結婚式の翌日
カーテンの隙間から漏れ出た光で目を覚ましたアレシアは、ぼーっと天井を見つめた。
その後、眠気まなこでぼんやりと窓から空を眺め、もうだいぶ陽が高いことに気付いた。
あ!!うそっ!!
完全に寝過ぎたわ!早く畑に水をやりにいかないと。昨日もお世話出来てないし、鶏にも餌をやりに…
畑に行く準備をするため、ベッドから起き上がり勢いよく飛び降りようとした。が、何かに阻まれ、身動きを取ることが出来なかった。
「えっ…??」
動けないアレシアが不思議そうに背中の方を見やると、美しい金髪と宝石のような青い瞳が目に入った。
「アレシア?どこに行くつもりかな??」
「えっと…………?」
にっこりと美しく微笑むイオンと目が合った。彼も寝起きだと言うのに、いつもの麗しい姿そのものであった。
彼は寝転んだまま、上半身を起こしているアレシアの腰にしっかりと抱き付いている。
「まさか、僕を置いて、畑に行こうだなんて思ってないよね?」
「…思ってませんけど?」
図星だったアレシアは、見透かしてくる青い瞳から目を逸らした。
「寂しいな。昨日は神の前で愛を誓い合って、あんなに愛し合って、僕の名前を何度も呼んでくれて、僕は嬉しくて堪らなくて、今もその幸せの中にいるというのに、君ときたらもう忘れてしまっているなんて…」
イオンは、片腕はアレシアの腰に巻きつけたまま、もう片方の手で彼女の髪を撫でた。
「そ、そんなこと…」
「ない?」
イオンの蕩けるような笑みに、顔を赤くしたアレシアはこくこくと頷きを返した。
「良かった。君も僕と同じ気持ちだと分かって安心したよ。じゃあ、昨日の続きをしようか?」
「え…………」
思わぬ展開に、アレシアは口を開けたまま固まった。
いや、ちょっと待って……昨日だって半分死にかけたのに、今日もって、しかも朝からだなんて…絶対に無理!!!心臓が持たないんだけど、今度こそ絶対に命を落とす……何とかして回避しないと……
「あ、でも、イオンも仕事あるでしょう?ほらもうお昼だし、早く行かないと。ね?」
額にうっすらと汗を滲ませながら、アレシアは何気なさを装って仕事に行けアピールをした。だが、笑顔が引き攣っている。
「君は…僕の心配をしてくれるんだね。ありがとう、アレシア。でも今日は一日休みを取っているから安心して。結婚式の翌日に仕事をするわけがないだろう?」
イオンはアレシアの髪を撫でていた手を止め、今度は彼女の耳に髪をかけ、露わになった化粧っ気のない真っ白な頬に軽くキスをした。
「ひっ」
イオンの温かくて柔らかい唇の感触に、昨日のことを思い出したアレシアは、びくっと肩を震わせて過剰反応してしまった。
その反応のあまりの可愛さに、寝転がっていたイオンは飛び起き、上から覆い被さるようにアレシアのことを強く抱きしめた。
「朝からこんなに可愛くてズルいんだけど。こんなにも僕のことを夢中にさせてどうするつもり。はぁー。もう愛し過ぎてつらい…」
抱きしめたまま頭の上でため息をつくイオンに、アレシアは呆れた声を出した。
「もう、相変わらず大袈裟なんだから…」
「事実なんだから仕方ない。こんなにも愛する妻がいるのに、その妻から離れて仕事をするなど、馬鹿らしくなってきた。僕はアレシアといたい。片時も離れたくない。アレシアと仕事、どちらかを選べと言うなら、僕は迷うことなくアレシアを取る。アレシア以上に大切なことなどこの世にあるものか。」
アレシアへの愛が暴走して、イオンは訳のわからない理論を展開し始めた。
朝から絶好調のイオンに、アレシアはため息をついた。
「王たる者、国のために存在するべきでしょ?そんなこと言ってたら、国民に嫌われてしまうわ。」
イオンの溢れる愛に、アレシアは照れることもなく正論を振り翳した。だが、それでめげるイオンではない。
「この世界の全てが僕の敵になろうとも、僕はアレシアさえ味方でいてくれれば、他のことはどうでもいいんだ。」
物凄く真面目な顔で言い切った。その瞳はどこまでも澄んでいた。
「私は、嫌われ者の王様なんて嫌よ。いつだって国のことを一番に想い、そのために尽力する姿が心底素敵だと思うけど。」
アレシアの本音に、イオンはハッとベッドから降りると光の速度で身支度を整え、いつもの公務を行う姿に早変わりした。
「仕事に行ってくる。」
「あ、行ってらっしゃい…」
イオンは、髪を一つにまとめ、涼しい顔で言った。
数分前まで仕事が嫌だと、妻と一緒にいたいとごねていた者と同一人物とは思えないほどの変わりようであった。
イオンは、ベッドに片膝を乗せると身を乗り出し、アレシアに行ってきますのキスをした。
「続きはまた夜に。」
耳元で囁くと、妖艶な笑みを残して部屋を後にした。
最終章始まりました!
気になった方は続きを読んでいただけたら嬉しい(´∀`)引き続き宜しくお願いします!




