表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

第四話 港湾都市ゾック

 ウェルスランド王国艦隊による帝国への最初の反攻作戦は、魔鉱兵による奇襲攻撃なしに成功した。帝国側の戦力が万全ではなかったからだ。先の上陸作戦の失敗後、ウェルスランドから逃げ帰った帝国艦隊もあらかた戦力を立て直しつつあったが、なにしろ大船団ゆえにひとつの軍港だけでは修理も補給もままならず、溢れ返る入港待ちの軍艦を現地の基地司令がやむなく別の港へ振り分けていた。そのせいで、ウェルスランド軍の主力艦隊が殺到したとき遠方に回されていた艦隊は迎撃に間に合わず、結果的に戦力の逐次投入となって、港へ接近するそばから集中砲火を浴びては各個撃沈されたのだった。

 港の近海の守りを固めたウェルスランド軍は上陸部隊をただちに送り込むことはせず、あえて海上からの執拗な砲撃を続けて帝国軍の魔鉱兵部隊をじりじりと後退させ、安全圏を確保してから船着き場に土嚢を積んで砲兵陣地を築いた。海賊船が二隻の護衛を伴って入港した頃には、地上戦力に守られた長距離砲の射程は港町全域をカバーしており、港町を含む港湾都市ゾックの領主が喉元に長距離砲を突きつけられる格好となって降伏、さまざまな事務処理のため居城や城下の主要施設を明け渡していた。

 レオ達を港で出迎えたのは、竜人ルミラとスズの祖父の老魔術師だった。スズは老魔術師を見るなり突き飛ばさんばかりの勢いで抱きついた。

「お爺様!」

「おお、無事で何よりじゃ。レオナルド君、エリシュ殿、船長殿、孫をよくぞ守って下さいましたのう」

「お爺様、プロトナイトは局地戦を二度も切り抜けて、水中と砂漠での戦闘データが取れたのよ!他にも話したいことがいっぱいあるわ」

「それはこちらもじゃ。魔術師団とて手をこまねいていたわけではない。格納庫を見たらびっくりするぞい」

 老魔術師はスズの頭を撫で回しながらレオにウィンクしてみせた。その様子を後ろから見守っていたルミラが歩み出る。相変わらずにこにこしているが、内心かなり焦っているようだ。

「その前に、レオナルドくん、エリシュさん、レッドクロスさん、あなたがたを国王陛下がお呼びです。用件はお察しの通り。僕もなるべくフォローしますが、皆さん、くれぐれも慎重に」


 港湾都市ゾックの中心にそびえる城の謁見の間にウェルスランド王が現れると、家臣達は金属の武具がこすれる音を立てて一斉にひざまづいた。占領下とはいえ戦の最前線であるここでは国王はさすがに黄金の甲冑を纏い、家臣団も軍艦に乗って海を渡ってきた将軍が占めている。王の両脇にはルミラと玉座の本来の主であるゾック卿が控え、その正面で騎士エリシュと女海賊レッドクロス、そして砂の国の女王クレアがひざまづく。ワンテンポ遅れてひざまづいたレオは、やはりエリシュにぐいと頭を押し下げられてしまった。

 国王は玉座に腰をおろす前にクレアに一礼した。

「女王陛下、どうかそのまま。皆も顔を上げよ」

「格別のお計らいに感謝申し上げます」

「我が国は陛下を国賓とみなしております。今回ここに至った経緯はすでに承知しておりますゆえ、この場では陛下のお気持ちをお聞かせ下さい」


 クレアは戸惑った。ウェルスランド王の関心事はフェリア王国が敵か否かであり、要するに、砂漠で帝国の旗を掲げる神官達と対峙したときの主張を繰り返せばいい。しかし、あのときは憤りから口をついてすらすら出てきた言葉だったが、一切が記録される公の場で、台本に頼ることなく喋るのは初めてのことだ。

「フェリアは帝国には与しません」

 居並ぶ家臣達がざわついた。フェリア王国は帝国の属国になったというではないか……。武力も持たず命からがら逃げ延びた女王ひとりが異見を唱えたところで何になるというのだ……。

「静かに。では陛下、我が国とともに戦って頂けるということですかな?」

「現在、フェリア王国は帝国の手先と化した者どもによって不当に占拠されていると考えます。どこにいようと、この私、ネフェルクレアこそが正統なるフェリアの女王であり、女王なきフェリアはフェリアではありません。私は我が民を救うため、かの地に帰還したく存じます。ですが、ご指摘の通り、今の私は一兵たりとも持たぬ身。どうかウェルスランド王の慈悲によって力をお貸し下さい」

 一同から拍手が沸き起こった。王は満足げだが、この一言でクレアはウェルスランドにフェリア攻めの口実を与え、自分の軍隊に刃を向けることになってしまった。


「さて。些末なことだが、いまひとつ解決しておかねばならぬ問題がある。騎士エリシュ」

「はっ」

「そなたの出自についてである。帝国の出身とはまことか」

「おっしゃる通りでございますっ」

「ふむ。問題というのはだな、そなたの兄が帝国の騎士であり、間謀とするためにそなたを我が国へ送り込んだのではないか、との噂が立っておるのだよ」

「それは、決してそのような……っ」

 家臣団の中から一人の男が王に一礼した。エリシュとともに王国の港を守った騎兵隊長だ。

「畏れながら国王陛下、この者はやはり敵と通じていたのです。このような余所者に、栄えある王国騎士と同等の特権などもってのほか。件の騎士がフェリア王国に現れたという情報もある。海賊船が要らぬ寄り道をしたのも連絡を取るために決まっております」

 そうだ!我が軍の勝利に終わったからいいようなものの、難破を装って本隊の足を引っ張り、フェリア軍を丸ごと敵に回したのも策略だったに違いない!任務不履行の責任を取れ!けじめをつけろ……!ここぞとばかりに将軍達がわめき立てる。それも古参の将軍ばかりではない。今次作戦の成功も結局ルミラの砲術によるところが大きく、なにか落ち度をつつき出さないと手柄を横取りできないからだ。

「あいつら、言わせておけば……!」

「よせキャプテン。間に合わなかったのは事実だが、我々は全力を尽くした。毅然としていればいいんだ」


 王は眉間にしわを寄せ、親指と人差し指で目頭を揉んだ。イライラしているときの仕草だ。見かねたルミラが助け船を出した。

「ご一同、静粛に。ここは議論の場ではありません。しかしながら、弁解をお許し願いたい。よろしいですね?国王陛下」

「申せ」

「まず、僕の責任は認めましょう。ですが怪我の功名というべきか、思わぬ収穫もありました。敵の試作魔鉱兵です。これは水中での活動を目的として開発されていたと思われる機体で、既存の軍艦では反撃不可能な戦闘能力を持っています。もしレッドクロスさんからの情報がなければ、王国艦隊は知らぬ間に背後を取られ、ウェルスランド近海の安全がおびやかされていたかもしれません。もっとも、試作機を破壊したところで量産型の実戦配備は止められませんが、少なくとも艦隊に水中からの攻撃を警戒させ、対処法を編み出すことはできるはずです」

