5話
大永元年 1521年 年始 高天神城
大広間に俺と俺の傅役の原能登守友胤と原美濃守虎胤、横田備中守、一門衆兼重臣の山縣淡路守に福島越後守、福島常陸介親子、福島助春、福島越前守、忍び衆の棟梁として望月出雲守が集まっていた。駿府に行っていた親父の命で集まっておくように言われたからだ。
「殿がお帰りに成られました」
傅役の原美濃守虎胤が声をあげた。
少しして、歩く音が聞こえてきた。段々と近づいてきて部屋に入ってきた。
「皆、ただ今、帰ったぞ」
皆でお帰りなさいませと言い頭を下げた。
「やはり甲斐の今井氏の救援を命ぜられたわ。しかも今川家は兵を出さないそうだ。当家以外は救援へは自由参加だそうだ。」
父上はニヤニヤと笑いながら前置きも無しに駿府に呼ばれた要件を言った。
「ずいぶん面白いですね。今井氏を助ける気があるのか、無いのか。言われるがままに受けたのですか?」
俺は最初は驚いでいていたが後半は親父と一緒にニヤニヤしながら親父に質問をした。
「そんなわけあるか。盛大にゴネてやったわ。甲斐なんて山国に今川家が兵を出さないのに救援なんてできるかってな。攻め辛い土地だし地の利は向こうにある。それに元々、武田は甲斐の守護。向こうに正当性があるってな。」
その時の事を思い出してるのか、父の笑を堪えられないのか肩が揺れている。
「こっちが此処までゴネるとは考えていなかったみたいで隠そうとしていたみたいだが驚いているのがバレバレだ。主家として、今川家の方が福島家より上位の存在であると国人衆に対し見せたかったのだろう。駿河の国人衆のほぼ全てが儂に甲斐への出兵を命じる時に同じ広間に居たからな。」
周りから息を飲む声がいくつか聞こえてきた。
「ほう!?、それは真ですか?」
思わずと言った口調で常陸介が口を開いた。
「ああ本当の事だ。周囲の者は今川頼もしからずと思っただろう。あの場で儂は、氏親に対し、主家として頭を下げていたが周りから見たら儂に今川が振り回されてる様にしか見えなかっただろう。」
常陸介が顔を真っ赤にして頭を下げた。
「息子が失礼をいたしました」
越後守も頭を下げた。
「構わん。此の評定に呼んでいる者は当家の重臣だ。信用している。」
親父は全く気にしていない様な口ぶりでそう言った。
事実全く気にして無いのだろう。
「それで、どの様な条件を出兵に際して要求したのでしょうか?」
俺が今の空気を断ち切る様に話を最初の話の内容に切り替えた。
「全部で2つあるのだが一つめが今回の出兵で切り取った領地の自由裁量権だ。要は当家の好きに扱って良いということだな。
2つ目が今回の出兵でかかった、出兵の所為で手に入らなかった資金の負担を2割ほど今川家が負担する事だ。今回動員する兵力は総勢で2万ほどになるだろう。明日、陣触れを出して、2月に入ってから甲斐入りということになるだろう。予定では、10月一杯までの予定だが、延びる可能性もあるからな。相当な量になるだろう。」
おそらく2割を今川家が負担したとしても当家以外の家で資源が大量に不足することになるだろう。当家と違って他家は兵力が農民兵だからな。農繁期での出兵で出兵後も資源が不足する事になる。結果、年貢が無いのに重税を課すことになるだろう。そこで当家が不足している資源を無償であげたら面白い事になるのではないだろうか?
それを親父に提案したら
「ふむ。其れは良いな。遠征の大将として当家が一番多くの兵力を動員する。当家の動員兵力は今川本家の動員兵力の倍はあるからな。それだけ動員しなごら遠征後資源まで融通してやる。当家の財力を他家に見せつける良い機会でもある。この先のことを考えて恩も売れるしな」
「今回、共に甲斐へ遠征に行くのはどの家たちでしょうか?」
俺は、何処まで味方を増やせるのかが気になり質問した。
「大きな所だと当家と、先に挙げた駿河の庵原氏と岡部氏。同じく駿河東部の富士郡の富士氏、庵原郡の関口氏。
遠江では、飯尾氏と瀬名氏、堀越氏、井伊氏、遠江朝比奈氏だ。遠江朝比奈氏の朝比奈泰熙の参加は今川家からの命令のようだ。今川家が出ない代わりのようだな。どこの家にも大きな手柄を立てさせるつもりはない。今川に忠誠を誓っていて今川家内で影響力を強める為に参加するのであって、此方を利用しようというのが見え透いていたりと後の事を考えると邪魔になるからな。」
朝比奈氏は駿河朝比奈氏と遠江朝比奈氏の2家があって両家ともかなりの権力を持っている。俺が産まれてから福島家が頭一つどころか三つ四つ飛び抜けてきているが、其れ迄は福島家と朝比奈家、三浦家が今川家内での3巨頭の様な存在だったのだ。当家が大きくなれば自然的に朝比奈氏の影響力も落ちるということで此方側に着き、岡部氏などはその地位を奪おうとしているみたいだ
「目障りな。しかし、大物の殆どが兵を出すのですな。出さないのは今川家と三浦家、駿河朝比奈家くらいでしょうか?東三河の兵は動かせませんしね」
「松平や戸田がこの隙を狙ってくる可能性はあるからな。遠江が手薄になった隙を突いて電撃的に東三河を狙って来ないとも限らない。が松平が攻めてくる事はないな。当主の信忠は暗愚で一門はおろか子侍にも愛想を尽かされ城に出仕しない者がいるようだからな。このまま行けば前当主と家臣達に強制的に隠居させられるんじゃないか?」
史実で実際に強制的に隠居させられるのを知っている俺からすると、此処まで予測できる親父に少し関心した。正直親父の能力には期待はしていなかったのだが全然違かったようだ。
「武田への調略はどうなっている?」
親父が此処まで何一つ言葉を発していなかった望月出雲守に現在の進捗状況を聞いた。
松寿丸は玄広恵探のことです。この時はまだ、僧籍に入っていないです。なので幼名の松寿丸はオリジナルです。調べたんですが、中々見つからなかった為こうなりました。
弁天丸も象耳 泉奘の幼名でオリジナルです。
福島越後守はオリジナルです。
福島常陸介の父親が、福島越後守です。
福島某しかわからなかったのです適当に付けました。
福島越前守は一門衆でオリジナルみたいな感じです。
福島正成と同一人物の可能性があるみたいですが、この小説では別人です。
福島助春と福島正成も別人です。福島介春には、子供が氏親に嫁いだ娘しか居なかった設定で同じ一族である正成が、介春の領地を継いだ形です。
介春の歳は50過ぎです。




