21話 王女と思わぬ事態
本日二話目。
クレア視点です。
そうして、私は賢者様の弟子となったのだった。
……と結びたいところだが、最後に一つの出来事があった。
***
視界が暗転し浮遊感を味わった後には、もう賢者様のコテージの前に私はいた。
これで転移は三回目となる。
しかし一瞬で移動できるということがまだ不思議でならない。
きょろきょろとあたりを見回してしまう。
すぐ横に賢者様、ではなく師匠とウェルティナ――本人に呼び捨てにするように言われた――がおり、私たちの斜め後ろに私の荷物がある。
そして、それをテキパキとコテージに運び込もうとしているアイラがいた。
私と同じようにアイラに目を向けた賢者さ……、師匠が固まった。
やがて目をごしごしとこすり、「……幻覚魔法ではないな」とつぶやいた。
「アイラ、なぜ君までここにいるんだ?」
「? もちろん、殿下の身の回りのお世話をさせていただくためです」
アイラは至極当たり前のことを聞かれたように首を傾げた。
「僕は、ついてくるとは聞いていないが……?」
しかし師匠は目の上に手をやり、頭痛のするように言った。
ええっ! アイラが同行を願い出たとき、私は師匠の許可を得たと聞いたはず!
「アイラ、許可を得たのではなかったのか!?」
「わたくしがウェルティナ様に話をしたところ、『なら、あたしから言っとくわ』と言われたのですが……」
私とアイラ、そして師匠の目がウェルティナに向く。
「あっ」
ウェルティナは口を開けて固まった。
そして目を彷徨わせて、暑くもないのにダラダラと汗をかき始めた。
「わ、忘れてたわ……」
「ウェルティナ……! この間抜け精霊め! そんな大事なことを契約相手の僕に伝え忘れるとはどういうことなんだ!?」
「いろいろとあったから、つい……。というか、間抜けとはなによ!?」
「間抜けじゃなければなんなんだ?」
「ぐぬぬ……!」
師匠とウェルティナの魔力が揺らぎ、せめぎ合い始めた。
この二人の争いに巻き込まれて、私の命はあるのだろうか……?
止めなければ!
「し、師匠、ウェルティナ! それは今置いといてください! それで結局のところ、アイラはここにいてもよいのでしょうか!?」
二人の間に割って入り、師匠に向いて問う。
師匠は一度苦虫を噛み潰したような顔をしたあと、首を振って顔を戻してから言った。
「……とんぼ返りで送り返すのもあれだからな。来てしまったものは仕方ない、か」
「では、アイラがいてもいいのですね?」
「ああ、その代わり仕事はしてもらうけどな」
「ありがとうございます。師匠!」
「もちろんです。何なりとお申し付けください、賢者様」
私は礼を述べ、アイラもメイド服の裾を持ちあげて一礼した。
それを見た賢者様は頷き、言う。
「しかし、そうなると二部屋必要か……。今日も忙しくなりそうだ……」
はあ、と師匠はため息をつき家に向かった。
パッと見では、その背中は頼りになるとは思えないようなものだ。
だが実際は、世界でもっとも頼りになる背中であることを私は知っている。
私はこれからの生活に胸を躍らせて、その背中を追った。
サブタイトル難しい!