「確かに、私掠船の働きあってのことであるな」

「はい。フェリア王国の件にしても、女王陛下のお力添えで敵の内情が明らかになりました。今やウェルスランドにはフェリアの民を解放するという大義もあります。どうか、これらの点を踏まえ寛大なる処置をお考え下さい」

 言い切ってから、ルミラはレッドクロスに微笑みかけた。とはいえ彼女から見ればルミラの表情はなにひとつ変わっていないので、レッドクロスは怪訝な顔をしただけだった。


「レオナルド少年。騎士エリシュは自らの兄を討つため、そなたに稽古をつけておるそうだな」

「はい」

「余としては、そこまでの覚悟を持つ者が敵の間謀とは思えぬ。が、余への忠誠は行動によって示してもらう。騎士エリシュは兄を討ってはならぬ。むしろ、今後接触する機会があれば、我が方に協力するよう仕向けるのだ」

「……はっ」

「私掠船については、到着遅延の原因は天候不順による難破という不可抗力であり、女王陛下護送の功績などを鑑みて不問とする。そのようなことより、今は猫の手も借りたい状況である。おそらく本国からの輸送か海上警備にあたってもらうことと思うが、追って別命あるまで港で待機せよ」

「かしこまりました!」

 王は改めてクレアに一礼し、一同を解散させて自らも足早に謁見の間をあとにした。戦は始まったばかりである。すみやかに足場を固めなければ、今度はウェルスランド軍が撤退を迫られる側なのだ。


 ゾックの城には騎士や魔術師やその従者達がひしめいており、海賊船のようにレオ達ひとりひとりに個室があてがわれるような特別扱いはなかった。特に到着が遅れた魔鉱兵部隊一行には新たに部屋を割り当てる余裕がなく、書類上は全員ルミラと同室ということになってしまったが、ルミラもスズも非常に忙しく、実際にはレオとエリシュだけが書物まみれの豪華な部屋に取り残された。

「レオナルド、格納庫へ行ってみないか?プロトナイトの様子が気になるだろう」

「もう行ってみましたけど、機体の基本構造にガタがきてるとかで、修理のために一旦分解することになったらしくて、門前払いされちゃいました」

「そうか。しかし、勝手に城下をうろつくわけにもいかんしな……。ん?なんだその目は」

「エリシュさんも稽古に飽きること、あるんですね」

「失礼な!私だって気晴らしぐらいしたいわっ!」


 誰かが部屋の扉をノックした。続く声はルミラのものだったが、入り口に現れたのは彼のほかにクレアとメルと、ゾック卿の手配でクレアの部屋に用意されていた身の周りの品々を抱える使用人だ。使用人達はルミラの部屋の一角にさまざまな家具と寝具と調度品を持ち込み、散らばった書物を片付けて手早く埃を掃き清めると、みるみるうちに天幕で仕切りを設け異国風のカーペットを敷き詰めたクレアのコーナーを作り上げて退出した。これが敵兵であれば抵抗する隙もなくエリシュもレオも殺されていただろうと思えるほどの手際の良さである。

「部屋が寒い。世話になる」

「構いませんが、それでは諸国への示しが……」

「貴様達まで私に説教を垂れるのか?あんな部屋、十人は寝泊まりできる。私とメルだけで占有するのは非合理的だ。書類の上では私の居室ということにしておけばいい」

「フェリアの王宮と違い、なにぶん勝手が分かりませんもので。よろしくお願いしますね」

「はぁ。こちらこそ」

 クレアとメルにソファをすすめたルミラは、リビングテーブルにゾック市街の地図と何かのパンフレットを広げた。

「もうひとつお願いしたいことがあります。女王陛下を……もとい、クレアさんを城下町へ連れて行って差し上げて欲しいんです。お忍びでね」

「観光案内?」

「ちょうど良かったな、レオナルド。おいしいものでも食べて帰ってこよう」

「いえ、行き先は決まっています。これは休暇というより任務と考えて頂きたい」

 プラチナホワイトの鱗がきらめく長い指先の爪でルミラが差したのは、地図上でもひときわ目立つ円形闘技場だった。


 ウェルスランド軍の占領下となった街は、精密狙撃で軍事施設だけを重点的に破壊され、領主の早期降伏によって無血制圧されたとはいえ、決して無傷ではなかった。砲兵部隊の攻撃目標は不正確な偵察に基づく地図情報をもとに選ばれており、誤射を受けて崩れ落ちた民家や商店も多い。大通りには手足に包帯を巻いた人々が力なくへたり込み、中央広場では帝国軍の指揮官が首枷を嵌められて、彼らの処刑予定日が記された晒し台の上に並ばされている。そして街外れからは、ときおり遠雷のように砲撃の応酬が聞こえてくる。帝国軍が撤退した今となっては敵も味方も牽制のつもりにすぎないが、この街も未だに安全とは言えないのだ。肉の腐った臭いがする……。港から城までの道のりを天蓋付きの馬車で護送されてきたクレアは、そのときは気にも留めていなかった惨状に言葉を失った。


 レオ、エリシュ、クレアの三人が円形闘技場に到着したとき、受付の前にはすでに長蛇の列が出来上がっていた。流浪の騎士から体格のいい労働者、ローブに身を包み素顔の分からない者や痩せこけてぼろを纏った者まで、じつにさまざまな有象無象が並んでいる。


「やっと試合が観られると思ったら、なんだいこりゃあ。スポンサーが変わって、炊き出しでも始めたのかい?」

「おめぇ文盲か?そうでねぇなら立て看板を読んできな。期間限定で誰でも出場できるようになったんだと」

「はぁ!?素人をフィールドに上げるなんて、今度の王様は正気かよ!」

「でもな、見てみろ。体力のねぇ奴ぁ参加登録する前に重量挙げで弾かれるんだ。まぁ、試合の形を借りた徴兵検査ってとこだな。普通に徴兵したんじゃ人が集まらねぇんで、賞金で釣ることにしたんだろ」

「……俺、行ってみようかな」

「やめとけって。どうせ常連に蹴散らされるだけだ」

「違ぇねぇ」

「「がっははははは!!」」


 出場希望者の列を無視してまっすぐ受付に向かおうとするエリシュを衛兵が声を荒げて引き止めたが、ルミラ・ノーゥンのサイン入りのパンフレットを見るや態度が変わった。このパンフレットは地元の高名な騎士や冒険者など、めぼしい者だけに配布されるウェルスランド王直々の招待状であり、提示すれば無条件で試合に参加登録することができるのだ。だが出場するのはエリシュではない。石造りの回廊を通り薄暗い螺旋階段を降りてひんやりする地下の控え室まで案内されたレオは、別れ際にエリシュに発破を掛けられた。

「国王陛下の元ですでに戦っているおまえが参加させられるということは、陛下はおまえを基準にして、おまえより強い兵士を欲しがっているということだ。新兵の質がどれほど上がるかは、レオナルド、おまえの頑張り次第だぞ」


