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のんびり冒険者生活の手引書―猫を召喚したら家を追い出されました―  作者: 沢野りお
いつもの日常

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相棒との出会い

王都から馬車で一日程度かかる距離にある、このダンジョンに潜るのは初めてではないが、中層階にある冒険者泣かせの洞窟エリアだけは慣れることはない。

たいてい、ダンジョンと雖も中は灯り苔などでほんのりと明るく、灯りもない真っ暗なエリアなどが存在するのは高難易度ダンジョンぐらいなものだ。


なのに、ここは初級者御用達のダンジョンのくせに、暗闇の中で罠がいっぱいある洞窟エリアが幾つか存在する。

ベテラン冒険者でさえため息を吐きたくなる、ダルいエリアである。


俺たちも先ほどようやく問題の洞窟エリアを抜け、次のボス部屋アタックまでダンジョン攻略を進めるつもりである。

何度かこのパーティーには同行していたが、今回は新しくメンバーになった若い冒険者との連携の確認、実力試しがメインのため、そこそこの魔物が出没し尚且つドロップアイテムが美味しい中階層を周っている。

当然、それなりに稼ごうと思えば、魔物を倒した後に手に入るドロップアイテムを多く持ち帰ることが重要となる。


そこで、ソロ冒険者で荷物持ち(ポーター)の俺が呼ばれたわけだ。

俺はウエストポーチ型のマジックバッグから木の枝みたいな肉の細長い塊を出すと、器用にナイフで薄く切り鍋の中へとボトボトと落としていく。

香草を染み込ませた干し肉だが、中の肉質は柔らかくキレイなピンク色だ。

そこへ、ダンジョン内で採取した出汁がよく出るキノコもポイポイッと放り込む。

俺や冒険者の野郎どもなら固い黒パンに干し肉でいいのだが、かわいいにゃん太郎には美味しい物を食べさせたい。

ついでにこいつらから食事代もブン取るつもりだ。


「ほら、メシができたぞ」


涎を垂らしながら俺の手元を見ていた束の間の仲間たちに、鍋をクルリとスプーンでかき混ぜてみせた。












「なぁ~ん」


「ん? 美味かったか?」


ペロッと口の周りを舐めて「ごちそうさま」と挨拶するようなにゃん太郎の頭をナデナデした後、使った食器などを片付ける。

セーフティーエリアには水場とトイレが用意されているので、たいへん助かる。

他の奴らは武器や防具の手入れや召喚獣との触れ合いタイムだ。

俺みたいに召喚獣をずっと連れまわしているのは滅多にいないからな。

ほとんどの人は必要がなければ、影の中に召喚獣を潜ませておく。


晩メシの片付けが終われば、今日の俺の仕事はほぼない。

あとは見張りの時間に起きるだけだが、当然朝メシも俺に作ってほしい面々は俺の見張りの順番を一番最後にしていた。

うん、早く起きて見張りをしながら朝メシを作ってやろう……いい匂いで安眠妨害してやる。


自分のテントにもそもそと這って入り、ふうーっとひと息つく。

腕の中で眠そうにムニャムニャしているにゃん太郎を見て癒された。


俺の相棒、召喚獣のにゃん太郎は、何もできない魔獣もどきだった。

十五歳の成人の儀式に父親が治める領地の教会で召喚の儀式を受けた。

兄二人は王都の教会で儀式を受けたのだが、跡継ぎでもない三男坊ともなればそんなものだろう。

跡取りの長男とスペアの次兄、俺は余りモノだと自分でも理解していたから、幼いながらも自分の進路をあれこれと考えていた。

領地経営の補佐、文官、騎士は貴族の三男、四男が考える就職先だが召喚獣によっては門が閉ざされる。

そうなったら商人、土地を貰って農家が無難だ。

職人はガキの頃から修行しなければモノにならないし、冒険者なんてモノは最後の手段としても貴族育ちには悪手だ。


しかし、それも全ては召喚獣次第。

父、長兄が馬系の召喚獣で次兄は狼系の召喚獣だ。

そして、少し緊張して踏んだ魔法陣から召喚された俺の半身は……神官どもが誰も見たことのない獣――猫だった。







「こ、これは」


震える指でソレを指した神官は目を大きく見開いて顔を真っ白にして呟いた。

――それは、何だ? と。

俺はきょとんと自分の足元にある小さくて灰色の毛玉を凝視していた。


「……かわいい」


なんか、ふわふわとした毛がもぞもぞと動いている。

ピクピクと頭の上にちょこんとある二つの耳が動くと、胸がキューンとなった。


「!!」


その獣の顔を見た瞬間、俺の全身に稲妻が走った気がしたんだ。


「か……かわいいーっ!」


これがにゃん太郎と俺の出会いだった。



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