第6話 ロムニア国 建国 6
異世界召喚 120日目
イシュ王都を出発し、23日目
城塞都市グリナ…制圧4日目
ロムニア国 建国4日目(城塞都市グリナ・占領4日目)
族長ウルディとクーノィ達が選抜したテュルク族戦士100名を、昨日と同じく、魔法陣を使い修練を行う。
ロムニア国 建国5日目(城塞都市グリナ・占領5日目)
遠征の最終準備と、休息日とする。
イムーレ王子、カローイと昼食を共にし遠征の日程と、城外での戦、城攻めなど戦の最終確認を行う。
ここで、カローイより…
テュルク族の強さは承知しているが、敵騎兵の戦術等の助言役として、カローイ付きのダペス家騎士2名と、ダペス家・重装騎兵50名が加わることとなった。
ロムニア国 建国6日目(城塞都市グリナ・占領6日目)
早朝…
ロムニア城内、貴族・騎士エリアの大広場では…
黒の甲冑に身を包んだ黒騎士(博影)、システィナ、ルーナ、ブレダ
ダペス家騎士2名、ダペス家・重装騎兵50名
族長ウルディ、クーノィ、ウーノィ、テュルク族・黒山羊騎兵100名
約160名の出陣式が執り行われた。
ちなみに…ティラは残りロムニア城防衛のテュルク族の指揮をすることとなった。
本人は最後まで、戦場には自分が行く…兄者が残れ!
と、本気で言っていたが…
施政者イムーレ王子、カローイからそれぞれ訓示を受けた後、貴族・騎士エリアの門をくぐり、約160名の騎兵は正門へ向かう。
正門傍には、マリア達が並んでいた。
先頭を進む、黒騎士(博影)へ向かい、マリアと数名が馬をすすめる。
そして、マリナは当然のように黒騎士の左隣につくルーナとの間に入り…黒騎士(博影)へ顔を向けると満面の笑顔を向けた。
反対に博影の左隣をとられたルーナは、口は笑っているが目は笑っていない。
…ふぅ…
博影は、小さなため息をつきながらマリナへ右手を伸ばし柔らかく握手をする。
「マリナ、とにかく無理はしないで」
「大丈夫です。黒騎士様に心配かけないよう致します」
黒騎士の手をやわらかく握りしめ、マリナはさらに満面の笑みで微笑んだ。
そのマリナの後方より、騎兵3騎が近づき…
「黒騎士殿、マリナ様のことよろしくお願いします」
騎士ペシエは馬上にて深々と頭を下げた。
騎士トゥロクとセドナも、複雑な表情で深々と頭を下げる。
2人は、当然マリナの護衛として出陣するはずだったのだが、マリナが頑として一人で行くときかなかった。
城塞都市ロムニアは、落ち着いているように見えるが、モスコーフ帝国騎士・市民兵を多く抱えている。
いつ、なにが…どのような些細な事が引き金となって治安が乱れるか…反乱が、暴動がおこるかわからない…
そのため、マリナとしては、治安に不安がある今の状態で、騎士や市民兵に信頼されているペシエはもちろんの事、トゥロクとセドナも連れていくつもりは微塵もなかった。
2人も当初は、いや最後まで護衛につくと言い張ったが、戦場では、ダペス家・重装騎兵10名が護衛につくと聞きしぶしぶ折れた。
しかし、2人を連れて行かない理由は他にもある…トゥロクとセドナを連れて行くと、当然戦場以外でも2人は護衛しようとする。
すると、せっかく博影と供に行動するのに、二人っきりになることはほとんど不可能…
…戦にこのような感情を持ちながら参加するなんて…
と、自分を非難する。でも、もちろんそれだけではない。
二つの港町を制圧した後、聖イリオス教の司祭たちに協力を依頼できるのは、
…私しかいない…
そう…決して博影様と一緒にいたいから…ではなく、
ロムニア国の為に…
ロムニア国の人々のために…
防衛上必要な都市を制圧し、しっかり守っていかなければ…
マリナは、笑顔の下で決意を新たにし、黒騎士(博影)達と騎馬をすすめた。
城塞都市ロムニア正門を出て、3時間後…
先頭を進む博影達の先に、徒歩のチェルと供の狼2頭が現れた。全軍、その場で小休止をとる。
チェルは、夜明け前にロムニア城を出て狼たちと斥候に出ていた。
チェルの報告では、特に敵兵の姿は見当たらないとのこと、代わりの斥候を出し、半時の小休止後、全軍を進める。
夕刻、野営予定の小川付近で天幕を張り陣を築く。
