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エピローグ

 茶会から一週間後。

 王立ローゼンベルク学園の廊下。



 

「リズ様のこと、聞いた?」

「部屋から一歩も出てないとか」

「転校するって話も」


 学園では、今日もあちらこちらで噂話が咲いている。


 ヘンリーはそれらを素通りし、中庭へ向かう。

 

(実態は、『あれから学園に来ていない』というだけなんだがな)

 

 噂に投じられた一滴が、波紋のように広がっていく。

 

「あんな人だと思わなかった」

「わざと悪い噂を広げてたんだろ?」

「それに比べてさ……」


 話題の中心が移る。

 

 

 

「マリエッタ様ってとても怖い人なんですって」


「先週の茶会はすごかったな」

 

「実は全部わかってたらしいぞ」


「証言を固めるために泳がせてたって」


「張り合おうとすることが間違いだったのよ」


 散々な言いよう。


 ヘンリーは吹き出しそうになるのをこらえる。



 

 中庭。


「よう、有名人」


 蔓薔薇が這うパーゴラの下。

 本を読んでいたマリエッタは、顔をあげる。

 

 マリエッタはため息をついた。


「揶揄うのはやめてください、ヘンリー」


「事実だろ」


 ヘンリーはマリエッタの隣に腰を下ろす。

 

「ほら、あの人が」

「沈黙の令嬢……」


 遠巻きにひそひそと話し合う生徒達。


「内容は変わったが、話題の中心にいるのは変わらないな」

「……困りましたね」

「舐められるよりはマシだろ」

 

 ヘンリーが笑う。


 マリエッタは本のページをめくる。

 

「リズ様が自らの行いを晒すことも含めて、私が全てを仕組んでいたかのように言われているようです」


「違うのか?」


 マリエッタは一度ヘンリーに目線をやった後、再び本を見る。




「さあ、どうでしょう」




 その表情は相変わらず穏やかだった。



 

「噂もあながち、嘘とも限らないな」


 ヘンリーは肩をすくめる。



 

 学園一恐ろしい女は、滅多に怒らない。

 声を荒げない。

 感情を表に出さない。



 

 ——何を考えているのか、誰にも分からない。

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