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【本編完結】ドールと呼ばれた公爵令嬢の乱逆  作者: いか人参
第二章 王国編

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イオンの嫉妬


「イオン、貴方右利きよね…?」


「王たる者、仮に利き腕が吹き飛んだとしても、公務に支障をきたさないように鍛えられているのだよ。」


イオンは微笑んでいるが、どことなく黒い影のある笑顔だった。



「それは…努力の賜物なんでしょうけれど、ねぇ発揮どころおかしくない??」




いつもの如く隣に並んで仕事をしているのだが、イオンの右手はしっかりとアレシアの手を握っている。

彼女の手を握りたいがために、イオンは利き手ではない左手でペンを走らせているのだ。


昨日、盛大に己の闇を晒したイオンだったが、クロエと話した以降はだいぶ落ち着き、今のところは、アレシアの手を握っていれば心の安寧は得られているようであった。




常に左手が塞がっている事態に慣れてきたアレシアは、気にせず自分のやるべきことを進めている。


「1〜2年で身に付いて、初期投資が不要で、生活に困らないくらいのお金を稼げる仕事…そんなものって現実にある?」


「住み込みで貴族の邸や王宮で働ける仕事なら要件を満たせると思いますが…」


「いきなり、そんなことろで働けないわよね…識字率も高くはないでしょうし。」


「学ぶ所と働く場所を分けて考えてみてはどうだい?」


何か良いことを思いついたような弾む声でイオンが話に混ざってきた。



「分けるって…?」


「まずは、市井にある商店等で基本的なことを学ばせる。その後で働く先を斡旋するのはどうかな?」


「市井で学ぶか…協力店が集まれば出来るかも…協力してくれそうなところはあるかしら…あ、そうだわ!」


きらりと瞳を輝かせたアレシアは、勢いよくクロエの方を振り向いた。



「ねぇ、アストラに聞いてみるのはどうかしら!」


「アストラ…?」


アストラの名を聞いた途端、イオンは目を細め眉間に皺を寄せた。一気に部屋の温度は下がり、彼の冷ややかな声が執務室に響く。



「そう。今無料食堂の運営も担ってくれているし、市井の情報に詳しいと思うの。話を聞いてみるのも良いかなって。」


「アレシア様!」


「どうしたの、クロエ?」


クロエの静止も虚しく、アレシアは名案だとばかりに、ニコニコと嬉しそうな顔をしている。




「アレシアは、他の男とお喋りがしたいの?」


「えっ…」


男の名前に反応したイオンは、真っ黒な笑顔でアレシアのことを見つめてきた。

彼からの圧は、自分は何かとてつもなく悪い事をしたのだと思わせるような威力があった。



「僕というものがありながら?」


「いや、、その…」


何一つやましいことなど無いはずなのに、あまりの圧にアレシアは目を泳がせてしまった。



「続きは僕らの部屋に戻ってから聞かせてもらおうか。」


「え!?」


スイッチの入ったイオンは、にっこりとアレシアに笑いかけながら、あっという間に彼女を横抱きにして持ち上げてしまった。



「アレシアが僕以外に目を向けるからいけないんだよ。僕のことで頭がいっぱいになるようにしてあげる。」


「ちょっと待ってー!!止めて止めて!」



そのまま執務室を出て、スタスタと二人の部屋、つまりは寝室に向かおうとするイオン。


こうなったイオンは止められないと知っているファニスとクロエは、去り行く背中に一礼をして見送った。




「イオン!私達まだ神に誓いを立てていないのだから、部屋に二人きりはマズいわ!」


「式まで後一ヶ月か…」


「そうよ!だから戻りましょう。ね?」


「うん、そうだね。」


アレシアの必死の説得でようやく我を取り戻したイオンは、回れ右をした。

だが、アレシアのことは下ろさず抱えたまま立ち止まっている。



「イオン?自分で歩けるから…」


「結婚式後のことを楽しみにしている。」


イオンは抱えたままのアレシアをぎゅっと自分の胸に近づけ、昂った思いのまま首元にキスをした。



「ひゃあっ!!!」


「ああもう、可愛い。可愛いが過ぎる…」


ニコニコを通り越して、ニヤニヤ顔のイオンは、上機嫌でアレシアのことを執務室まで抱えて戻った。





「クロエ、最近イオンの暴走が過ぎると思うのだけど…」


今日はイオンは公務で終日外出でファニスもいないため、アレシアはため息混じりにクロエに愚痴をこぼしていた。



「国王陛下の愛は海よりも深いですからね。あんなにも愛されているアレシア様はお幸せですね。」


「それはそうなんだけど、、、」


「御心が晴れないのでしたら、久しぶりに外にお出掛けになっては如何でしょうか。」


「外…良いわね!式の後は公務も増えてくると思うし、行くなら今のうちよね!早速イオンが戻ったら許可をもらいに行ってくるわ。」





イオンの帰宅後、早速彼の執務室に向かったアレシア。


「お帰りなさい、イオン。」

「ただいま、僕のアレシア。」


イオンは相変わらず、アレシアがノックをするとドアを開けて、抱擁を交わしてから中に迎え入れてくれる。



「イオン、私少しだけ外に行きたいのだけど…」


「もちろん、いいよ。」


不安げに言ったアレシアが驚くほどの快諾であった。最近の暴走ぶりからして、絶対に断られると思っていたのだ。



「ありがとう、イオン!」


「僕もアレシアからのお誘いだなんて嬉しいよ。ありがとう。」


イオンは満遍の笑みでにっこりと微笑んできた。



「え…イオンも一緒なの?なんか思ってたのと違うんだけど…」



アレシアの言葉をスルーされ、独り言とみなされていた。





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