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【本編完結】ドールと呼ばれた公爵令嬢の乱逆  作者: いか人参
最終章 帝国編

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それぞれの戦い


帝国の歴史や昨今の皇帝の人気の有様等、目の前でダラダラとどうでもいい話をし続ける宰相に、イオンは隠すことなく殺気を向けている。だが、彼は額に冷や汗を掻きながらも話を止める素振りはない。


痺れを切らしたイオンが話に割って入った。



「宰相殿、アレシアを待たせているのだが、もうそろそろ良いかな?」


質問をしているが答えは求めていないため、イオンはさっさと席から立ち上がった。後ろに控えていたファニスはドアに先回りをしたが、彼が取っ手に手をかける前に、外からドアが開かれた。



「そう急ぐでない。せっかくの機会だ、国の主同士積もる話をしようではないか。」


イオン達のいる部屋に皇帝が現れた。

宰相はこのために時間稼ぎをしていたのだ。皇帝が席に着くと同時に、宰相は席を立ち皇帝の後ろに回った。



「さぁ、何から話そうか。」


皇帝は、組んだ手の上に顎を乗せ、イオンに不敵の笑みを向けた。





***





「金髪の美しい方、お名前をお聞きしても?」

「わたくしにも是非。宜しければこの後ダンスでも」

「お初にお目にかかります。どちらのご出身で?」


「っ!!」


レンブラントと共にやってきた男達はクロエの周りを囲むと矢継ぎ早に話しかけてきた。

令嬢姿で帝国の貴族達を斬りふせるわけにもいかず、対処に手こずるクロエ。もどかしい状況に唇を噛み締めた。


クロエが男達に囲まれている間に、レンブラントはアレシアを連れて少し離れたベンチまで移動してしまった。


何よりも大切な主が目の前て連れ去られていく…我が身を切られるような痛みに、クロエは小さく息を吐くと心を決めた。





「アレシア王妃殿下、このような場所までご移動頂きありがとうございます。二人でゆっくりお話をしたく。」


「いいえ、構いませんわ。それで?話とは何でございましょう。」


さっさとこの場を去りたかったアレシアは、眉ひとつ動かさないまま単刀直入に尋ねた。



「本来であれば、お喋りを楽しんだ後で本題をお話したかったのですが…時間もないようですし、こちらも手短にいきましょう。昨日の続きです。イオン国王陛下のされたこと、どうお考えですか?武力で得た権利をお認めになりますか?」


黙って俯くアレシアに、レンブラントは畳み掛けるように話を続けた。



「あれほどまでに貴女様のことをお慕いしていらっしゃるのに、自分の悪様を秘密にしておくなど、信用に値しない愚かな男です。どうです?あのように信用のならない暴力男のことは忘れて、帝国に身を置きませんか?王国に戻れば、次期に彼の悪事は広まり、貴女様諸共斬首刑にされてしまう。そのようなことはあってはなりません。私は貴女様のことをお助けしたいのです。」


レンブラントは両手を広げ、いつものように声高で大仰に演説をした。自分は善意で伝えており、貴女のことを心より心配しているのだと、悲痛な表情を浮かべている。


アレシアは、レンブラントのことを真っ直ぐに見た。



「貴方の言いたいことはそれだけかしら?」


口元だけで笑みを作った。目は笑っていない。そのあまりに人間離れした造られた表情に、レンブラントは一瞬たじろいだ。



「この話を聞いて何一つ動揺されないとは…さすがは王妃になられる器の持ち主です。ですが、強がりはされなくて良いのです。私は、ただ純粋にアレシア王妃殿下のお幸せを願っているだけです。どうか、恐れずに私の手をお取り下さい。」


頭を下げ、懇願するようにアレシアに手を伸ばしたが、その手が取られることはなかった。



「私の幸せを貴方が決めるの?」


それは、怒りも憎しみも悲しみも、何一つ感情の乗っていない言葉であった。だからこそ、心に真っ直ぐに突き刺さる。

睨むでもなく、蔑むでもなく、アレシアはただただ正面からレンブラントの目を見た。



「貴方はイオンの何を知っているの?」

「え…」


次の言葉には、明確な怒りが込められていた。自分に対しての言葉は受け流せても、イオンのことを悪様に言われることは我慢ならなかった。

レンブラントのあまりの言い様に、アレシアの中で何かが切れた音がした。




***




クロエは、鬱陶しく足止めをしてくる三人に対して冷静に対処していった。

 


「きゃあっ!!申し訳ありませんっ」

「いいえ、とんでもごっ…うぐぁっ!」


まず、か弱い令嬢らしく、よろめいたふりをして相手にもたれかかり、相手が油断したところで、思い切り膝蹴りを入れた。

鍛え抜かれたコンパクトな蹴りのおかげで、周囲には悟られず相手に大ダメージを与えることに成功した。


いきなり苦しみ出した男に、焦った他の男達が駆け寄る。クロエはその好機を見逃さず、気配を消して素早く彼らの背後に回り込むと、頸動脈を狙った手刀で落とした。


二人連続で倒したつもりだったが、騎士が混ざっていたらしく、いきなりの手刀にも耐え立ち上がってきた。



「き、貴様は一体、何者だっ!!」

「感謝申し上げます。」


自ら正体を表した男に、これ幸いとクロエは低く腰を落として拳を構えると、男の腹部に強烈な一打を打ち込んだ。



「ぐはっ!!!」


相手のおかげで令嬢のフリをする必要がなくなり、手加減なくやり返すことが出来た。


三人が身動きをしなくなった様を見届けると、クロエはドレスの裾をたくし上げ、全速力でアレシアの元へと向かった。




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