表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Disfear Bullet  作者: たる。
第二章 記憶の中の少女
13/41

page12 守るために、潰す

 夜。クロナはフィアを連れ、町外れの廃屋にやってきていた。

 目撃情報のあったポイントの周辺。いざという時の退路や防衛戦を想定した、いつものクロナらしくない選択だった。

「大丈夫か、フィア。怖くないか?」

「うん。お姉ちゃんと一緒なら平気だよ」

 こうして防衛対象を気遣うのも、やはりクロナらしくない。

 いや、いつものクロナらしくない、奥底に眠っていた「本性」を露わにさせる程度には、クロナにとってフィアは大切な存在となっているのである。

「やつらは物量戦こそ得意だが、一度に大きな破壊力を出すのは苦手なはずだ。危なくなった時には、この中に逃げ込めばなんとかやり過ごせるはず……」

 廃屋とはいえ、それほど風化しているわけではない。小型の群れを凌ぐには十分な拠点となる。

 もちろんクロナには、「危なくなった時」なんて訪れさせずに敵を殲滅する自信がある。ただ、それは単騎戦に限った話であり、防衛戦、それも子供を守りながらともなると勝手が違ってくる。

 何を隠そう、クロナは戦闘になると敵の殲滅しか考えないため、防衛任務は今までほとんど一切回されることがなかったのである。

 ただ、今回の任務と今までの任務との唯一にして最大の違いとして、クロナ自身が「防衛対象を防衛する気でいる」というものがある。クロナが誰かを守ろうとすることなど、ギルド発足以来初めてのことである。

「よし……。フィア、そろそろ敵が来る頃だ。私がいいと言うまでは、この建物の中に隠れていてくれ」

「お姉ちゃんは?」

「私はもちろん、ここで敵の群れを殲滅する」

「え……」

 途端、フィアの表情が陰る。

「やだ、お姉ちゃんも一緒にいてよ」

「大丈夫だ。というか、私が外に出て戦わなかったら誰がドレッドを……」

「や、やだ、怖いよ! 暗いのにひとりぼっちなんていや!」

「いや、そんな事言われてもな……」

 ふと、そういえばティアも暗い所が苦手だったなと思い出す。

 見た目や性格だけでなく、こんなところまでそっくりであることにクロナは内心苦笑するも、すぐに気を引き締めた。

「フィア、約束しただろう? 私の言うことは絶対に聞けと……」

「守ってくれないの?」

「え?」

 フィアはじんわりと涙を浮かべた瞳で、じーっとクロナを見つめていた。

「お姉ちゃん、わたしのこと、守ってくれないの?」

「い、いや、もちろん何があっても守る。だからこそ……」

「お姉ちゃんなら、『側にいるわたし』を守ってくれるよね?」

 その言葉が、クロナの心に火をつけた。

「……ああ。もちろんだ」

 銃剣、Disfearを引き抜く。

「私の目の届くところにいてくれ。建物の中などにいられてはいざという時反応できないからな」

「お姉ちゃん!」

 ぱあっと顔を輝かせるフィア。

 どうも彼女といると、クロナはいつもの自分を見失ってしまうようであった。

「……と、どうやら来たようだな」

「敵?」

「ああ。……さすがにべったりくっついていられては動きづらい。少し離れていてくれ」

「うん! 頑張ってね、お姉ちゃん!」

「ありがとう、フィア」

 速攻で殲滅する。守るために防衛に徹するのではなく、傷つけないために速攻で潰す。クロナはそう決めた。

 静かな空間に、バサバサという羽音が響き始める。その数は数えるのも億劫になるほど。数十、数百の群れで行動するのが蝙蝠型の特徴だ。

「さあ、来い。一匹たりとも逃しはしない」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