表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】ドールと呼ばれた公爵令嬢の乱逆  作者: いか人参
第二章 王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/100

アレシアとクロエ②


その翌日もアレシアは昨日と同じ場所にいた。前日と同じ作業を繰り返し行なっている。


稀に、近くを通った衛兵や王宮勤めの者が手伝いを申し出てくれるが、アレシアはその全てを笑顔で断っていた。


これは自分で決めて自分が始めたことだから、他に仕事のある者の手を煩わせるわけにはいかない、と。そして、この作業結構好きなのよと言って笑っていた。


他の者に気安く笑いかけるアレシアのことを、クロエは黙ったまま見つめていた。





畑仕事を始めて三日目の今日、外は生憎の天気で、朝から雨が降っていた。



「後もう少しだったのに…」


部屋で朝食を取り終えたアレシアは、外を見ながら1人呟いた。



雨だからやめておこうかと思ったけど…やっぱりあと少しだから、今日の内にやってしまいたい…ほら、よく見たらそんなに降ってなさそうだし?


私は外套を借りればそれで良いけど、雨の中クロエを立たせておくのはさすがに気が引ける…今日は雨だから休みよって伝えて下がらせようかな。たまにはお休みも必要よ!


うん、そうしよう。


いつもと同じ場所に行くだけだし、バレなきゃ良いのよ、バレなきゃ。




コンコンコンッ


「王妃殿下、国王陛下がお見えでございます。」


ノックと共に、侍女がアレシアに声を掛けてきた。



「は?」


「お通しして宜しいでしょうか?」


「王妃は不在よ。」


そんな戯言を真に受けるはずもなく、イオンは普通に入室してきた。



「おはよう、アレシア。今日は生憎の天気だね。」


どことなく黒い笑みで微笑むイオン。

彼の表情に、企みを見透かされているような気持ちになったアレシアは、視線が泳ぎまくっていた。



「え、ええ、そうね。」


「アレシア、ところで君の今日の予定は?」


「えっと…雨だから大人しく部屋で刺繍…とか?」


「ふふふ、僕のため?出来上がりを楽しみに待っていようかな。」


「いやそれは、その…」


アレシアが口篭った瞬間、イオンの目が光った、ように見えた。



「まさか、この雨の中、外に行こうだなんて考えてないよね?」


「…滅相もございません。」


「ダメだよ、アレシア。身体を冷やしたら風邪を引いてしまう。雨の中の作業は禁止だ。」


「あともう少しだったのに…」


イオンに先手を打たれたアレシアは、唇を尖らせ、顔に悔しさを滲ませていた。



「また天気の良い日に続きをやればいい。毎日頑張る君に、天が気遣って休みをくれたんだよ。今日は1日ゆっくりすると良い。メルクーリ、アレシアのこと宜しく頼むよ。」


「畏まりました。」


ドアの近くに控えていたクロエがイオンに向かって一礼をした。




「ふふ、今日は朝からアレシアの顔を見られたから、良き1日になりそうだ。朝から気分が良い。」


「私は、おかげさまで真逆の1日になりそうよ…」


アレシアの発言は聞こえなかったことにして、イオンは爽やかな笑顔のまま部屋を出て行った。





この中で出来ること・・・


イオンが去った後、今という時間を無駄にしないために、ここで出来ることをひたすら思案していた。




あ…そうだ。この国の食糧事情が気になるから、ちょっと現場で話を聞いてみようかな。




思い立ったアレシアは、早速厨房に向かおうと、クロエに声を掛けた。

が、彼女の反応は芳しくなかった。


「本当に行かれるおつもりですか?あそこは、アレシア様のように、高貴なお方が足を運ぶような場所ではございません。粗雑な場所にございます。どうかお考え直し下さいませ。」



あ、しまった…



主観で発言してしまった。王妃殿下に指図のような真似をしてしまった。

国王陛下にあれほど言われていたのに…自分はなんて愚かな真似を…



クロエは、自分の口を突いて出た言葉に、心の底から後悔をしていた。

先ほどのまでの強気な雰囲気は一切なくなり、顔は真っ青だ。


アレシアからの言葉が怖くて、見上げることが出来ない。俯いたまま、自責の念で小刻みに肩を振るわせていた。



「クロエ」


いつものアレシアよりも低く、静かな怒気を孕んだ声音だった。



「大変申し訳ございません。アレシア様の意向を無視して自身の意見を述べるなど、無礼の極みにございました。臣下としてあるまじき行為をした身、どんな処分でもお受け致します。」


アレシアの威圧に全面降伏したクロエは、きつく目を閉じ、審判が下される時を待っている。




「貴女、私のこと嫌いでしょう?」


アレシアはお茶に誘うような気軽な口調で、クロエにトドメを刺すようなひと言を言い放った。顔には微笑を浮かべていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