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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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60/113

M03-06

「ドローン。コンタクトポイントに到達。中継ブイ投下」

園部志穂そのべしほは準備を進める。

「超音波通信再開。海中映像をモニターにまわします」

「A01より、本部へ。敵『カイラギ』を目視にて確認。約1分で接触します」

「本部、了解。BMD各機、散開。AIの指示したルートにて情報収集を開始。赤外線サーモカメラを併用してください」

「A01了解。カメラスイッチON。問題ありません。映像を転送します」

「T07了解。カメラ、問題ありません。散開します」

『Z13了解。指示どおり』

BMDよりの返答に合わせて、映像が次々と送られてくる。園部志穂はデータをAIに回して、情報解析を進めた。

 ちょっとした判断ミスが死につながる世界。緊迫した空気がオペーレーションルームを支配する。自分が暮らしている日常とのギャップに、山村光一やまむらこういちの緊張は必要以上に高まっていった。

「あのー。トイレにいきたいのですが」

陣野真由じんのまゆはあきれた。『フェイクスキン』を身に着けたままの間抜けな山村光一の姿を見る。

「『フェイクスキン』を装着した状態でトイレにはいけないわ」

「いや、しかし」

山村光一の額には脂汗がにじみだし、事態がひっ迫していることを告げていた。

「しかたないわ。そのまましなさい。『フェイクスキン』が吸収します。幸いここには園部さんと私しかいません。園部さん。このことは極秘よ」

「了解です」

園部志穂は口を手で隠して笑いをこらえた。その時、BMD各機から応答が入った。

「A01了解でーす」

「T07了解しました」

『Z13了解』

「戦闘態勢だからマイクをオフにできないのよ。軍の戦闘ではよくあることです。それを想定して『フェイクスキン』はつくられているのだから早くしなさい。大人でしょ」

山村光一はしぶしぶ陣野真由の指示に従った。臭いはしなかったが、股間に温かいものがジワリと広がっていく。この年でお漏らしを強要されるとは。この感覚は一生忘れないだろうなと山村光一は思った。

 戦闘対象が未知の場合、訓練された大人の兵士でも極度の緊張状態におちいる。まして、訓練を受けたとはいえ『バイオメタルドール』のパイロットは中学生なのだから、精神的的なプレッシャーには弱い。軍事行動でのミスはそのまま生還確立を低下させる。山村光一には悪いが、緊張をほぐすためには良い結果になったと、園部志穂は感じていた。

 オペーレーションルームのAIは3機の『バイオメタルドール』から送られる映像情報を合成して、モニターに『カイラギ』の立体画像をつくりだしていく。体は巨大だが33対ならぶ呼吸器官はそれほど大きくはなく、解体型の2倍程度だった。これなら『バイオメタルドール』に搭載した小刀でもだいじょうぶだろう。赤外線サーモカメラの解析でも特異な熱源は感知されなかった。

「本部より、BMD各員へ。情報収集終了です。予定通り、攻撃を開始してください」

園部志穂はヘッドセットに向かって指示を出した。

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