夕食を族長ウルディ達の天幕で共にとり、翌日の確認を行い解散となる。
博影は、一人小川へ水浴びに向った。
周りには誰もいない…見張り以外は、疲れをとるため、皆早々と天幕へ入っているようだった。
水浴びを終え、大きな石に腰かけ、若干生暖かい夜風に吹かれゆっくりしていると…
「博影様…」
右傍らにマリアが腰かけた。
「眠れない? 明日も早いよ、眠れなくても体を休めておかないと…」
と、ついつい見た目は博影より年上のマリナの頭を撫でた。
「もう、すぐ子供扱いして」
ちょっとだけ博影へ非難の目を向けると、マリナは、自分の頭を撫でている博影の右手を両手で取り、膝の上へ乗せ換えた。
「私、25歳ですから」
博影の手のひらにわずかに爪を立てる。
「ごめん、ごめん。ついつい、昔の癖が抜けなくて」
見た目は15歳の少年ではあるが、中身は40歳。
博影から見れば、17歳の沙耶も、25歳のマリナもあまり変わらない。
でも、真剣に博影の目を見つめてくるマリナには…少し照れる。
思わず、握られている手を引っ込めようとすると…
「博影様、だめです。もう少しくらい、私にも時間をください」
「ん? どうしたの、マリナ相談事?」
「相談事がないと、傍に来てはいけませんか?」
マリナは、時折わずかな音を立てる小川を見ながら、右手の親指で、数回博影の手のひらを撫でた。
「いや、もちろんそんなことはないよ。ただ、悩みがあるのかなと思って、ちょっと気になっただけだから」
マリナの膝に右手を預けたまま、大きな岩へ体を倒し夜空の星を見上げる。マリナも、博影と同じように体を倒し夜空を見上げた。
「せっかく同じロムニア城内にいる…けど、終わりが見えないくらいしなきゃいけないことがあって…博影様に会うのをずっと我慢してたんです。
だから…戦の前に不謹慎ですけど、今は博影様と一緒にいられて嬉しい」
そういうと、くるっと博影の方へ体を向ける。
そして、両手で握りしめていた博影の右手を胸元へ持ち上げ抱きしめた。
本当は、博影に両手でちからいっぱい抱き着きたい衝動に駆られていたが…恥ずかしすぎて出来ない。
それに、少しでも拒否されたら…怖い…
…いや、優しい博影様の事だから…拒否することはない…
そんな思いを巡らせながら、動けないでいると、博影は、右手をマリナの胸元から外して、両手でマリナの肩を抱き、胸元へ引き寄せた。
…えっ…
思わず、マリナの顔が…全身が強張る。
とっさの事と、うれしさで心臓が早鐘のように打ち鳴らされた。
自分の胸の高鳴りが、博影様に聞こえていそうで恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になる。
博影にポンポンと頭を優しくたたかれながら、撫でられる。
「戦の前…緊張するよね。
それに、港町スタンツァとガリアは、モスコーフ帝国からロムニア国を守るためには、防衛上どうしても必要な都市。
大丈夫、テュルク族の戦士たちは強いし、ダペス家・重装騎兵もいる。
かならずうまくいくと思う」
そうマリナへ優しく話しながら、まるで少女をあやすように背中を撫でられた。
「いや…もちろん、戦の前で緊張していますが…」
…というか、もちろん戦の前で緊張はしているけど…今、私が緊張しているのはそういうことではないでしょう!…
思わず、頭をあげ、下から博影の目を少しキッと睨むが…
博影は、目を閉じてマリナを優しく抱きしめ落ち着かせようと頭や背中を撫で続けている。
博影の鈍さ、ずれに若干怒りがこみ上げたが、今は…この幸せな時間が長く…少しでも長く続くようイリオスの神にお願いしながら、博影の胸元へ顔を寄せ…両手を博影の背中へ回し、強く抱きしめた。
博影としては、十分時間をとってマリナを落ち着かせた後、二人で野営地の中で3番目に大きい天幕に向った。
野営地中央にある、最も大きい天幕は族長ウルディが入り、2番目に大きい天幕は、クーノィが入っている。
もちろん、もしもの場合、博影の天幕が出来るだけ危険が及ばないようにと考えての事だ。
博影が向かった天幕の入り口傍には、門番のように狼が2頭寝そべっている。
目は閉じているが、耳は立ち、わずかな物音にも反応している。
