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144.生徒会

生徒会室にはまだ校内にいた6人が報告会について、どうするかの話し合いの末一つの結論が出ていた。


「えっと……それじゃあ、基本的には1週間ずらす形で。もし、難しそうなら校内便りとリモートで伝えるってことを基本方針にしましょう」

「オッケー」


マオがそうまとめると、そこにいた全員が賛成した。


「じゃあ、今日はこれで解散でいいかな」

「うん、みんなお疲れ様〜」


椅子を持ち上げて片付ける音が教室に響く。


「とりあえずの方針、決まってよかった」

「うん、アリサのおかげ。ありがとね」

「別に。私は特になにも」


二人は立ち上がり椅子を片付けながら話をしていた。アリサの冷静な意見は、行動の指針となり、会議の中心にいつもなっていた。あたふたしがちなマオより、アリサが生徒会長っぽいと言われるのはそういうところも所以である。


「二人とも急に呼んでごめんな」

「ううん。こういうことはなるべく早く決めないと困るし」


るいの言葉に、アリサが静かに笑って返す。


「まぁ、ぶっちゃけ二人がいないと会議纏まらないから帰る前で良かった」

「二人って……私はなんていうか……アリサみたいに上手く纏めたり意見したりはしてないから……」


マオは気まずそうに頬を掻く。アリサの方が生徒会長っぽいよね、という空気はマオにもしっかりと届いていたのだ。

そんなマオの様子を見て、アリサが口を開こうする前に、るいが口を開いた。


「何言ってんだよ。五十嵐は生徒会長なんだから、いてくれないと締まらないだろーが。それに、いつも生徒会行事のこととか、誰より真剣に考えてくれてるだろ」


るいの思わぬ真っ直ぐな言葉にマオは驚いて、目を丸くした。アリサは小さく笑って、言葉を付け加えた。


「青山くんの言う通り。マオがいないと、私たち生徒会は始まらないでしょ。もう少し自信もっていいと思うけど」

「青山くん、アリサ……。私もっと学校も生徒会も盛り上げられるように頑張る」


マオは、楽しげに頷く。マオは元々自信はないものの、頼りにされることは嫌いではなく、むしろ嬉しいのだ。


「あっ、雪村。別に、雪村が真剣に考えてないとかは思ってないからな……」

「別に、そんな風には思ってないから大丈夫だよ」


るいがなぜか頬を少しだけ赤くしてフォローをする理由が、アリサには分からなかった。


「それより、生徒会を盛り上げるって意味で報告会はどんな感じにしようと思ってるの?」

「そうそう、青山くん。私たちも一応聞いておかないと。準備とかあるし」


二人の期待を寄せるような視線にるいは態とらしい表情を浮かべる。


「ふっふっ……今回は寸劇をやろうと思うんだ」

「えっ……本気?」


冗談まじりに言っていたことがまさか的中していた。


「そう、ファンタジーパロディで勇者一行に扮した生徒会が次々起こる問題を解決していくんだ」

「へっ、へぇ……」


あまり乗り気ではないマオに構うことなく、るいの熱量は上がっていった。


「これで、生徒会に入りたくなる人がどんっと増えるはずだ」

「それならいいんだけど。1年生が入ってくれないと行事の運営が厳しい」

「うんうん。先輩たちが抜けてから、カツカツだよほんと」


生徒会は現在2年生16人。そのうち生徒会専任は9人で7人は部活と兼任している。兼任しているメンバーは基本的に行事の時に手伝うというような役目だ。

1年生は球技大会が終わって3名は来てくれていたが、全員部活兼任。専任のメンバーがいないと、学校行事そのものの運営の危機だ。


「生徒会は部活紹介の掲示板で勧誘とかできないからね。ここが勝負」

「うん……。青山くん、私たちにも出来ることがあったら教えてね」

「おう! 二人には大事な役回り用意してるから」


るいがニヤニヤと笑っている。


「何その笑顔。あんまり変なことはしないよ、私」

「私も同じだよ」

「大丈夫心配すんな! ただ、普通にメインの役をやってもらうだけだから」


るいに台本を手渡される二人。じっと読んでいく。


「ね、ねぇ。結構本格的じゃない?」

「そうだね。割と普通の演劇くらいはある。特に、私とマオのセリフ量がずば抜けてる」


生徒会に与えられている時間のほとんどを消費しないと足りない量の寸劇の長さに少しだけ戸惑う二人。


「そりゃあな。会長と副会長がガンガン出てくれないと、宣伝にならないだろ?」

「うぅ……。わかった、頑張るよぉ……」


マオは観念し、項垂れながら声を漏らした。


「これくらいのセリフなら明日には覚えられるから、明日から早速、セリフ合わせとかしよう」

「だね。やるからには、完璧にやりたい」


アリサの言葉に、マオは奮い立ち力強く頷く。


「ちょっと待て、明日から? 流石に早すぎだし、そんな早く覚えられねぇって」


二人のやる気は嬉しいが、あまりのやる気に今度はるいの方が押され気味だ。


「私たちに、こんだけセリフ割り振ってるんだから、青山くんもそれくらいは覚えてきてもらわないと」

「うん。青山くんのセリフ量だったら1時間くらいで覚えられるでしょ」

「1時間!? 無理無理無理。俺とお前らじゃ脳のレベルが……」

「つべこべ言わない!」


マオはるいの弁明に聞く耳持たず、るいの持つ台本を軽くとんと叩いた。


「はぁ……しゃあねぇか……」

「ふふふ。大丈夫、私たちも付き合うから」


アリサの大人びた静かな笑顔に、るいは心が少しざわついた。理由もわからないまま、頬はほんのりと熱を帯びていく。


「よーし、それじゃあ、みんなで生徒会を盛り上げて行こう」


マオが真っ直ぐに拳を突き上げ、勢いよく声を上げた。


「うん、頑張ろう」

「おう、俺も全力で頑張るぜ」


真剣さと楽しさの入り混じった三人の声が、生徒会室に明るく響き渡っていた。

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