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異世界召喚戦記 ~チートな治癒魔法陣で異世界を生きてゆく~  作者: クー
第1章 異世界召喚 城塞都市ダペス
20/301

第19話 雷獣 1

レナトス暦 7017年


異世界召喚 4日目



【登場人物】


博影:義理の娘と共に異世界召喚された主人公。理由は不明だが、召喚された際に15歳に若返り、そして、治癒の力を持つ魔法陣を扱えるようになった。

沙耶:義理の父と共に異世界召喚された元気な高校2年生。


ティアナ:異世界召喚の儀式を行った15歳の少女、聖イシューレ教に仕える助祭。


魔物:伝説の間元と呼ばれる雷獣の幼体。豹に似ている。沙耶にチェルと名付けられる。


城の左奥、公爵邸の後方にある見張り台へ入り、地下へ進む。


まあ、地下といってもこの城が高台にあるので、城塞都市の石畳よりまだ上に位置すると思うが…


地下一階に着くと、降りた階段から先は真っ直ぐ廊下が伸びて降り、左右に数部屋に分けられた牢屋があった。広さは、畳四畳半くらい1人用だろうか…


30m程進むと、正面が大きな牢屋になっていた。畳9畳程あるだろう、2人の兵が、牢番を務めていた。


牢番からランプを渡されたティアナが、ランプを片手で掲げ牢屋を照らす。


「右奥の壁際にいます。水や干し肉など、食べます。たまには少し唸りますが、伝説の魔物の幼体と言っても、おとなしいものですね」


口調は軽いが、姿勢を崩さず状況を話してきた。

ティアナが、右側を照らそうとランプを掲げると。



グウゥ…グウゥゥ…


少しづつうなり声が大きくなる。右奥に、青く光る目が見える。

唸りながら、近づいてきた。


沙耶を自分の後ろに下げ、牢番も含め3・4歩後ずさりする。


「こんなに、威嚇してきた事はないのですが…」


牢番が少し怯えた。


全体が見えてきた。


真っ黒な…中型犬程の大きさの豹に似た動物だった。


豹と異なる所は、やや、顎が顔がすっきりとしておりチーターに似ている。

体つきはまだ大人ではないというが、チーターのように細くなく、足や首回りが太く見える。

又、背中、前足の付け根…盛り上がって見える左右の肩甲骨付近より、それぞれ、触角のような、尻尾より細い体の長さ程あるものが体に沿って、フワッと揺れている。


牢の鉄柵の所まで来た。ティアナをじっと睨むように一声唸ると…


鉄柵の隙間から鼻を出し、伏せの姿勢を取り、黒い獣は博影を見上げた。

その目は、さっきまでの険しさはない。


博影は、ゆっくり近づくと鼻先へ右手を伸ばした。

ゆっくり鼻先から、額まで数回撫でる。


「おぉ…魔物とはいえ、自分の命を救ってくれた人間はわかるのですかな」


後ずさったまま牢番は言うが、けっして近付こうとはしない。


「それなら、首筋を切り裂いた私の事は、かなり恨んでいるでしょうね」


ティアナは、苦笑いしながら言う。後ずさったまま近付こうとはしない。


「この魔物は、そんなに危険? 魔物?獣ではないの?」


沙耶も近づき、魔物の鼻先を撫ぜる。


「これは、獣ではなく魔物です。魔物は、腹部の奥に魔石を持っており不思議な力を使ったりします。

基本的に、魔物の領域に近づかなければ、人里に現れる事はありませんが、聖石を使用した武器を使う騎士でなければ、倒す事は困難です」


博影、沙耶の手に任せながら、魔物は、ちらっとティアナを見ている。


「この幼体というか子供は、伝説の雷獣です。魔物狩りに派遣された騎士部隊が、はぐれているこの魔物を見つけ、生け捕りにして来ました。

騎士10人がかりで、魔物の体力が尽きるまで戦い、二時間以上かかったそうです」


少しティアナが近付こうとすると、博影達に撫でられたまま、魔物は少し唸った。