 レオひとりの頑張り次第というのは言い過ぎで、実際は幾人かの若手騎士が互いにかち合わないように、体重別のグループに一名ずつ送り込まれていた。レオが出場するのはその中でも初日に全試合が行われる最軽量級のグループだ。汗臭い控え室では武術に縁のなさそうな痩せぎすの男達が、闘技場に備え付けの練習用の防具から自分の体型に合うものを選んで装着していたが、子供向けの防具などあるはずもなく、レオは裏方で働かされている身寄りのない少年達が使っている金属板入りの革グローブにブーツ、そして厚手の革ジャケットを着ることになった。

 命がかかっていないとはいえ、これから闘う者同士、狭苦しい空間に押し込められて張り詰めた空気の中で冷たく湿ったベンチに座ると、斜め向かい側で器用に木剣をもてあそんでいる場違いな少女と目が合った。その笑顔は薄暗い灯火の下でも輝くようで、それだけでさえドキッとしたのに、金髪の少女は迷わずレオの隣に並んで腰掛けてくる。スズぐらいの年頃だが、スズよりは多少身体の起伏があり、武術の心得を持つ者に特有の隙のない立ち居振る舞いはエリシュかクレアに似ている。レオはなんとなく自分の弱点このみのタイプが分かったような気がした。

「酒臭いおっさんばかりかと思ったら、キミみたいな子が来ることもあるんだね。あの砂袋を持ち上げられたようには見えないけど、もしかして招待選手ってやつ?」

「そんなところ」

「へぇ、凄いんだ」

「俺が凄いっていうか、必死で戦ってたら周りの大人達に勝手に期待されて、いつの間にか決められてたんだけどな……」

「あはは!じゃ、あたしと一緒だ。戦いしか取り柄がないから、ご主人様に『出場しろ』って言われたら、いつでも出なきゃいけないの。ここだけの話、お互い大変だね」

「レオナルドだ。レオでいいよ」

「あたしはリム。どっちが勝っても恨みっこ無しにしようね?レオくん」


 楕円形のフィールドの外周に沿ってゆるやかにカーブしている観客席は、午前中にも関わらず大勢の市民で埋め尽くされていた。座席は直方体の石材を寝かせただけの素朴なもので、常連客の中には自分と連れ合いの尻の下に広げる敷物を持ち込んでいる者もいる。今回のエリシュの任務は女王クレアの護衛だが、クレアがずんずん先行してしまうので、彼女が腰をおろした場所の隣に長剣を立て掛け、軽く砂を払ってから座った。見渡せば、闘技場の建材と同じような地味な色の服を着た豆粒のごとき人々のざわめきが場内にこだまして、巨大なすり鉢の底に吸い込まれてしまいそうだ。その合間を縫って石の階段を上下に行き交う豆粒は、飲み物と食べ物の売り子である。

「今のうちに食料を確保しておきましょう。クレアひ……クレア殿は?」

「いらん。あんな街を見せられて、よく食欲が沸くな」

「それはそれ、これはこれ、ですよ。我々は殺し合いをしている。戦とはそういうものです。もちろん私にも限度はありますが、戦場で食事も摂れないようでは騎士など務まりません」

 二人の鼻先にも塩漬け肉を炭火で炙った串焼きの香りが漂ってきた。エリシュは手を挙げ、売り子を呼び止めた。

「あの悪趣味なトカゲ男は、あえて全てを見せることで、“ウェルスランドを裏切ればフェリアもこうなるぞ”と、私の覚悟のほどを試そうとしているのだろうな。これまで私は神官どもにとって都合のいいものばかりを見せられて、綺麗事だけに囲まれた世界で生きてきた。見限られるリスクを冒しても清濁含めた自らの行いを隠そうとしない者を否定はせんが、それはそれとして、あの男の余裕ぶった表情はトカゲの地顔と分かっていても腹が立つな。あれでは敵も多かろう」

「同感です」

 しばらくして、場内の喧噪を上書きするけたたましいファンファーレが鳴り響き、観客席の一部に張り出した天蓋付きの貴賓席に見覚えのある男が姿を現した。司会進行のもったいぶった紹介のあと、多くの市民は領主ゾック卿を拍手で迎えたが、皇帝を裏切り田舎者に尻尾を振っている男がどの面下げて出てきた!とか、市街の復旧をほったらかして試合見物とは何事か!といった無謀な野次も少なくはなかった。しかし、土色のケープを纏った豆粒があまり演説向きではない声で語り始めると、聴衆は自然と静まり返った。

「諸君、我が市営闘技場は、ウェルスランド王の厚意により営業再開の運びとなった。帝国の支配から脱したことで、奴隷に獣をけしかけるような悪しき伝統は終わり、健全なる競技大会として生まれ変わったのだ。また今大会に限り、上位入賞者には身分の別なく王国軍入隊の資格を与える。思い違いをしないでもらいたいのだが、これはウェルスランド軍に諸君ら市民を差し出すということではない。入隊者はゾック守備隊へ優先的に配属される。諸君らが入隊しなければ、ゾックの街の守りはウェルスランド人の手に委ねられることになり、余所者が幅を利かせることにもなりかねない。いかなる国に属し、誰の前にひざまづこうとも、我が街、我が港、我が領民を守るのが我が使命である。大会期間中および大会終了後も、我が城では昼夜を問わず窓口を開いている。志ある者はぜひとも訪ねて欲しい。では、出場者の健闘を祈る」

 場内に再び拍手の波が沸き起こった。先程野次を飛ばしていた連中が衛兵につまみ出されたのかどうかは定かではない。


 闘技場の地下で、レオは結局心の準備ができないままエレベータに乗り込んだ。この滑車を利用した人力エレベータは闘技場が建設された当時のまま、港湾都市ゾックの成立よりもさらに古い時代の舞台装置で、かつては異国から狩り集められた猛獣達が死刑囚や戦争捕虜や罪もない奴隷を食い殺す残虐な見世物を盛り上げるのに一役買っていた。エレベータがせり上がれば、そこはもうフィールドのど真ん中だ。レオの正面にも別のエレベータがせり上がり、フィールド上に対戦相手を吐き出した。

 レオの初戦の相手は剣の持ち方も知らないチンピラで、こちらを子供と見るやへらへら笑いながら片手持ちで突いてきたが、握り込みの甘い木剣を木剣ですくい上げるように絡め取られていともたやすく払い落とされると、何が起きたのかも分からない様子で即座に降参した。ルール上はこのように戦意を失った時点で負けだが、一礼してエレベータに向かったとたん背後から襲いかかってきたので、レオは冷静にチンピラの手首を掴みつつ脚を払うことで、チンピラ自身の力を利用して、その勢いのまま前方へ放り投げた。フィールドを囲む壁の上の四つの見張り台では、王国騎士団から派遣された二名とゾック騎士団を代表する二名の審判員が一部始終を見ており、全員がレオの優勢を意味する白旗を上げて、改めてレオの判定勝ちとなった。


 第一回戦は試合数が最も多く、しかもその大半が素人同士の闘いという理由もあって、各試合の展開がつまらない割に午後まで費やしたが、第二、第三回戦ともなるとまぐれで勝ち残れる者はほとんどいなくなり、次第に真の実力者が明らかになり始めた。観客席にも昼間の仕事を終えた職工達が詰めかけて立ち見客が出るほどの賑わいである。第二回戦を対戦予定者の負傷棄権により不戦勝したレオの次なる相手がフィールド上に現れ、両腕を左右に大きく広げると、観衆の熱狂が最高潮に達した。皆、手拍子を打ちながら、口々に男の名を叫んでいる。

