここから先の投稿ペースは良くて三日に一編程度になるかもしれませんので、その辺りはご容赦頂けるととてもありがたく思います。


それではまた次回お会いできれば‥嬉しです。

宜しくお願いします┏○ペコッ

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