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41.

 私たちは王宮のある中心街へ向かって、途中で寄り道をしつつ、のんびりと帰っていた。


 お父様は、爵位を剥奪されたみたいだ。

 だから、私が当主になる。


 屋敷は、どうしよう……。

 事件現場となった屋敷に戻るのは、なんとなく気が引ける。


 以前、使用人が盗みをしていたのをきっかけに、お父様が使用人を全て首にしたので、屋敷には誰もいない。

 今まで使っていたのは小さいほうの棟だけれど、あそこはもう使いたくない。

 あそこにいても、悪い思い出ばかりを思い出してしまうから。

 

 お父様は使用人を全員をクビにして、それ以降誰も雇わないなんて極端なことをしていたけれど、私は、そこまでしようとは思わない。

 べつに、信頼できる人であれば、雇ってもいいと思っている。


 あの屋敷で一人というのは、少し寂しい。

 私が雇ってもいいと思えるような、信頼できる人といえば……。

 まあ、これからのことは、あとでゆっくりと考えよう。

 

 さて、私たちがいる場所は、中心街から随分と離れている。

 のんびりと寄り道をして帰れば、数日はかかる。

 でも、羽を伸ばすのにはちょうどいい。


 ここ最近は、本当に大変だった。

 牢獄に入れられたり、処刑されそうになったり……、ほかにも、本当にいろいろあった。

 さすがに、少し疲れたので、今くらいはのんびりしても、許されるはず。


 とりあえず今は、いろいろなことを忘れて、アンドレさんと二人で過ごす時間を楽しもうと思った。


     *


 (※ウィリアム視点)


 私はヘレンと共に、ある場所に向かっている。


 平民としての生活は、想像していたものとは、まったく違っていた。

 てっきり、一生暮らせるくらいの財産は与えられると思っていたけれど、そんなことはなかった。

 私に与えられたのは、小さな家と僅かな財産のみ。

 今までのような生活をしていれば、あっという間に底を尽きてしまうほどの額しか、与えられなかった。


 このままでは、質素な生活をしたとしても、数か月しか持たないだろう。

 何とかしなければ……。


 私とヘレンは、これから生活することになる家に着いた。

 その家を見た第一声は……。


「これは……、小屋か?」


「これからずっと、こんなところで生活するの?」


 今までいた王宮に比べると、小屋同然の建物だった。

 この建物が、現在の私たちの状況を象徴しているかのようだった。

 そうだ……、私たちは、平民になったのだ……。

 わかってはいたけれど、ようやく、そのことが現実のこととして認識され始めた。


 とりあえず、家の中に入った。

 なんというか……、最低限のものしかない、という印象だ。

 これからずっと、こんなところで暮らすのか……。

 まずは、一つずつ問題を解決していかなければならない。


 もっとも切迫した問題は、金銭面でのことだ。

 このまま普通にここで暮らしていても、いずれ金は尽きてしまう。

 ということは、つまり……。


「これからは、働かなければならないのか……」


 私は大きなため息とともに呟いた。

 そして、今まで働いたことのない私には、ここから地獄のような試練が待っているのだった……。

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