「トレーロ!!」

「トレーロ!!」

 “闘牛士トレーロ”と呼ばれるその男は闘技大会の常連で、試合の成績や勝率に於いてはたいしたことはないのだが、勝っても負けても派手なパフォーマンスが得意な優男ゆえに市民の人気を集めていた。もともと大陸諸国を渡り歩いては各都市の闘技場で猛獣を相手に闘っていたが、その一芸だけでは食べてゆけなくなったためにゾックに住み着いており、地元の出身者ではない。


 ただでさえ濃い顔のトレーロの厚化粧は、エリシュの座る観客席からでもはっきりと見えた。

「男のくせにアイラインなど引いて、舞台役者のつもりか」

「観客に自分の顔を覚えてもらえるようにという意図もあろうが、照り返しから目を守るためかもしれんな。フェリアでは男でもやっていることだ」

「なるほど。日差しに対してどのような向きでも敵がよく見え、不利にならないわけですね」

「うん。あの男、場慣れしている。周りもすっかり味方だ。奴の作り上げた場の雰囲気にレオが呑まれないといいのだが……」

「我々だけでも応援してみますか?『レオ』を」

「……あっ!聞かなかったことにしろ!」


 すらりとした長身のトレーロは芝居がかった仕草で領主に深々と一礼すると、自信に満ちた目でレオを見下ろした。彼の剣は左腕に巻き付けて身体の前にカーテンのように垂らしたマントの陰から繰り出される。しかしレオのほうから仕掛けると、マントの向こう側にトレーロの身体はないのだ。トレーロのマントは対戦相手への目隠しを兼ねた盾の役割を果たし、華麗なステップでひらりひらりとレオの剣を躱すたびに観衆から掛け声が上がった。

「オ・レ!!」

 四人の審判員がレオを見ている。たとえレオに戦意が残っていようと、トレーロに翻弄されているとみなされればレオの判定負けだ。旗が上がる前にとにかく一撃でも喰らわせて、相手のペースを崩さなければならない。レオはトレーロの動きを読むべく踏み込みのタイミングや体重の乗せ方を観察したが、その予測がどうも結果と噛み合わず、先読みが空振りに終わってしまう。

 それもそのはず、トレーロの目はただレオを見ているというだけではなく、トレーロの動きを読もうとするレオの視線を読んで先読みを先読みしているのだ。レオがこちらの足捌きに注目していると分かれば、偽りのステップでレオを誘導して隙を作る。トレーロは芸人である。自らの思考が動作に表れないように、視線や細かい仕草のひとつに至るまでを制御することなどたやすい。

「気づいたか。これぞ“幻惑のフラメンコ”!だが、どうすることもできまい!」


 つまり、どんなに先読みをしてもこの人の心の中までは覗けないってことか。だったら……!

「?」

 レオはトレーロの動作を追うのをやめ、非常に分かりやすい突きの構えを取って、待ち受けるトレーロのマントめがけて踏み込んだ。

「オ・レ!!」

「馬鹿のひとつ覚えか?何度やっても同じことだ!」

 トレーロのマントが翻った。しかしそこにレオの姿はなく、叩き落とした木剣のみが転がっている。このときトレーロからはレオが木剣を残して瞬間移動したかのように見えたが、それはマントの裏が死角となって一瞬レオを見失ったからで、実際には一歩も動いていないレオの突撃を躱すつもりのトレーロが、投擲された木剣のフェイントに引っかかり、その場で半回転して背後を取られただけだった。

「な……っ!?」

 レオはトレーロがあっけにとられている隙に両手で彼の左手首を掴むと、金属板入りのブーツで腰と尻と両膝裏に続けざまに三段の蹴りを叩き込んだ。たまらずトレーロが崩れ落ちるが、レオはまだ掴んだ腕を放さない。そればかりか後ろに思い切りひねり上げ、うつぶせに倒れたトレーロの背中を踏みつけた。

 こんな体勢に持ち込まれては、たとえ大人の力でむりやりレオを振り払ったとしても左腕の関節が無事では済まない。トレーロが情けない悲鳴を上げて右手の剣を放り出すと、四方からレオの勝利を意味する四つの白旗が上がった。


「見事だ少年。悔しいが、この闘いは君に譲ろう」

 トレーロは自分の左肩をかばいながら立ち上がり、汗と土にまみれてすっかり厚化粧の崩れた爽やかな笑顔でレオの肩を優しく叩いた。

「対戦表を見たかい?次回の君の相手は控え室で話し込んでいたお嬢さんだ。彼女は常連のうちでは日が浅いほうだが、私などよりずっと強い。可愛いからって油断するなよ」

 右手を高く挙げて領主に再び一礼したトレーロが観客席へ投げキッスを贈ると、観衆はエレベータに乗った彼の姿が地下に消えるまで手拍子で見送った。手拍子はやがて盛大な拍手となり、いつまでもいつまでも鳴り止むことがなかった。……あれ?勝ったの俺だよな!?


 闘技場は宴もたけなわ、夕暮れを前にかがり火が用意され、西日の届かなくなったフィールドがバチバチと爆ぜる炎の明かりの中に浮かび上がった。観客席も少し冷えてきたようだ。二の腕をさするクレアにエリシュがマントを貸そうとしたとき、息を切らして階段を昇ってきたスズが二人に声を掛けた。スズはクレアを挟んでエリシュの反対側に座ると、自分の膝の上に弁当の包みを置いた。

「ようやく部屋でごはんが食べられると思ったのに、メルさんに訊いたらみんな出掛けたっていうじゃない。ルミラも人が悪いわよね」

「仕事のほうはいいのか?」

「まだだけど、ちょっと息抜き。あとは肝心なパーツのレオ抜きじゃ進まないし。お姫様の……っと、クレアの機体も可能な限り整備しておいたけど、あなたがいないと稼動状態での点検まではできないから、あとで付き合ってね」

「うん。感謝する」


 息を吐いた拍子に、我慢していたクレアの腹が鳴った。こんなこともあろうかとエリシュはあらかじめクレアのぶんの串焼きを買っておいたのだが、その上にさらにスズの弁当のおかずが加わった。串焼きは冷めてしまったが、おかずはまだ温かく、クレアは体力とともにほんの少しだけ気力を回復した。


