調査
目が覚めたのは朝五時だった。ここまで早く起きなくてもよかったが、二度寝は怖いので起きていることにした。他の人はまだ寝ている。
風呂に入って、朝飯がわりのお菓子を食べたが、
まだ五時半にもなっていない。まだ広場には誰一人いないだろう。七時までと決めて、俺は絵を描くことにした。といっても昨日描いた絵が結構あるので、暇つぶしに、という感じだが。
ロンガーの二人は寝ているので、アトリエには入らなかった。部屋の隅で横になって描き始める。
しばらくはファンタジー的な世界の絵を描いていたが、せっかく寝ているみんながいるので、みんなを描くことにした。
……気がついたら六時半になっていた。誰一人まだ起きない。色々な角度から人とロンガーを描くのはとても楽しかった。その絵は置いていき、広場に向かった。
今日はとてもいい売れ行きだった。嬉しかったが、選抜によってライバルが少なくなったからだと気づくと、とても悲しくなった。
帰る前に、昨日の話し合いを思い出して、図書館に寄った。政治や歴史などの本を借りていって、
みんなと相談するためだ。
家に着いたのは九時半ごろだったが、タケとツカサはまだ寝ていた。
「これからのことを考えるために本を借りてきたぞ」
というと、みんなが集まってくる。
「借りてきたのは、過去に似たような事例があるか調べるための歴史の本と、今の政治体制、政治家についての本だ」
俺はそういいながら、机に本を置いていく。四冊しかないので、一人読めないことになる。
「じゃあ、私たちは二人でひとつの本を読むよ」
イオリが言い、サラが頷く。それがいいだろう。
俺は歴史の本を読むことにした。正直、学校で習った範囲の歴史だと、この国は変な政策を実行したことはなかった気がする。正直、歴史は望み薄だが、とりあえず読んでみることにした。
……読み終えたが、この国の政治はとても優秀だった、ということがわかった。しかし、それだけだ。今回のような問題はこの国の歴史上初めてで、対処法も何もかもわからない。
みんなの所に向かうと、他の人はもう読み終えていたようだった。
ソファに座ってわかったことを報告しあう。
歴史の本を読んだ俺とロンガー二人は空振りだったことを伝えた。しかし、現在の政治の本を読んだマスターとサトルはある程度情報が得られたようだ。
重要そうな所をまとめると、現在の首相の座に就いているのはササキという男らしい。その男が、どうやら三年前程がら暴走し始めたらしい。
なんでも、独裁化の方向に舵を切ったらしく、今ではササキが一言言えば法律が変わってしまうほどの独裁政権になってい?らしい。
俺は、絵を描いて毎日をなんとか過ごしている状況なので、全く知らなかった。
話を戻すと、ササキは芸術家の弾圧に動いていたらしく、今回の件は反発が大きかった芸術家たちを黙らせるために行われた、というのが世間一般での見解だ。もちろん、一般人も独裁をよく思ってはいないが、反発すると自分の身が危ないので泣き寝入りしている形となっている。
「つまり、こいつをどうにかすればいいんだな?」
と言ってみるが、方法は思いつかない。
「まあそうだな。恐らく他の政治家もこいつのことはよく思ってはいないから、何かスキャンダルでもあれば一気に崩れそうなんだが……」
全く思いつかない。そんなものがあれば、とっくに新聞がスッパ抜いているだろう。
ロンガーたちが読んでいた歴史の本を、みんなで読み直していると、この街にある刑務所の歴史が載っていた。
……そういえば、選抜で捕まった人たちはどこへ行ったのだろうか。刑務所?そんなに人が入りきるか?恐らくこの街の人口の五分の一ほどが対象者だろうが、刑務所がそんなに空いているとは思えない。第一、全員が終身刑になるとしたら、その分刑務所の維持費や人件費がかかって無駄じゃないか?
数十万人の人々を死ぬまで管理するのはちょっと考えただけでも金がかかることは想像できるはず。
となると死刑?それこそ大スキャンダルだ。
だが、せっかく捕まえて殺すだけというのはおかしい。捕まえられた人々も、外にいれば少しは経済を回すのに役立つだろう。それをせっかく捕まえたことには何か理由があるはず。
「考え込んでるけど、悩みでもあるの?」
イオリが顔を覗き込むようにしながら言う。少し驚いた。
「いや……選抜で捕まった連中についてなんだが……」
俺はさっき考えたことを話した。
「なるほど……確かに、国からしたら捕まえる理由がないな」
マスターは顎を耳をいじりながら言う。
「単に街のイメージがさがるということではないのですか?」
サトルが普通の疑問を伝える。しかし、マスターに反論された。
「いや、選抜なんてことをする方がイメージダウンに繋がるだろう。となると、ヒロの言った通り他の意味があるに違いない」
みんなで考え込む。だが、いくら考えていてもわからないだろう。俺は偵察を決めた。
「とりあえず、俺が今度刑務所に行ってみて人が多いかどうか確かめてくるよ。捕まった人が刑務所に行ったかどうかだけでも調べておきたいしな」
サラが心配そうに俺を見る。
「……できるの?」
「ちょっとだけ塀を登って見るだけだ。多分バレないよ」
正直心配だったが、何もしなければ変わらないだろうがら、やるしかないだろう。
「行くなら、夕方になるでしょう。昼だと見つかりやすいし、夜だと人がいるかわかりにくい。
午後六時ぐらいに行けばちょうどいいと思いますよ」
サトルは冷静に言ってくれる。
「わかった。善は急げだ。今日にでも行ってくるよ」
「ヒロ、無理はすんなよ。お前がいなくなったら俺たちも動けなくなるからな」
いつのまにか起きていたツカサが心配してくれる。
「ああ、大丈夫だ。その前に、調べたいことがあるから図書館にまた行ってくるよ。この本は返してもいいだろ?」
みんなが頷く。俺も頷いて、本を持って立ち上がった。




