百六話
リリーの過去の話はまだ続く。
「ターニャの義足は完璧だった。東京パラリンピック出場は無理だったけど、次のパラリンピックに希望を繋げたの。でも、義足は完璧すぎた。100メートル5秒フラットで走り抜けたのよ。
あまりに速すぎたので、パラリンピック出場はできないと通達があった。
私とターニャは悲嘆した。毎日泣いて過ごした。
そして、ターニャは私の目を盗んで自殺したの。毒物を使って。
私は嘆き悲しんだ。私も生きてる意味がないと思って、ターニャが使った毒物で自殺したのよ…」
え?じゃぁ目の前にいるリリーは何者なんだ?急に私は怖くなった。
「ふふふ、マコちゃん勘違いしないで。別に私はちゃんと今生きてるわ。人間として生きてると言えるかわからないけど。
私は自殺する前に法医学者をやってる友人に頼んだの。ターニャの検死と私の検死をやってくれと。
そこで、ターニャの体に私の脳を入れてくれと。
普通、そんなことをしたって、生き返りはしないけど、私は死ぬ前に私の脳に脳内チップを埋め込んでいたの。その脳内チップには私の知識をインプットした人工知能が入っている。
ターニャの体に私の脳を移植した後、その脳内チップを起動してくれればいいと、友人に伝えたわ。
私もまさか成功するとは思わなかった。
でもね、そのまま死んだとしても、私は愛するターニャと一緒になりたかった。
それに脳内チップの人工知能があれば、私が生きた証が残される。
そんなことして、公になれば友人は犯罪者になるかもだけど、私の最後のお願いを聞いてくれたわ。
友人には感謝しているわ。
そして脳内チップを起動したら、私の脳とターニャの体は生き返ったの。
私が自殺で死んだのは友人しか知らないので、私の遺体はターニャとして埋葬されてるはずよ。
でも、正確には私の脳は異常がなかったけど、ターニャの体はうまく動かなかった。
ソフトは動いたけど、ハードはうまく作動しなかったのね。
私は友人に手伝ってもらって、ターニャの体を徐々にサイボーグにしたの。
元々ターニャの足は義足だし、後の残りも機械の体にしたわ。
だから人間として生きてるとは言えないのかもしれない。
見た目が変わった私は団体を辞めて、マコちゃんの知ってる研究所でひっそりとアンドロイドの研究に没頭したの。
ターニャの体と一緒になった私は、それだけでも幸せだったけど。
もし、私とターニャの子供がいたらどうだろう?と思って、2人の特性を組み込んだアンドロイドを作った。
それが、晃穂よ。とても可愛い子でしょ?」
晃穂がまさか、そんな経緯で作られたなんて…。
「でも、リリー…さん、晃穂をデリートしようとしてたじゃないですか?」
私は腑に落ちないので、聞いてみた。