…ただいま…
と言いながら、天幕に入ると皆そろっていた。
「ありがとう、寝床の用意もしてくれたんだね。どこでもいいのかな?」
というと、博影は藁が敷き詰めその上にシーツを引いてある寝床に入った。
薄手の毛布を引き寄せ、さっそく寝に入ると…マリナが、当然のように右隣に寝そべった。
「マリナ、まだ寝てはダメです。博影様の両隣に寝れる権利…今からジャンケンをしますよ」
そう言うと、ルーナはマリナを手招きで呼び寄せ、システィナ、ルーナ、ブレダ、マリアの4人でジャンケンを始めようとする。
…ははっ…そこまでしなくても…
と思わず、博影は言葉に出しかけたが…女性を敵にまわすわけにはいかない。
成り行きを見守ることにした。
「スル…」
不意にチェルが天幕に入ってきて、ジャンケンに加わるという。
…珍しいなチェルが…
と思いながら見ていると、ブレダとチェルの2人が勝った。
「しかたない寝るか…」
そう言うと、システィナは寝そべる博影の上にかぶさり、少し長めのキスをして離れた。
「ですね、残念ですが体は休めておかないと…」
そう言いながら、ルーナも博影に覆いかぶさりシスティナより少し長めのキスをする。
…えっ?…えっ?…
違和感なく博影とキスをする2人の様子を見て、ブレダとマリナが戸惑った。
先に博影とお休みのキスをした二人は、ブレダとマリナが戸惑っている様子を見ながらも、素知らぬふりをして目を閉じる、
システィナとルーナがいかに優しくても、ブレダとマリナにお休みのキスをすすめるほどやさしくはない。
又、博影も戸惑っている二人を見て、さすがに ゛おいで゛ とは言えない。
だが、ここでマリナが一歩前に出る。
…私…前に…博影様とキスを済ませている…みんなに見られていようと、お休みのキスくらい…
そう心に言い聞かせ博影の体におずおずと覆いかぶさる。
男性と付き合った経験のないマリナには、自分から男性に覆いかぶさるなど、下手すればキスよりハードルの高い行為だった。
博影に覆いかぶさったのはいいが、いつまでも両肘を伸ばしたままで顔を近づけることが出来ないマリナに業を煮やし…
チェルが、マリナの背中を強く押した。
「ひゃ…んっ…」
突然押され、びっくりしたマリナは、驚きの声を発しつつそのまま博影とキスをした。
いや…キスというより、おでこがぶつかりついでに唇が触れた程度だったが…
思わず唇をわずかに離し、マリナは恥ずかしさで耳まで真っ赤になり…固まった。
博影は、そのマリナの頭へ右手を添え、ゆっくりと唇を近づけキスをする。唇を離し…
「マリナ、お休み」
「お、おやすみなさい」
マリナは、急いで博影から離れ毛布にくるまった。
そして、マリナを押したチェルは、キスを真似ているつもりなのか…博影の唇周りを数回舐めて、左横で毛布にくるまった。
ブレダはその大きな体を縮こまらせ、顔を真っ赤にしているが、目は博影から離せないでいた。
「ブレダおいで…」
右隣の毛布を広げベレッタを呼ぶと、背中を向けたまま毛布に入ってきた。
…ブレダ…
と呼ぶと…しばし間を開けて…
…はい…
と小さな声がした。
…こっちを向いて…
というと、ゆっくり博影の方へ体を向けるが顔は下に向けたまま…左手の指をブレダの顎に這わせ、ゆっくり顔をあげさせる。
顔を近づけ、唇を軽く触れ合わせた。
ブレダの体は強張り、その両手は胸元で合わされたまま…
そのまま長めのキスをすると、徐々に力は抜けてきたが、その両手を博影へ回すことは出来なかった。
そのいつぱいいっぱいの様子を可愛いと思いつつ、両手で優しく抱きしめてから唇を離した。
「ブレダ、お休み」
「……お…おやすみなさい…」
しばらくすると、博影から微かな寝息が聞こえてきた。
天幕内で、頭を中央に向け、博影、チェル、マリナ、システィナ、ルーナ、ブレダの6人で円形に寝ているが…皆早々に寝付き、目が覚めてるのはブレダだけだった。
ブレダは、初めて博影とキスをして、体の疲れが吹き飛び、目がさえてしまった。
…これが…キス…か…
博影様との…キス…よいものだ…心が幸せになる…
約1時後、ブレダは、その幸せな気持ちのまま寝息を立て始めた。




