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【本編完結】ドールと呼ばれた公爵令嬢の乱逆  作者: いか人参
第二章 王国編

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公表


「アレシア様とメルクーリの雰囲気、変わりましたね。」


ファニスは、執務室の窓の外から、二人で畑仕事をしている様子を微笑ましそうに見ていた。


アレシアのやりたいことを聞いたイオンは、執務室の場所を、空き地を見渡せる部屋に変更していたのだ。



「正反対の二人だが、ようやくアレシアの想いが伝わったか。」


「ええ、そのようですね。最恐の組み合わせが出来たかもしれませんよ。」


イオンとファニスは、数日後の公表に向け、書面の最終確認や関係者への事前連絡など事務処理に追われている。

目の前の書類を捌きながらも、イオンの思考は今後の政策に向いていた。



「僕も負けじと、この国のためにやるべきことをならないとな。まずは、ブルーダイヤモンドの件だが、」


「はい、採掘の強制は取り下げました。これで街に帰れる者もいるでしょうが、やはり国から補償を出す必要があるかと。何年も炭鉱で過ごし、手持ちが無いと街では暮らせません。」


「ああ。その分は予算に組み込み、最優先で対応しよう。先代の罪は僕が償わないといけない。」


そこでイオンは書類から目を離し、顔を上げてファニスを見た。




「ブルーダイヤモンドの代わりなのだが、ダイヤモンドで考えている。」


「ダイヤモンド…ですか。」


「ああ。ダイヤモンドと言っても、フェイントイエローのものだが。」


一瞬険しい顔をしたファニスだったが、納得したように数回頷いていた。



ダイヤモンドはその色によって等級が決められており、大きく価値が異なる。

貴族社会に出回るのは、カラーレスと呼ばれる無色透明のもので、最も価値が高く、希少なものだ。

イオンの言う、フェイントイエローとは、等級は上から3番目で、僅かに黄色味が掛かった色である。

貴族はこれを欲しがらず、価格としては安くはないため平民の手が届くものでもなく、使い所が無いというのが現状だ。


王家の宝石として指定することで、国が買い取ることが容易となり、採掘者にもっと金を回すことが出来るだろう。

というのが、イオンの建前だ。




「確かに…フェイントイエローは、アレシア様の髪色を彷彿させるような綺麗な色味ですね。」


「いや、そういうわけでもなく…僕は純粋にこの国の経済のために…」


「アレシア様が王妃になられたこのタイミングなら、新たな象徴としてフェイントイエローのダイヤモンドを広めやすいですね。今度商人とデザイナーを呼び寄せ、アレシア様の気に入る物をいくつか作ってもらいましょうか。出来れば、それを身に付けたアレシア様に公の場に出て頂きたいですが、それはご本人様の意向を伺うべきですね。」


「…ああ、そのように手配を。」


「畏まりました。」


優秀過ぎる側近の前では、イオンの本音などダダ漏れなのであった。





それから数日後、先代の国王の急逝とイオンの即位及びアレシアが王妃になったことが王宮から正式に公表された。

その公式文書の中には、先代の強い希望により、国葬は行わないこと、イオンの即位式も行わないことが記載されており、イオンとアレシアの結婚式は喪が明けた後に行うという文までしれっと盛り込まれていた。


国王はもう長くはないという噂の甲斐あって、貴族の間に大きな動揺は見られず、王太子であるイオンが王位を継ぐのは当たり前だという反応で、このことに対して反発を示してくる者もいなかった。


アレシアが王妃になることについても、婚約パーティーでの姿を見ていた者たちから広まった話で彼女の好感度はかなり高まっており、イオンとアレシアが結婚したことに対して歓迎ムード一色であった。




公表後に起こり得る最悪の事態を想定して動いてきたイオンと部下達にとって、肩透かしを食らうほど平穏そのものだった。


ただ一人を除いて。




「アレシア、今日から僕の部屋はキミの隣になったよ。夫婦だと公表したからね。遠慮せずいつでも僕の部屋に来ていいよ。朝食は毎日一緒に取ろう。しばらくは無理だけれど、落ち着いてきたら夕飯も一緒にしよう。」


公表されてすぐ、にこにこ上機嫌のイオンが朝っぱらからアレシアの部屋に押しかけてきたのだ。



「は・・・?」


「どうしたのアレシア?」


「今なんて??」


「僕たちは夫婦なんだ、食事を共にするくらい当たり前だろう?そのうち寝室だって、、」


「え…そんなの聞いてないわよ。これ政略結婚じゃないの?」


「君っていう人はまったく…とにかく、明日の朝から迎えに行くから宜しくね。今後のことは、ゆっくり考えていけばいいよ。いつか君のことを絆してみせるから、覚悟してて。」


言いたいことだけ言うと、イオンは足取り軽く、部屋から出ていった。




「なんなのよ、あれは…」


相変わらず人の話を聞かないイオンに、アレシアは1人頭を抱えていた。若干だが、顔が赤くなっている。




「とりあえず、畑行こ。」


が、秒で考えるのをやめた。

彼女の頭の中をイオンが占めていた時間は、ほんの数秒だけであった。






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