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第三章:今も、好きだったことだけは
秋が深まり、冷たい雨が降る帰り道。
彼の舞台のチラシが駅に貼られていた。ひとりで観に行った。ステージの上の彼は、まぶしかった。少し痩せたけれど、目は生きていた。
舞台が終わり、ロビーで彼の姿を見つけた。でも私は声をかけられなかった。
今さら、何を伝えられる?
「頑張ってるね」
「おめでとう」
「ずっと好きだったよ」
どの言葉も、彼の人生にもう必要ない気がした。
でも――それでも、私は、心の底から思っている。
あなたの夢が叶って、本当によかった。
私は、応援したかった。心から。
……できなかったこと、ずっと、後悔してる。
彼が私を忘れてしまっても、思い出さなくてもいい。
それでも私は、あの季節の私に言いたい。
「本当に、彼のことが大好きだったんだよね」って。
それだけは、今も、これからも、消えない真実。




