これから
教室にいた人はもう夕食を終えたらしく、呑気にトランプなどやっている。せっかちな俺は、カレーとパックのご飯を同時に温めながら、もやしの袋を開けた。
「どっちがババだと思う?」
「右……いや、左だ! よっしゃー!」
ババ抜きをしているようだ。イオリが負けて悔しがっている。温めてる間は俺も混ぜてもらおう。
……全敗だった。ババ抜きは運のゲームだと思っていたが、マスターとサトルのどちらかがトップを常に取っていたので、きっと実力も絡むゲームなんだろう。ちょっと冷めたカレーを食いながらそんなことを考える。
「ここで……革命する」
「残念でしたね。革命返しです」
「じゃあ俺が革命返し返しだ!」
ババ抜きから大富豪になったか。サラはいつの間にか、夕食を終えて参戦している。しかしサラは意外と攻撃的だな。タケとツカサはまあ想像通りだが。
……俺もやりたくなってきた。急いでカレーをたいらげると、食器を洗って勝負に行く。
「ここで革命だ!返せなきゃ俺の勝ちだぜ!」
「……革命です」
「えっ」
タケがうかつなことを言ったせいで負けた。これで、サトルが六連勝だ。運も凄いが、いざという時の読みが冴え渡っていた。ババ抜きでは互角だったマスターも全く敵わないようだ。
今日はこれでトランプ終了となった。
「いやーしかしサトルは強えな。大富豪じゃ一回も勝ったことねえぜ」
「将棋だと逆に私があなたに勝ったことはありませんね」
タケとサトルが話している。他の人も好きなことを始めている。俺もアトリエに戻ろうとすると、マスターが言った。
「せっかくみんな集まったことだし、これからのことでも話すか」
みんなの動きが止まる。
「このまま地下で生活するのも悪くはないが、それでは限界がある。今すぐではなくてもいいが、
解決策を考えなければならないだろう」
確かに、このまま一生外に出れないのは問題だ。
しかし、いい方法はそんなすぐに思いつく訳ではない。みんなも同じように考えているだろう。
「私たちは国にとってみれば法律に従わない犯罪者集団です。表立って活動することはできません。政府を動かすにはデモなどをするしかないですが、デモをする必要がある対象者はみな捕まってしまいました」
サトルが言うことはごもっともだ。ごもっともだが、それでもどうにか反抗しなければならない。マスターがサトルに言う。
「なら、少人数でもできることを探すしかないだろう。例えば……権力者を人質に取るとか」
マスターが無茶苦茶なことを言い出す。さすがに俺は反論する。
「いや、それはまずい。第一、人質を取ったところで政府が法律を変えるとは思わないぞ」
「じゃあ代わりの案が思いつくのか?」
そう言われると弱い。
「でも、俺も人質は反対だ。もっといい方法が絶対あるだろうから、ちょっとの間考えるしかないだろ」
タケが助け舟を出してくれる。みんなもその発言に同意だろう。
「とりあえず焦ってもしょうがないよ。ここはしばらくは見つからないだろうから、ゆっくり考えようよ」
イオリが言う。
「……確かにそうだな。今日はもう遅いし、みんな寝よう」
マスターがそう言ったので時計を見ると、いつのまにか11時を過ぎていた。みんなが寝床の準備をしだす。俺も、明日は絵を売らないと少しまずいので、早く寝ることにした。風呂は明日の朝入ろう。