 夜間試合に向けたフィールドの準備が整い、第四回戦、すなわち準々決勝開始のファンファーレが轟いた。

「エリシュさん、そういえばレオはどうなんです?試合に出ているんでしょ?」

「好調だぞ。今度勝てば賞金圏内だ」

「王国が出した賞金を王国の騎士がもらっちゃっていいのかな……」

「まあ、そう言ってくれるな。あの子はろくに褒められもせずよくやっている。少しぐらい見返りがあってもいいだろう」


 司会進行がレオとリムの名を呼び、フィールド上に向き合った二基のエレベータが上昇する。レオの正面に現れたリムはこれまでの戦士と違って木剣を持っておらず、その代わり右肩から左脇腹へ袈裟懸けにした亜麻袋の中に、手のひらに収まるサイズの無数の砂袋を携えている。……あの装備は武術書で見た覚えがある。スリングを持っていないが、投石兵だ。審判員が何も言わないところを見ると、トレーロのマントと同様、これもまたレギュレーションに則った装備なのだろう。砂袋をひとつ放り上げては受け止めて様子を窺うリムに対し、レオは姿勢を低くして接近したが、不意に観客席から女の子の声が上がった。

「レーオー!!頑張ってー!!」

「いつの間に!?どうしてスズが来てるんだよ!」

「ガールフレンドが三人も。レオくんってモテるんだぁ」

「違っ、そういうんじゃなくて!」

「キミのこと好きでもなんでもないけどさ、いじわるな気分に……」

 リムは振りかぶった。

「……なっちゃうなっ!」

「警告、危険行為!対戦相手の頭部を故意に攻撃してはならん!」

 砂袋が額を直撃し、レオはよろめいた。足を踏ん張ってどうにか転倒だけは免れ、追撃を警戒して防御の構えを取る。警告は二回で判定負けとなるので次はありえないが、頭以外だろうとあんな威力の砂袋をそうそう喰らっていいわけがない。

「戦闘中なら、あたしだけを見てよね!よそ見する暇なんかないんだってことを教えてやる!」

「言われなくたって!」

 レオはフィールドを不規則に蹴ってリムの攻撃を左右に避けつつ壁際へ追い詰めようとしたが、当然それを読んでいるリムもレオとの距離が縮まりすぎないように、レオを中心として円弧を描きながら巧みに逃げる。リムの投球はひとつとは限らない。手の内に握り込んだ三つの砂袋が、どこへ避けても必ず命中するように別々の軌道を取ってレオを牽制した。それはいわば三本の剣に同時に狙われているようなもので、レオは本命と思われるひとつを剣で払い、もうひとつを躱し、残るひとつは甘んじて受けざるを得なかった。が、その選択が仇となって、レオの動きは次第に鈍くなっていった。


「どうしちゃったのよ、レオったら全然駄目じゃないですか」

「臑や肩を狙った攻撃が少しずつ筋肉にダメージを与え、力を削いでいるんだ。レオナルドは手足をかすめる程度なら無視しても問題ないと思っているようだが、あれを受けてはいけなかった」

「でも、それじゃあどうすれば……?」

「……」


 もはや剣を構えてさえいられなくなり、レオは砂袋を投げるたび身軽になるリムに打たれるがままになっていた。避けることはあきらめ、半ば倒れ込むようにひたすら突進していく。なんだ、いちいち躱すよりもずっと楽じゃないか。走りながら木剣を左に持ち替えて、右手でキャッチした砂袋をおもむろに投げ返すと、リムの放った最後の砂袋と砂袋が衝突して破裂した。迎撃されることも計算通り、レオの狙いは砂塵を隠れ蓑にしてリムの間合いの内側へ肉迫することにあったのだ。いちかばちか、加速をかけたレオはもう止められない。怪我をさせてはいけないので、剣に勢いが乗りすぎないようにギリギリのところで踏みとどまり、左下からリムの特注の革鎧の右脇腹へと逆袈裟を滑り込ませる。


 観客席が静まり返った。

 レオの剣はリムの身体に達しておらず、とっさにリムが肩から外して持ち替えた空の亜麻袋によって防がれており、一撃に全てを賭けたがゆえにバランスを崩したレオは、終始リムに指一本触れることもできずに倒れた。そしてリムの優勢を意味する赤旗が三本、異を唱える白旗が一本上がり、先程の警告の件も含めて審判員の間で短い討議が行われ、結果、三ポイント対二ポイントでリムの判定勝ちとなった。


 闘技場が歓声に包まれるとともに、貴賓席で領主の側に座していた男が立ち上がり満足げに拍手した。この男こそリムの飼い主にして闘技大会の出資者のひとり、海上交易で財を成しゾック港の主要施設をも所有する大富豪ドミナスである。

「どうです?うちのリムはなかなかやるでしょう」

「ほう、あの少女もドミナス殿の剣奴でしたか」

「自慢の逸品ですよ。見てくれがよいので使用人にしようと思い購入したのですが、しばしば脱走を図るもので、懲罰も兼ねて剣奴の訓練場に放り込んだところ、これが化けました。うちでは唯一、大人の訓練についてゆける娘です」

 ドミナスは大勢の剣奴を囲って闘技大会へ送り込んでは、その裏で賭博を主催して毎回多額の賭け金を巻き上げていた。そんなドミナスにとってリムはまさに金の卵を産む鵞鳥、準決勝と決勝を順調に勝ち進み、ついに優勝者となったときにもドミナスは平然としていたが、ルールに従ってみすみす手放すなどありえないことだった。


 表彰式の後、かがり火が燃える夜の闘技場の門前の並木道でレオがエリシュ達を待っていると、大通りの闇から現れた四頭立ての黒い馬車が門前に停まり、メイド服の少女達がぞろぞろと降車して馬車と門とを結ぶように整列した。少しして闘技場から出てきたのは、貴族風の服を着た男と、男の召使いに連れられたリムだ。無表情のリムは太く頑丈そうな首輪と手枷で繋がれており、レオの視線に気づくと一瞬悲しげに微笑んだが、レオが何か言う前に屈強な召使いに鎖を引かれて馬車の中へ消えてしまった。続いて貴族風の男が乗車するまでじっと頭を下げていた少女達を格納し終えると、巨大な馬車は再び大通りの向こうへ去った。


 レオは闇の中から乱暴に肩を掴まれた。振り向けば、いつからそこにいたのか、昼間の試合で闘った初戦落ちのチンピラが手下を引き連れて立っている。

「へへっ、闇夜じゃあこっちに分があるみてぇだな」

 チンピラはレオの口を手で塞いで大通りから路地裏へ引きずり込むと、手下のひとりにレオを羽交い締めにさせ、残りの手下がその様子を周囲から隠すようにして三人を囲んだ。

「今日はよくも俺様のメンツを潰してくれたな。リベンジマッチといこうじゃねえか」

「あんた達さ、誰を相手にしてるか、分かってる?恥かくだけで済んだところを、子供ひとり殺して処刑台送りなんて、そんなに恥の上塗りがしたいのか?」

「うるせぇ!こちとら街をめちゃめちゃにされたあげく、有無を言わさずてめーら占領軍に従わされて鬱憤が溜まってんだ。あんな八百長大会ごときで発散できるか!」

 リーダー格のチンピラの手の内にナイフの刃がきらめく。

「田舎もんに教えてやるよ……都会じゃあ死体のひとつやふたつ道端に転がってたって、誰も気に留めやしねぇんだぜ!!」

 レオはとっさに背後のチンピラの股間をかかとで蹴り上げて倒し、長剣の柄に手を掛けた。が、剣の間合いの寸前に迫ったリーダーの顔が音を立てて一八〇度回転したかと思うと、糸の切れた操り人形のごとく崩れ落ち、その肩の上から宙返りをしてクレアが降り立った。汚いものに触ってしまったというように手のひらの埃を払い、溜息をついて周りを見やる。

