1.
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、突如舞い込んできた縁談の話を聞いて喜んでいた。
相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。
思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。
しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。
それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。
「お姉さま、ウィリアム様から縁談の話が来て、ずいぶん調子に乗っているみたいね」
ある日、夕食を食べている時、妹のヘレンが私に突っかかってきた。
「いえ、べつに調子には乗っていないけれど、縁談の話は、素直に嬉しいわ」
「そういうのが、調子に乗っているっていっているのよ!」
ヘレンはすごい形相でこちらを睨んできた。
そう言われても、私が何かしたわけではない。
この話は、ウィリアム王子の方から持ち掛けてきたものだ。
そのことを、ヘレンに説明すると……。
「へえ、そう……。ウィリアム様に選ばれたことを、そんなに自慢したいわけ!? なんて性格が悪いのかしら!」
もう何を言っても、ヘレンには嫌味としか取られないらしい。
私は呆れて黙っていたが、彼女はとんでもないことを言い出した。
「そうだわ! 私がウィリアム様と婚約すればいいのよ! ウィリアム様にふさわしいのはお姉さまではなく、この私よ! お姉さまと私は見た目がそっくりだから、私がお姉さまに成りすまして、ウィリアム様に近づけば、何も問題ないわ!」
ヘレンは意気揚々としている様子である。
いやいや……、何も問題ないわ、なんて言っているけれど、問題しかありませんよ?
そんなバカなこと、成功するはずがないでしょう?
そう思っていたけれど……。
「確かにそうだ。ヘレンを差し置いて王子と婚約するなんて、間違っている」
「ええ、そうね。エマなんかよりも、ヘレンの方がウィリアム様にふさわしいわ。あなたのために、私たちも協力しましょう」
「お父様、お母様、ありがとう!」
ヘレンを溺愛している両親は、彼女に協力するつもりのようだ。
両親はいつでも彼女の味方だ。
私の不利益になるようなことでも、それがヘレンの利益につながることなら、平気でやる人たちだ。
またこのパターンだ……。
ヘレンはいつも、私のものを平気で奪う。
両親を味方につけ、私のものを奪い、私が絶望している様を見て悦に浸るのだ。
今回も、私はなすすべなく、妹に何もかも奪われてしまうのだと思っていた。
しかし、そうはならなかった。
ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。
両親の協力もあったし、ヘレンは私と見た目がそっくりなので、すべて彼女の思惑通りに事が進んでいた。
しかし、そんな彼女の幸せな生活は、いつまでも続くことはなかった。
ヘレンは幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。




