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36.

 (※ウィリアム王子視点)


 私たちは、さっきまでエマがいた牢獄で、呆然と立ち尽くしていた。


「おい、病院へ行ったエマの容態を確認してきてくれ。意識が戻る見込みがあるのか、医師に聞くんだ」


「はい、すぐに確認します」


 私の命令を受け、兵の一人が病院へ向かった。

 病院までは、片道五分ほどの距離だ。

 彼女の容態の報告を受けるまで、私はしばらく待っていた。


 まさか、こんなことになるなんて……。


 私に恥をかかせた過去の遺物は大勢の前で処刑にして決別し、これからは関係を修復したヘレンと新たな人生を歩むつもりだったのに……。

 まったく、面倒なことをしてくれたな、エマ……。


 まだ、脈はあると言っていた。

 彼女は、一命を取り留めることができただろうか。

 同じ死を迎えるにしても、自殺と処刑では、意味合いが全く違う。

 彼女は、処刑しなければならないのに、こんな方法で邪魔をしてくるなんて……。


 兵がエマを連れて行ってから、十分以上が経過している。

 彼女は、一命を取り留めることができるのだろうか……。

 あの状態は、死んでいてもおかしくない程だった。


「殿下! 大変です!」


 病院へエマの容態を見に行かせた兵が戻ってきた。

 彼は、かなり動揺している様子だった。


「どうした!? まさか、エマは死んでしまったのか?」


 私は兵に尋ねた。

 その声は、少し震えていたかもしれない。


「いえ、そうではありません!」


「それなら、彼女は助かったのか?」


「いえ、それは不明です!」


「不明? 不明ってどういうことだ? まだ手術中で、予断を許さない状態だということか?」


「いえ、そうではありません!」


「そうではない? それならいったい、何が大変なんだ!?」


 私は兵に怒鳴りつけた。

 なんだ?

 何か、嫌な予感がする。

 この胸騒ぎは、いったい何なんだ……。


「エマ様は、病院へは来ていないそうです!」


「……は?」


 えっと……、どういうことだ?

 病院へは来ていない?

 そんなわけないだろう。

 一刻も早く病院へ行かないといけない状態だったのに……。

 

「そうだ! ほかの病院へ行ったのかもしれない! ほかの近くの病院も確認するんだ!」


 私は声を震わせながら指示を出した。

 わけのわからない状況に焦り、言い知れぬ不安に襲われていた。


「はい、実は先ほど、ほかの兵たちに行かせました! もうすぐ報告に現れるはずです!」


「そ、そうか……」


 とりあえず、兵たちが戻ってくるのを待とう。

 ……しかし、いったいどうなっているんだ?

 ここから一番近い病院が、一番設備も整っている。

 ほかの病院は、着くのには十分はかかる。

 それなのに、どうして一番近い病院へ行かなかったんだ?


 病院が閉まっていたのか?

 ……いや、それはない。

 兵が、迷子になったのか?

 いや、それもあり得ない……。

 それならいったい、どうして……。


「殿下! ご報告です!」


 二人の兵か戻ってきた。


「私が訪ねた病院には、エマ様は来ていませんでした!」


「同じく、私が確認した病院へも、エマ様は来ていませんでした!」


「そんな……、馬鹿な……、いったい、どうして……」


 私は混乱していた。

 この周辺にある病院は、彼らが確認した三か所だけだ。

 どうして、エマはそのどこにも、姿を現していないんだ?

 このままだと、死んでしまうぞ……。


 まさか……、どうせ一命を取り留めても処刑されるから、あの兵に頼んで、病院へは行かなかったのか?


 いや、しかし、あの時彼女に意識はなかった。

 まさか病院へ行く途中で、意識が戻ったのか?

 どうせ一命を取り留めても処刑されるから、病院へは行かずに、最期の時を迎えることで、私に一矢報いているつもりなのか?


「ひっ!」


 突然、私の側にいたヘレンが、小さな悲鳴を上げた。

 

     *


 (※アンドレ視点)


「エマ様、目を開けてください!」


 私はさっきよりも大きな声で、彼女に呼び掛けた。

 しかし、彼女は目を開かない。

 こうなったら、致し方ない……。


「エマ様、起きてください」


 私は彼女の頬を、軽くたたきながら呼びかけた。

 それでも、彼女は目を閉じたままだった。

 しかし、何度か繰り返して呼びかけていると……。


「うぅ……、おはようございます、アンドレさん。……私、いびきとかしていませんでしたか?」


 彼女は口を押えてあくびをしながら、のんびりとした声でそう言った。

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