「ちくしょう、畳んじまえ!」

 その直後、路地裏の暗がりに仲良く折り畳まれていたのはチンピラ達のほうだった。

「ありがとう。皆は?」

「関係ない。貴様に用がある。来い」


 レオの服を掴んだクレアはエリシュとスズを待たずに明かりもない夜道をさっさと帰り、領主の城の誰もいない中庭にレオを放置したまま、自分だけは一旦ルミラの部屋へ戻って無言で変装から身軽な普段着に着替えた。

 短剣を吊ったベルトを腰に装着する金属音が聞こえたので、メルはただならぬものを感じてクレアに声を掛けた。

「姫様、どちらへ?」

「中庭に行ってくる」

「いかがなされました?」

「なんでもない」

 夜中に武装しておいてなんでもないわけがないのだが、メルにはクレアを引き止めることはできなかった。極端に口数が少ないときのクレアは問い詰めるほどかえって頑なになっていくだけだからだ。


 夜目の利くクレアはいくつかの通路を窓から窓へショートカットして中庭の芝生に飛び降り、疲れ果ててぼんやりしているレオを見るなり怒鳴りつけた。

「貴様、さっきの試合はなんだ!稽古をつけてやる、剣を抜け!」

 クレアはレオの返事を待たず、腰から一対の短剣を引き抜いて芝生を蹴った。稽古なものか。反撃できないようならそのまま殺してやる。これは決闘、あのとき砂漠でうやむやになった殺し合いの続きだ。


「わけが分からない!確かに俺は負けたけど、なんできみがそんなに怒るんだよ」

 いきなり襲いかかられては剣に鞘を固定する余裕もない。レオはひとまず横合いへ跳んで芝生の上を転がり、片膝をついて起き上がりつつ剣を抜き放った。さて、ここからどうしたものだろう?真剣でクレアに怪我をさせない自信、ないなぁ……。

「貴様が父の仇だからだ!」

「俺は殺してない!」

「殺したようなものだ!」

「だから、それと何の関係があるんだよ!」

 クレアの戦闘スタイルはブレードダンサーに乗っていたときと同じ、舞うような身体捌きで繰り出される高速の二連撃だ。得物もまたブレードダンサーのツインケペシュの縮小版で、傷口が深くなるように切っ先から刃の三分の二ほどまでに三日月型の反りがある。しかし今は互いに魔鉱兵に乗って戦っているわけではないので、一撃でも受けそこなえばたちまち生身の肉体を斬り裂かれることになる。鉛のように重い今のレオの両腕では、二本の短剣がインパクトする瞬間、その二点を結ぶ直線上に長剣を配置しておくのが精一杯だが、こちらも誤ってクレアの浅黒い肌を傷つけるわけにはいかず、攻めに転じることができない。

「親父さんの仇を討つつもりなのか?今さら俺と戦ってどうするんだ」

「分からん。貴様を殺したら私はウェルスランド王の不興を買ってまた独りになってしまう。メルを路頭に迷わせてしまう。だけど、このままでは私の気持ちが収まらない!」

「だったらどうして!」

「その態度!」

 クレアが怒れば怒るほど剣舞のスピードは増し、二連撃が四連撃、六連撃が八連撃と、次第に防戦も難しくなってくる。とはいえ、その一撃一撃が力任せで、フェイントだとか、意表を突いた攻撃だとか、一手先を見据えた狡猾さをどこか欠いているようにも感じられる。レオは防御が甘くなるのを承知で素早く剣帯を解き、左手に巻き付けて鞘を握った。これで得物は一対と一対、固い棒でも凶器には違いないが、刃のある剣に比べれば多少は乱暴な攻撃も可能だ。

「貴様には私の父より強いという自覚がない!父を倒した以上、その責任を負って生きろ!」

 レオは抜き身の剣を防御に回して、鞘でクレアを攻撃することにした。すると両手の短剣が二本とも攻撃用だったクレアもレオに応じて防御と攻撃を一本ずつに分担させ、二人は同じ戦法で互いの得物を相手にする格好になった。


 中庭に通じる回廊では、メルの知らせで駆けつけたエリシュとスズが、戦う二人の様子を見ていた。

「エリシュさん、なんだかものすごい戦いだけど、止めなくて平気?」

「ん……大丈夫そうだ。おおかた試合を観て自分も暴れたくなっただけだろう」

「本当に?」

「私だってあのときほど腑抜けてはいないぞ。心配ない、あの子達はもう充分に語り合った」

「妬けちゃうなぁ。棒きれ振り回して分かり合えたら世話ないわ」


 レオの目の前で涙混じりのクレアの美しい肢体が躍っている。疲れていたはずのレオは、冷え切った身体の奥に再び熱が宿るのを感じた。そういえば、長時間の走り込みや剣の稽古の終わり間近にもこんな気分になったことがあったっけ。二人の戦いはやがて剣を剣で押し合う力比べになり、激情に任せて踏み込んだクレアが、彼女に見とれていたレオを芝生の上へ押し倒した。

「かなわない敵もあろう。勝ち目のない戦いもあろう。だが、このネフェルクレアの目の前で無様に負けることは許さん。レオ、貴様は強い。もっとしっかりしろ。そうでなくては、貴様に敗れた父が浮かばれない。父は、私の父は……っ!」

「クレア……」

 クレアの言い分はカニス将軍だけでなく、これまでレオが打ち倒し、ときに命を奪いもしたその他の敵についても当てはまることだ。レオは剣を放り出し、小刻みに震えるクレアの背中をそっと抱こうとしたが、視界の端にちらと映ったスズ達の姿に気づいて右手のやり場に困り、仕方なく犬猫にするように髪を撫でた。レオの上に覆い被さるクレアの身体は、どことは言わないが、見た目よりもボリュームがある……。月のない夜更けの中庭は凍てつくようだが、もうしばらくこのままでもいいかなとレオは思った。


          *      *      *


 領主の城の大型兵器用格納庫には、帝国軍が魔鉱兵を整備するために使っていた豊富な設備が丸ごと残されている。変形させれば魔鉱兵を乗せたまま台車にもなる整備台は分解にも組み立てにも便利で、片膝をついた機体の周囲にいちいち足場を組んでいた頃と比べ魔術師団の作業効率を大幅に向上させた。オーバーホールを終えたプロトナイトとプロトメイジ、そしてブレードダンサーもまた整備台に固定されて、それぞれの操縦者との再会を待っていた。即興で組み立てられたためにパーツの色がパッチワークのようにちぐはぐだったプロトメイジは全身が紺色になり、プロトナイトの外装には頭部と上半身を中心に厳めしい追加装甲が取り付けられている。この装甲によってプロトナイトの全体的なシルエットが変化し、両肩と腰部装甲を頂点とする逆三角形になった。

