47 南区の換金所
20分ほどで『南区の換金所』に着いた。
ダンディーさんのいた『西区の換金所』よりも、こじんまりとしている建物だった。
そしてドアが開いている。
早朝なのに営業している?
すぐに中に入り、声をかける。
「すみません。おじゃましまーす」
「はーい、いらっしゃい」
カウンターにおねーさんがいた。
なんか洒落たイヤリングをつけた、優しそうなおねーさんだ。
「朝早くすみません。骸骨狩りをしたいのですが、初めてなもので少し教えていただけないかと伺いました。……お願いできますでしょうか?」
急いでいるので単刀直入に切り出す。
「もちろんよ。どうぞ座って」
おねーさんがカウンター前のイスを促す。
言われたとおりオレはそこに座る。
「こんな早朝にって何かワケあり?」
「はい」
オレは簡単に事情を話す。
マレビトで、7日前に来たばかりということも話した。
さりげにお金を貸りることは出来ないかと聞いたが、それは『決まり』で出来ないと言われた。そして屋台での『後払い』も、このご時世まず無理だろうとのこと。
まぁ、それなら仕方ない。
「つまり、二人分の食事代をなるべく早く稼ぎたいわけね?」
「そうです」
話を聞いてくれたおねーさんは、すぐに理解を示してくれた。
「じゃあ、国の南方にある『見習いの森』がおすすめよ」
「見習いの森、ですか?」
「そうよ。強い黄泉返りは今のところ確認されてないし、唯一出る骸骨も、少数や単独で行動しているのが多いから見習いの森。初心者さんにはうってつけよ」
なるほど……。
「呪物、というのは分かる?」
「えっと……黄泉返りってのを倒した後に残る、『奴らの魂が宿っているモノ』……って聞きました。骸骨は確か『黒い骨』だと……」
これまで色んな人達から聞いてきたことを思い返す。
「そうよ。それを持ってこれば換金できるわ。目安だけど、ふつうの骸骨は1体200ポウよ」
200ポウ……。3体で15万ポウだった面山賊に比べたら、段違いに安い。
でも骸骨の大襲撃の時、なんだかんだでオレでも数体倒せてたから、そんなものなのかもしれない……。
「強い骸骨なら1000や2000になることもあるけど、武芸未経験ならあまりおすすめしないわ。やばいと思ったらすぐ逃げなさい」
「わかりました」
「じゃあ、まず『退魔師見習い』として仮登録するから、名前を書いてくれる?」
おねーさんが『見習い登録用紙』と書かれた紙と羽ペンとインクをカウンターに出した。
すぐに記入する。
「氷上吹雪……か。いい名前ね」
おねーさんが小さなカードに、オレの名前を書き写しながら言う。
「どうもです」
「はい。これが『退魔師見習い証』よ」
そして、その小さなカードをオレに手渡した。
「退魔師見習い証は、国を出入りするときに必要になるわ。門番さんに見せてあげて」
「わかりました」
「それと、キミにはこれが必要かな」
おねーさんが、カウンター下から『お守り』のようなものを出した。
いや、ただのお守りに見える。
「『瘴気除けのお守り』よ」
瘴気除けのお守り……。
あっ……。
「これはあなたのお仲間さんのように、『瘴気』にあてられない為の道具よ。まだ持ってないんでしょ?」
「……はい」
そのことを、全然考えてなかった。
「あの、瘴気って一体なんなんですか?」
医者には、詳しく聞く時間がなかった。
「あれは一種の毒よ。黄泉返りはみんな纏っているもので、特に骸骨の骨を砕くときに大量に飛び散るの」
そうなんだ……。
だからムーコが一番ダウンしてるのか……。たくさん骸骨と戦ったから……。
「退魔師の必需品よ。常に身につけておきなさい」
「……いただいていいんですか?」
「ええ。それは国からの『支給品』よ。今、国は退魔師を求めているからね。最近そういうのも無料で支給されるようになったの。と言っても、それは元々手軽に購入出来るものだけどね」
そうなんだ……。
ありがたくおねーさんから『瘴気除けのお守り』を受け取り、首からかける。
「あとはこれ。『ホテイ袋』はわかる?」
「あ、はい……大丈夫です」
ホテイ袋……。死体回収の人やテント売りさんが使ってた袋で、見た目よりもたくさん物が入る『宝具』だ。
「骸骨の『呪物』を入れるのに便利よ。いくら『瘴気除け』を身につけてても、直接持ち続けるのは良くないからね。これも持ってないなら、使ってね」
「ありがとうございますっ」
「他にも『正式な退魔師』として認定されたらいろいろと『特典』が受けられるけど、あなたは急がなきゃだし、そういう話はまた今度にして、あとは骸骨狩りについて最低限の説明だけするわね」
「はい。お願いします」
それから3分ほど、簡単な説明を受けた。
主に骸骨の倒し方──頭蓋骨と背骨を破壊すれば、『呪物』になるって事と、それ以外の換金できる『戦利品』についてだった。
あとはまぁ、『新人は十人に一人は、亡くなるからね。それもみんな、チームで動いている人達の話だから、単独で入るキミは充分に気をつけるように』とか言われた。
「じゃ、表の大通りを右へまっすぐ行くと国の出入り口。さらにそのまま真っ直ぐ行けば『見習いの森』よ。いってらっしゃい。死なないようにね」
「はい!」
オレは出口へと向かう。
背後から声がかかる。
「お仲間さんは早く栄養さえとれば、きっと助かるわ。お金は貸してあげられなくて申し訳ないけど、がんばって。応援してるわ」
おねーさんが少し申し訳なさそうに言う。
なんか逆に申し訳ない。
「いえ、ありがとうございます!」
オレは頭を下げて換金所を出た。




