M04-04
仲間がたやすく切り裂かれるのを見て『カイラギ』たちの動きが変わった。三方に散って距離をとり、剣を交えるのを避けて、真っ向から打ち込んでくるのではなく変則的に攻撃を繰り出してくる。四方八方、上下に飛び跳ねながら剣を伸ばして手足を狙ってくる。
「速い」
久我透哉のBMD-T07は体の中心線を反射的にずらして、それをかわすが剣先がわずかに触れる。BMD-T07の腕や脚が裂けて血がしたたる。
「戦いなれしている。修、足を止めてくれ」
陣野修のBMD-Z13が心得たとばかりに、日本刀を背中のさやに収めた。両手からクナイを射出し、ワイヤーを操ってBMD-T07のまわりを目まぐるしく行き交う『カイラギ』達の動線の先をとった。目に見えないくらい細いワイヤーを引き連れてツバメのように飛び交うクナイはまるで生き物のようだった。
クナイに気を取られて1体の『カイラギ』の動きが鈍った。器械体操の選手のように回転しながら剣を繰り出していった『カイラギ』が着地のバランスをくずして後方でわずかによろめく。久我透哉のBMD-T07は後ろの目でそれをとらえて右手に握った『ライキリ』を後方に向けて水平に振り払う。肩を引くようにして腕がグイっと伸びる。
シュパッ。
BMD-T07の『ライキリ』がキーンといううなりをともなって『カイラギ』の腰を通り抜けていく。上半身と下半身を二つに分けられた『カイラギ』は工場の屋上の上を、鮮血をまき散らしながら転がっていった。
通常の日本刀なら体重をのせずに太刀を放っても『カイラギ』の硬い皮膚にはばまれて、かすり傷すら負わせられなかっただろう。が、しかし『ライキリ』は違った。高出力の超音波で振動している刃は、触れるだけで豆腐でも切るかのようにやすやすと切り裂いた。
『カイラギ』の1体がクナイを操る陣野修のBMD-Z13に向かって走る。途中でクナイのワイヤーを切り落として、なおも走る。BMD-Z13の手前で腰を落とし、滑り込むような姿勢で剣をふってBMD-Z13の足元を狙う。陣野修のBMD-Z13は縄跳びでもするかのように軽くジャンプしてそれを飛び越えた。攻撃をかわされた『カイラギ』は滑り込んだ姿勢のまま十メートルほど進んで止まった。
ゆるりと立ち上がる『カイラギ』を横目でとらえながら、BMD-Z13は、切れたワイヤーを巻き取り、背中に収めた日本刀をゆっくりと引き抜いて向かい合った。
キーン。
日本刀が放つ超音波が周囲に響きわたる。それはBMD-Z13のランクA装備『マサムネ』が発動した音だった。
ジュバッ。
十メートル手前にいたはずのBMD-Z13の体が『カイラギ』の向こうにあった。『カイラギ』は剣をかまえた姿勢で立っている。
パキーン。
『カイラギ』の剣が折れて屋根に突き刺さる。そのわずかな衝撃で『カイラギ』の右上半身が斜めにズレる。そのまま『カイラギ』の体は左肩から右腰へとすべり落ちた。
残った『カイラギ』1体は戦意を失い、2機のBMDに背を向けて逃げていった。
BMD-Z13は『マサムネ』を一振りして『カイラギ』の血をはらい、背中のさやに収めた。