「すごい、まるで別物だ」

「格好いいじゃろう。これはパーシャルアーマー。機体の稼動には無用じゃが、マジックフィールドを増強するためだけの魔法回路が刻んである。レオナルド君の『プロトナイトはダサい』という貴重なご意見を検討し、ダメージが多かった部位にのみ集中的に、申し訳程度の装飾を兼ねた装甲を施す形で採り入れたんじゃ」

 ルミラに引率された少年少女とエリシュを前に、老魔術師は興奮気味に説明を続けた。スズはというと、格納庫の奥で魔術師達を指揮してなにやら作業に取りかかっている。

「……しかし、このままでは機体の運動性が落ちる。その問題を解決するのがもうひとつの追加装備なんじゃが、これがなかなか曲者での。魔法回路の多層構造がこんがらがってしもうて小型化が難しく、搭載にすら至っておらん。そういうわけで、ひとまず現状のプロトナイトは動きが鈍いという点に留意して乗ってもらいたい。さて、わしの話はここまで。スズ!」

「はいお爺様」


 スズは格納庫の奥の、いわゆる秘密作業区画を仕切る幕を開いた。その向こうでは、なんとプロトナイトが三体横たわっている!手足が揃っている機体は一体だけだが、それはまぎれもなく改装前のプロトナイトとほぼ同じものだ。

「ここ数日間、私達開発チームは魔鉱兵の量産に向けた練習をしていたんです。その成果がこれ、先行量産型魔鉱兵ウェルスナイト!」

 魔術師団からまばらな拍手が起こり、無い胸を張るスズに催促されたレオ達も拍手した。

「ウェルスナイト?」

「ウェルスランド製のナイトだから……?」

「その通り」

「じゃあ、プロトメイジの量産品はウェルスメイジ?」

「そうなるわね。って、それはどうでもいいのよ!実際に試してみると、こんな調子じゃ全然駄目ってことが分かったの。作るだけならまだしも、完成品は整備し続ける必要があるし、戦闘で壊れた機体の修理までするようになったら、私達はとても保ちません。そこでルミラに三つのお願い。ひとつ、人!私と同じレベルの天才が少なくとも三人、部下の魔術師はその十倍、パペットはさらにその十倍欲しいわ。ふたつ、場所!これはあんまり期待していないけれど、帝国の生産施設そのものか、あるいは帝国で使われている機器やノウハウなど、大量生産技術に関する情報が欲しいです」

 竜人なりの溜息というやつなのだろう。ルミラは下あごに手を当てて唸った。

「難しいですね」

「それから最後のお願い。エリシュさんをウェルスナイトの操縦者にさせて下さい」

「私が?どうして?」

「エリシュさんのお兄さんって魔鉱兵の操縦者なんですよね?エリシュさんにも適性、あると思うんです。だけどエリシュさんはレオの付き添いであって、魔鉱兵に乗る約束じゃないでしょ?」

「そうですね。いきなり戦場には出せません。王国の正規兵はすべて国王陛下の統帥のもとにあり、陛下の知らない戦力が存在してはいけませんから。起動実験ぐらいならいいですが、もしもウェルスナイトを動かせるようであれば、陛下のご判断を仰ぎましょう」


 ウェルスナイト、豊穣の騎士か……。エリシュは操縦室の闇の中で呼吸を整えた。操縦席の座面と背もたれは操縦者を包み込むようにいくつかのパーツで構成された有機的な形状に改良されており、エリシュの座高に応じて伸縮する。耳元の小石からスズの声が聞こえる。

《肘掛けの先端の丸く盛り上がった部分に両手を置いて下さい。篭手は外さなくていいわ》

 プロトナイトをレオナルドが初めて立ち上がらせたあのときは外から見ていただけだったが、こういう仕掛けだったのか。エリシュは左右の肘掛けの先にある半球状の石に触れたが、次の瞬間、手のひらと石との間に稲妻が閃くとともに鞭で打たれたような鋭い痛みが走り、エリシュは呻いた。その激痛は真冬の乾燥した時期に金属の甲冑に触れた際まれに起こるものと似ていたが、そんな喩えをとっさに思いつくはずもない。

《エリシュさん、どうしたの!?》

「手のひらを弾かれた……!」


 外部からの操作によってウェルスナイトの胸部装甲が展開し、駆けつけたスズが操縦席を覗き込む。痺れた拳を握ったり開いたりして手指の動きを確かめているエリシュに怪我はないようだ。

「大丈夫!?」

「なんとかな」

「もう一度、できます?」

「馬鹿を言え!」

 その後、スズは操縦室に同乗して現象を確認したり、金属の篭手を脱がせて素手で石の半球に触れさせてみたり、シチュエーションを変えて起動実験を三度繰り返したが、すべて無駄だった。四度目はエリシュが首を縦に振らなかった。

「どういうことでしょう……我々の組み立て作業に不手際があったとか?」

「それ以前に設計上の欠陥か、部品の精度不足かもしれない。工程を簡略化するためにいろいろと省いたからな」

「やり直しか……」

「いえ、私が動かせた以上、魔法回路に問題はないし、かといって魔力の流量が閾値に達さなかった場合の反応とも違うわ」

「つまり彼女に適性はある、と?」

「ええ。魔力は精神力と密接に関係しているから、なにか操縦者の内的な要因が魔力の放出を阻害したんだと思う」


 ぴくりとも動かなかった量産型魔鉱兵を寝かせた整備台の前で顔を突き合わせる魔術師達は、どうやら実験失敗をエリシュのせいにしようとしているらしい。そう言われても無心でスズの指示通りにしたまでで、エリシュにはまるで見当がつかないのだが。

「エリシュ。もしや、その……あれか?」

「?」

 耳打ちするクレアの身長に合わせてエリシュは屈んだ。

「ああ……、なるほど。べつに体調は悪くありませんが?」

「ならいい。たまにな、無理を押して魔鉱兵に乗ると、思ったように機体がついてこない場合があるんだ」

「何の話?」

「おまえには関係ない」


「う~ん、とりあえず実機を作ってはみたものの、課題が山積みね。量産型はなるべく誰でも乗れるようにしなきゃならないのに、こんなケースがあるなんて」

「発覚しただけましですよ、チーフ。生産が進んでからでは遅い。今のうちに問題点は洗い出しておきましょう」

「そうね」

 エリシュとウェルスナイトに関する実験を切り上げ、結果の分かりきっているブレードダンサーとプロトナイトの点検にスズが移ろうとしたとき、格納庫の外から一人のウェルスランド兵が飛び込んできた。ルミラに一礼して耳打ちをしようと顔を寄せたが、よほど急いだのか苦しそうにむせたので、ルミラは構わないから落ち着いて皆の前で話すようにと言い、手空きの魔術師に水と椅子を持ってこさせた。


「それで、どうしました?」

「先の闘技大会の件で問題があり、軍師殿のお知恵を拝借したいのです。と申しますのは、入隊手続きのため城に招集した優勝者の一人、リムなる剣奴の容姿が記録と一致せず、よくよく取り調べてみると替え玉でした。そこで王命により、我々は保護者の邸宅へ向かったのですが、この者が土壇場でゴネまして。『国王を騙すつもりで替え玉を送ったわけではないが、あの程度のはした金ではくだんの剣奴が持つ将来性を含めた潜在的な価値に到底見合わない。賞金を増額しない限り引き渡すことはできない』の一点張りで、強制執行しようにも屋敷にはごろつきどもが溢れかえっており、我々だけではどうにもできず……」

