白昼の襲撃
カンカン、カンカンカン。
材木で組んだ足場の上に器用に立ってハンマーを振るうフィレールを下から見上げ、ネフェロは担いでいた材木を下ろしながら呼びかけた。
「窓作るー?」
「作るのはいいけどよ、ガラスがねぇだろが」
釘を打ち終えて、フィレールは足場の上から飛び降りた。
壁の出来具合を手を触れて確認しながら、彼は床の上をゆっくりと歩く。
傾きがないかどうかを、足裏の感触で確かめているようだ。
「2軒目ともなると早いな。自分でもびっくりだ」
「慣れって凄いねェ」
「しゃげー!」
ネフェロの言葉の後に続いた奇声に、フィレールは片眉を跳ね上げて声のした方──ネフェロの後方に視線を向けた。
丸々と太った大きな鳥が、尻をぶるぶると振りながら佇んでいた。頭と翼が異様に小さく、嘴が長い奇妙なフォルムの生き物だ。
ルビーのようなまんまるの眼が、ネフェロとフィレールの姿を映している。
げ、とフィレールは呻いて、ハンマーを構えた。
「何処から来やがったんだ」
「森からじゃない?」
材木を手離し、剣を抜くネフェロ。
2人に敵意を向けられていることが分かるのか、鳥は嘴を大きく開いて鳴いた。
小さな翼を広げて、足の爪で地面を引っ掻く仕草をする。
「しゃげー! しゃげー!」
「……凄いガラガラ声」
ぷ、と小さく噴き出し、ネフェロは鳥との距離を1歩詰めた。
「カラスとかでもさァ、たまにいるよね。すっごいダミ声の奴」
「暢気に観察してる場合かよ」
注意深く鳥の動きを見つめながら、フィレールは徐々に後退りした。
ちらりと天幕がある方に視線を向けて、言う。
「アノンの奴を呼んでくる。お前は家壊されねぇようにこいつのこと見張ってろ」
「りょーかーい」
「しゃげー!」
鳥が叫び、走り出す。
見た目からは想像も付かないような素早い足捌きで、肉の弾丸のようにフィレールに向かって突っ込んできた。
「!」
その場を横跳びに離れるフィレール。
どがん、と派手な音を立てて、鳥は建てかけの壁に頭からめり込んだ。
木をへし折って、丸い身体が壁に半分ほど飲み込まれる。余程勢い良くぶつかったのか見事にすっぽりとはまってしまったようで、突き出た尻と翼をばたばたと動かして壁から抜け出ようともがいている。
「あーあー。穴空いちゃった」
「しゃげー!」
「あはは、こうやって見ると愛嬌あるかも」
ネフェロは剣を鞘に戻し、鳥の尻に掌を触れた。
「今のうちに行っておいでよ」
「……ああ」
フィレールは眉間に皺を寄せて、ちっと舌打ちした。
また1から作り直しかよ、と口内で小さく呟きつつ、ハンマーで自らの掌を叩きながら天幕へと向かう。
「おや、どうなさりましたのん。そないな怖い顔して」
途中ですれ違ったイースに尋ねられて唇のへの字型を正すが、眉間の皺は取れないままだった。
「血眼者が出たんだよ」
「はあ」
生返事を返すイースの横を通り過ぎ、彼は溜め息混じりに呟いた。
「ったく、ロクなことしやがらねぇな。あいつらは」




