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40/55

40.

 私は新聞を読んでいた。


 そこにはある記事が、一面に大きく掲載されていた。


「アンドレさん、これ見てください。私たち、無罪放免だそうですよ!」


「え、本当ですか?」


「ほら、ここに書いてありますよ」


 彼も、新聞の記事を読んだ。


「ああ……、これで、こそこそとしなくても、いいのですね。エマ様も、貴族としての立場は、失われないと書かれていますよ」


「ええ、そうですね。まあ、これが嘘の記事だということは、さすがにあり得ないですね。こんな大々的に新聞を使って嘘をつけば、王宮は、民からの信頼を完全に失いますからね」


「ええ、そうですね……。あれ? 裏側にも、一面に大きな記事がありますよ」


「あら? 本当ですね。しかもこの記事、殿下とヘレンのことですね……。え、これって……」


 そこに書かれた記事の内容を見て、私は驚いていた。


     *


 (※ウィリアム王子視点)


 私は陛下のもとを去り、ヘレンのところへ向かっていた。


 彼女に、私の下した決断を伝えなければならない。

 これを伝えるのは、非常に心苦しい。

 しかし、もう決断したことだ。

 今更変えることはできない。


 こんなこと、本当は決断なんてしたくなかった。

 しかし、決断しなければいけない状況に、私は追い込まれていた。

 これは、仕方のないことなんだ。

 きっと、彼女もわかってくれるはず……。


「ヘレン……」


 私は彼女を見つけて声を掛けた。


「殿下……、大丈夫でしたか? 陛下が殿下を呼び出した用事は、いったいなんだったのですか?」


 彼女が心配そうな表情でこちらを見ている。

 陛下に呼び出された時の私の様子を見ていたから、彼女が不安に思うのも無理はない。


「実は……、陛下は私のしたことをすべて把握していた。私が一度、君に騙されたことも、陛下は知っていた」


「ま、まさか、私に何か、処罰が下されるのですか?」


 彼女の声をふるえていた。

 目には、涙が浮かんでいる。


「陛下の話は、私にある選択を迫るものだった。どちらか一方を選ばなければならない状況になったんだ。一つ目は、君を刑に処して、私は王族として振る舞えるよう、徹底的に教育されるというもの。二つ目は、私は王族としての権限を剥奪され、君は貴族としての権限を剥奪される。そのうえで、この王宮から追放され、平民として暮らしていくというものだ」


「そんな……、そんなのって、あんまりだわ……。そ、それで、殿下はどちらを選ぶおつもりなのですか?」


「実は、もう選んで、その意思を陛下に伝えた」


 私は彼女の顔をまっすぐに見た。


「殿下……、いったい、どちらを選んだのですか?」


 彼女は声を震わせながら、私に質問した。


「それを伝える前に、君に言っておきたいことがある。私は、本当はこんな選択、したくなかったんだ。陛下に迫られて、しかたなく選択したんだということを、どうかわかってくれ」


 ヘレンは、うつむいたまま、何も言わない。

 私は続ける。


「それで、私が選んだ選択肢の話に戻るけれど……。私は……、君と二人で過ごすことを選んだ。私からは王族としての権限はなくなるし、君も貴族としての権限はなくなって、平民になってしまうけれど、二人で過ごすことができる。私は王族としての立場より、君のことを選んだ。なぜなら、私は君のことを愛しているからだ」


「殿下……、嬉しいです。私のことを、見捨てなかったのですね……」


「当然だ。君がいなくなったら、私は一人ぼっちになってしまう。平民になっても、二人一緒なら、きっと幸せになれる」


 私はヘレンを抱きしめた。

 

 この選択は、決して間違いではない。

 私はすべてを失ってでも、ヘレンと一緒にいることを選んだ。

 何もかも失ってでも彼女のことを選んだのだから、絶対に幸せなになってみせる。

 彼女と一緒にいれば、それが私の幸せにもなるし、彼女の幸せにもなる。


 王族でなくても、貴族でなくても、平民としてだって、きっと幸せになれる。

 そう思っていた。


 しかし私は、王族や貴族の権限を失ってから、平民として過ごすというのがどういうことなのか、この時はまだ完全に理解していなかったのだった……。

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