「保護者とは?」

「ドミナスと申す貿易商です」

「地元の有力者ですか。厄介な相手ですね」

 ルミラは少し思案してから振り返ってプロトナイトを見、そしてレオを見た。


 ゾック市内の本邸の一部に砲撃の被害を受けた大富豪ドミナスは、崩落した建物の修繕が済むまで、街壁の外の海岸に臨む別邸で過ごしていた。応接間の広い窓からは絶え間なく波の打ち寄せる砂浜が一望でき、この美しい眺めと意味もなく室内に控えさせた使用人の数だけでたいていの客は度肝を抜かれるのだが、常連客である奴隷商人にとってはどちらも見慣れた景色だった。そんなことより、ちょうど商談に来ていたところをウェルスランド軍に囲まれてしまったので、屋敷から帰れなくなった奴隷商人は気が気ではない。

「少々やりすぎではありませんかな、ドミナス様。田舎者とはいえ一国の王を強請ゆするなど。お屋敷の周りの兵隊は本当に退くのですか?」

「なぁに、心配ご無用。ウェルスランドの連中は戦にかかりきりで、足元の些事になど構ってはいられません。いざとなれば用心棒がおりますし、港湾施設の使用停止をちらつかせればいくらでも支払うことでしょう」

「しかし風の噂によると、ウェルスランド王は奴隷の売買を禁止する意向だとか。この機に乗じて私どもの密談の場に踏み込むつもりなのでは」

「建前はどうあれ奴隷あってのゾックです。人道にもとるからといって今さら撤廃できようはずもない。ゾック卿もそれをよく分かっておられます。私が仕入れ、あなたが捌く。この協力関係に今後も変わりはありませんよ」

「悪いお方だ。根回しはさぞ完璧なのでしょうな」

「これからの世の中、ものを言うのは金ですよ。王侯貴族は父祖の領地と特権を受け継いで、代々ただなんとなく生まれながらにして偉いというだけで、その権力にはなんの根拠もありません。都市の経済を回す我々実業家にそっぽを向かれては、しょせん何もできない時代遅れの遺物です。操ることなどわけもない」


 応接間の扉をノックして、メイド服のリムが二人の紅茶を淹れ直しにやってきた。地下牢に繋いでおかなかったのは単にドミナスの趣味である。ドミナスがにこにこしながら洗練された所作を見守っていると、閉じかけた両開きの扉から息も絶え絶えに召使いが駆け込んだ。

「騒々しい。何事だ」

「そ、それが、たったいま王国軍の増援が来まして、よ、傭兵どもが勝手に逃げ出してやがるんです」

「なんだと」

「ドミナス様、どうされるおつもりで?」

「どうもこうも、予定通りにするまでです。追い詰められたために仕方なく妥協したと見せかけてリムを貸し出し、リース料を取る形で……」

 カップの紅茶が揺れた。

「また大砲か?ふざけおって。役立たずどもには『踏みとどまれば倍払う』と言っておけ!」

 だが、二度目の揺れは明らかに砲撃どころではなく、ティーカップは飛び跳ねて砕け散り、淹れたての紅茶はカーペットの染みになった。屈強な召使いはすっかり恐慌状態に陥り、顔を上げたリムの視線と同じ窓の外を指差して腰を抜かしている。ドミナスが窓を見ると、プロトナイトの輝く双眸が彼を睨んだ。

「あ……ああああ!!」

 応接間の窓ガラスを突き破って室内に巨大な片腕を突っ込んだプロトナイトは、遠い異国から買い集められた希少な骨董品や珍しい獣の剥製や、無駄に大きいばかりで品のない絵画が飾られた額縁や特注の高級家具などをなにもかも粉砕しながら、逃げ惑う使用人達の間を掻き分け、尻餅をついたドミナスと青ざめて泡を吹く奴隷商人の向こうで立ち尽くすリムをそっと捕まえると、建物の外へ腕ごと引っ張り出した。

「こんなことをして、貴様!」

「はい、そこまで」

 両開きの扉から数名のウェルスランド兵と騎士エリシュを伴ってルミラが現れた。開いた口が塞がらないドミナスと奴隷商人はたちまち兵士に取り囲まれ、剣を突きつけられながら縄を掛けられていく。ドミナスは力に溺れるあまり、領主ゾック卿が口では調子のいい言葉を並べ立てながら保身のためには誰にでも尻尾を振る男だということを忘れていたのだ。

 ルミラは耳の小石に手をやった。

「レオナルドくん、試運転お疲れ様でした」


 パーシャルアーマーを装着したプロトナイトの胸部装甲が展開してレオが操縦室から身を乗り出すと、胴体まで引き寄せた手のひらの上でへたり込むリムの表情が驚きから喜びに変わり、手荒な方法で助け出してしまって怪我をさせなかったかと心配するレオに飛びつくようにぎゅっと抱き締めた。


 その後、逮捕された悪徳商人ドミナスの私財は全て没収となり、港湾施設は国有化、召し上げられた邸宅は立ち入り捜査ののち改装されて、奴隷として働かされていた身寄りのない子供達のための孤児院になった。もっとも、たったこれだけで港湾都市ゾックの抱える社会問題が解決を見たわけではないが、ゾック卿は好機を逃さず、人身売買および不当な奴隷労働の一掃に向け努力することをウェルスランド王と共同で宣言し、孤児院をその象徴とした。

 晴れて王国軍への入隊手続きをすることになったリムは、身元確認の場で自らの正体を明かし、王との謁見を嘆願した。彼女は森の民のレジスタンスの一員だったのである。この話はドミナスと同時に逮捕された奴隷商人の自白によっても裏付けが取れた。ただし、人身売買ルートの捜査の結果はっきりしたのは、帝国が奴隷商人に売り払った森の民の捕虜の中にリムが含まれていたという事実までで、彼女とレジスタンスの繋がりを示す証拠はなかった。囚われの少女が闘技大会で異能を発揮し、正義の王国の助力を得てレジスタンスを勝利に導くなど、考えてみれば出来過ぎたストーリーであり、森の民が味方に付くという餌で大森林に誘い込んだウェルスランド軍を、待ち伏せていた帝国軍が袋叩きにする計略なのかもしれない。この点を重く見た国王はレジスタンスへの加勢にいきなり主力部隊を割くことはせず、その代わりルミラの魔鉱兵部隊がまたも単独行動を命じられたのだった。


 帝国の支配下にある孤立無援の大森林で、味方かどうかも分からない勢力と接触してこいなんて、エリシュさんやクレアさんに説明したらどんな皮肉を言われるだろう?竜人ルミラは自分で作った命令書をぼんやり眺め、目を閉じて独り肩を落とした。……そう、失敗すればここぞとばかりにあげつらわれ、戦果を挙げれば妬まれて危険な任務に回され、部下からは無茶振りをするなと突き上げられ、いずれにせよ、みんなに嫌われてゆくしかないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