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第二章:すれ違いの中で
夏の終わり、蝉の声が遠ざかっていくころ。
彼の夢は少しずつ形になっていった。小さな劇団で主演が決まり、稽古に打ち込む彼の姿を、SNSや共通の友人から知るようになった。直接ではなくなったのが、いつからかもう覚えていない。
「最近どう?」という私の言葉に、彼は短く「忙しいけど楽しい」と答えた。
それが、最後の会話だった。
私の「応援してるよ」は、もう彼には届いていなかったのかもしれない。
本当の私は、彼の苦しみに気づかなかった。疲れた声も、不安な沈黙も、「夢があるから大丈夫」って勝手に解釈していた。
彼が「分かってもらえない」と思ってしまったのは、私のせいだったのかもしれない。
彼の本当の苦しさに、私は耳を澄ませなかった。ただ、言葉で埋めようとしただけ。
あのとき、抱きしめればよかった。何も言わず、ただそばにいればよかった。
でも私は、黙る勇気すらなかった。