ティアナは、若干怯え…後ずさった。


「公爵様からは、この魔物の扱いは、博影様に一任するとの事です」


「一任?」


「はい、殺して魔石を取り出しても良いし……牢から出しても良い、との仰せです」


ティアナは、愛想笑いを浮かべながら、かなり困っているようだ。


「? 魔物を牢から出してもいいの?」


ちょっと、噛みながら博影がティアナに尋ねた。


沙耶が、クックッと笑う。

沙耶に指摘されなくてもわかっている。

博影も、40歳の言葉遣いと、15歳の言葉遣いが混じり合って、話していて違和感があるのだ。


「はい。その代わり、この聖石が付いている隷属の首輪を魔物に付ける事が、条件ですが…

ただ、この雷獣の魔力がかなり強いので、私の力では隷属の首輪を付けられません」


「自分がこの首輪を付けれれば、牢から出して良いということか…」


撫でながら呟く。


「お父さん。生贄にされて、助かって、又殺される。閉じ込められる…可哀想だよ助けてあげて!

ねっ、チェルだって首輪つけるのに協力するよね〜」


沙耶は調子に乗って、まるで、家の猫を可愛がるように喉を撫でている。

魔物も嫌がっていない。


「チェルって、うちの猫の名前じゃないか…この顔で、チェルって感じか?」


「そうかなぁ〜似合わないかなぁ~、ねえおまえ、チェルでいいよね」


博影の言葉を意に介さず、もう、両手で可愛がっている。


「ティアナ。首輪をくれ、牢に入る」


立ち上がる。


「えっ、それはダメです。このまま、鉄柵の隙間から首輪を付けて下さい。

この鉄柵も、聖石のご加護をつけてますから大丈夫ですが、なければ簡単に嚙み切りますよ」


ティアナに、即却下される。


「いや、この魔物をいずれ逃すにしても、一緒にいるとしても、かなり強い魔物なら、よけいに自分が従えさせる事が出来ると、見せておかないと心配の種は消えないだろ。

首輪をつけなくても、従えさせる事が出来ると見せる」


博影は、入り口らしい所に立つ。


「普通ならとても了承出来ませんが、これは、昨日の博影様の治療に対しての、公爵様からのお礼との事ですので、絶対無理しないで下さい」


ティアナが鉄柵に近づき、博影に念を押した。


「雷獣程になると、人の言葉を理解する…と、言い伝えられていますから、まずは私も実証してみます。出来てから入って下さい」


ふぅぅ〜と、浅く長く息を吐き、魔物の前に立つ。


「おまえ、今の話を理解しましたか? 理解したなら、今から博影様がおまえをここより出すために入りますから、この柵のいちばん右端で待ちなさい」


魔物は、先程と違いティアナが近付いてもう唸らない。そして、仕方がないと…しぶしぶ立ち上がり、右奥へ行き博影へ顔を向け座った。


「まるで、人間みたい。いやいや、しぶしぶ、ノソノソしてる」


沙耶が喜ぶ。

ティアナが、左側にある入り口横の鉄柵外にかけてある聖石を左手で触れ…念じる。


「博影様、どうぞ」


開けて入る、魔物は全く動かない。


「いい子だね〜、動かないで待ってるね」


博影の後ろから入って来た沙耶が、嬉しそうに言い魔物へ駆け出した。

両手で首や頭に抱きつき頬ずりする。


周りの誰も、止める暇がなかった。


ちょっと、ドキッとしたが…


…しょうがないなぁ。まぁ、チェルでいきますか…


そう思いながら、博影も近寄り頭をなでる。


「チェルで、いいか?」


と苦笑いしながらたずねると、博影と沙耶の顔を魔物は交互に舐めた。


ティアナより、首輪を受け取り念じる。博影、沙耶の許可なく人や生き物を傷付けない事…


…魔物は、大人しく従っていた。



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