60話 決戦前夜
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ラディアント第一王子が大臣の家に襲撃をする、と決めて二日が経ち、その夜。
明日。その間、ずっとベッドに横にならないといけない。
戦っているのを外野で指咥えて見ていないといけないが、そんな事できる訳がないし黙って見ている自信がなかった。
ベッドから這い出て着替える。
服は部屋の机の上に綺麗に畳まれていた。
それを着用して、傷のある胸をなぞる。まだ痛みはあるが、動けないわけではない。
この程度なら大丈夫だろう、と判断して窓から外に出ようとするがその前に扉が開かれた。
ガチャリ、と開かれた扉に思わずカインはそちらの方を見てしまう。
安静にするように命じられているからこそ抜け出そうとしていた手前、誰にもバレてはいけないと分かっていたが、こうもすぐにバレるとは思わなかった。
誰が入ってくる、と警戒しているとその人物を見て目を丸くする。
「あなたは……」
「お久しぶりです、カイン様」
イリスイス様との共同特訓の時にお世話になった側使い、アンシュリーだ。彼女との接点はそこだけで、それ以上の深い関わりは全くといっていいほどない。
なのでどうしてここに来たのか、その理由が全く分からなかった。
「どうしてここに?」
「ティシア様が、どうせ抜け出そうとするからカインさんを見張って欲しいと」
行動がバレている。ティシアに読まれているとは思っていなかった為、この場をどうすればいいか考える。
既に服を着替えて外に出ようとしていた為、誤魔化すことは出来ない。
もう実力行為しか残っていない、と薄々ながら感じていた。
眠らせよう、と行動に移ろうとしていたが先に制されてしまう。
「私は別にカインさんを止めるつもりはありません」
その言葉に思考が少しばかり停止する。
止めるつもりはない、なら動いても構わないという事だ。なら、彼女がここに来た理由は見張りの他にあるはず。
それがどんな内容なのかを待つ。
「その逆、私はフィラルシア様をお助けしてほしいのです。側使いは主の側で補佐をします。しかし、主がいない今私達に出来る事は無事でいることを願うだけ。それはとても歯がゆいのです」
彼女は悔しそうに言う。手を強く握りしめ、両手がプルプルと震えている。
「だから私は出来る事をします。これを」
懐から取り出した物は短剣だ。鞘が豪華な施しをしていて、一目で見ても高価な物だと分かった。
そんな物を渡されると、紛失したり壊したりと考えてしまい逆に返してしまいそうだ。
「これは?」
「ティシア様の持ち物です。残ると決めたらしく、助けに行けない私の代わりに持って行って欲しい、と」
そういうことか。
ティシアが彼女に見張りを頼んだのは、これを渡すためだ。それに、彼女も協力的。これほど頼もしい味方はいない。
それなら都合が良い、とばかりにある物を注文する。
「少し頼みたい事があるんだ。いいか?」
「はい、どんな事ですか?」
「これに魔力をありったけ注いでほしい。それと、欲しい物も」
カインが懐から取り出した物、それは野球ボールほどの大きさをした魔石だった。
大臣は今の状況っが予想外、と言っても良かった。
フィラルシアが誘拐された時に彼は何も知らず、いつも通りの職務をしていた。だからこそ、誘拐されたと聞いた時には耳を疑ってしまう。
もし誘拐して真っ先に疑われるのは大臣だからだ。自分の保身のためにも、何故誘拐されたのか情報を集める。
誘拐を画策したのは騎士の数人、そのほとんどが捕まっていた。
誘拐の計画というにはあまりにも雑で突貫工事のような杜撰すぎて、我慢できなくて功を焦った騎士を排除しようとした時に派閥の貴族からとある要請が入る。
派閥の貴族達が何者かに襲われる、というものだ。
真夜中に押し入り、脅される。フィラルシアを探す手口に、すぐにラディアントの周囲の人間が関わっていると察するのは簡単であり、さらに真夜中に襲撃できる芸当を持つのは一人しかいない。
すぐさま尾行させた尻尾を掴めず、その間に何人も派閥の貴族が襲われて派閥という関係にヒビすら入ってくるほど。
襲われると分かっているなら、誰も派閥にいたいとは思わない。
可及的速やかに対処する必要があった。レストに影の王を殺害するように命じて数日、倒したという報告を持ってきた。
それを聞いて、大臣は天に昇るほど浮かれる。
息子を殺され、大事に大事に育ててきた計画を台無しにされて殺意が振り切れるほどに殺したくてたまらなかった。
そんな相手が死ぬ。それが喜ばずにはいられない。
自分の中で祝いだ、と大臣は秘蔵の酒を飲みつつ喜びの余韻に漬かっているととある情報が耳に入り込み酒の入ったグラスを思わず叩きつけてしまう。
濃淡な赤いカーペットがさらに赤く汚れ、グラスの壊れた破片が散らばる
「あの腐れゴミはッ!!!!」
フィラルシアの誘拐に、レストが関わっている恐れがある。そんな情報が耳に入り込み、大臣は怒りですぐに沸騰するように顔を赤くした。
「今はどこにいる!!」
「あなた様のお家にです。帰っていくのが見えました」
「儂の家か!? アイツめ、どこまでも私を邪魔すればいいんだ。やはり、生まれた段階で殺しておけばよかった」
両手で顔を押さえ、怒りのあまりに手に力が入りすぎて顔が歪む。
「どうしますか? 何やら騎士団があなた様の家に押し入るという計画も耳にしていますが」
「なんだと!?」
その情報すら聞いた事がなく、寝耳に水であった。
上手く隠していたのだろう。大臣はラディアントへの憎しみがさらに増すばかりだ。
騎士団をラディアントが使う以上、騎士は使えない。
なら、使えるのは一つだけ。
「私兵だ。明日にでもレストを殺せ」
「かしこまりました」
「あれは、抜け出すだろうな」
カインを目を覚まして翌日、ラディアント第一王子は独り言を言う。
「なら止めないんですか? 療養するように命じたのでしょう?」
その独り言を側使いの一人が聞き取った。
独り言だったから反応するとは思わなかったと思う手前、そういう事を伝えていないから仕方がない。
「止めてもあれは無駄だ。それに、あれが動くというのなら動く前提で行動したほうがいい」
「ならどうしますか?」
「彼らを呼び戻しているんだろう? 大丈夫だ、上手くいく」
それはカインが目を覚まして翌日、一日目の出来事であった。
互いの思惑が絡みつき、戦場は二日目夜に引き起る。
昨日、いつも通り投稿したはずだったんですが、投稿出来てなかったようです。すみません。
明日、二話投稿しようと思います。最初は昼辺りで投稿できればいいな、と




