46 早朝
早朝。
夜、一時的に温まったムーコとナタリの体温がまた低下してきた。
特にムーコの冷えが酷い。
抱きしめてても、小刻みに震えている。
まずいな……。
オレ自身の体温も、夜通し二人を暖めたことで、カイロとしての役割をあまり果たさなくなってきた。ていうかオレも冷えてきている。
「フブ兄……何か温まるもの食べたい」
ナタリが言った。
「そうだな……」
確かに食べ物が必要だ。
それも、なるべく身体が温まるカロリーの高いものが……。
思えばオレとナタリは昨日の昼食を食べたが、ムーコは昼も夜も食べていない。発熱するにしてもエネルギーが足りてないのだ。
早いところ何か調達しなくてはならない。
だが所持金は0ポウ。
そしてそれはまだ、二人には話していない……。
「まだ早朝だから屋台もやってないと思うけど……なるべく早く何か持ってくるから、待っててくれるか?」
「うん……おねがい」
オレが聞くとナタリが返事した。
ムーコは返事もしない。礼儀正しいムーコがこれって相当やばい。
「ナタリ、すまんがムーコとくっついててやってくれ」
「うん。任せて」
正直ナタリもきついと思うが、当然のように了承する。
「少し時間がかかると思う。すまんが行ってくる」
布団から出るとき、オレは返事のないムーコの頭を軽くなでて声をかけ、それからテントを出た。
急いで何か温まるものを手に入れなければ……!
◇
案の定、屋台は全然やっていない。飲食店もまだだ。
昨夜布団を買った時には、とても賑わっていた場所だが、やはりまだ時間が早いのだろう。
お金はなくても事情を話して、後払いでなんとか少し譲って貰えないかとも考えていたが、やってないんじゃ仕方ない。
だが、収穫はあった。
『発熱うどん』というのが、身体を温めるらしい。
のぼりに『瘴気による体温低下には発熱うどん!』と書かれていて、一杯700ポウ。離れた他の屋台でも、同じ内容のを2つ3つと見つけた。ここでは一般的なもののようだ。これを二人が食べれば、良くなるかも知れない。二人に食べさせてあげたい。
あとは──どうする?
迷っている暇はない。
「すみませんっ。このあたりに換金所ってありませんか?」
オレは通りかかったおじさんに尋ねる。
「換金所? 中央区にはないよ」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ、退魔師はわざわざ中央区まで『呪物』を持ってこないからね。西区……は落とされてしまったから、『北区』と『東区』と『南区』にはいくつかあるよ」
北区、東区、南区……。
「キミ、骸骨狩りをやろうとしてるのかい?」
おじさんが、オレの腰に下げてる退魔刀を見ていった。
「そ、そうです」
すぐにオレは答える。他にすぐ金を稼ぐ方法はない。
それに昨夜、オレは退魔師になると決めた。今さら迷いはない。
「新人さんなら『南区』がおすすめだよ。南方には強い黄泉返りはほとんど出ないそうだからね」
「そうなんですか!?」
「うん。まず『南区の換金所』を訪ねてみるといいよ」
「わかりました!」
それからおじさんに『南区の換金所』の場所を教えてもらい、走って向かった。一応、おじさんに『発熱うどん』は瘴気による体温低下に効果があるのかと聞いたら、「ばっちり」と言われた。逆に、普通の食べ物だとイマイチらしい。
親切にそう教えてくれた。




