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オラルメンテ コンフリクト  作者: 蒼崎 慶
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 マミさんの写真は、アニメ雑誌などで頻繁ひんぱんに掲載されている。

 ラジオにも出演したり、と、声優はちょっとしたアイドルなみにメディアに出るのが当たり前になっている。キャラソン(アニメの担当キャラクターテーマ曲)を歌ってCDも発売してる。声優はもう、昔のように裏方扱いされていない。


 マミさん主演のアニメを見終わった昼下がり。

 カップ式インスタントラーメンに湯を注ぎ、俺はつぶやいた。

「マミさんの声、ホント可愛いし演技力高いよなぁ。一度でいいから、マミさんの握手会とかライブ行ってみたいよ」


 マミさんに会えたら、元気を分けてもらえる気がする。もしかしたら、学校に行く勇気も湧いてくるかもしれない。

 よく、音楽は人の心を揺さぶるっていうけど、人の声音こわねだってそうだ。聞いている人の心理状態に影響をおよぼす。

 「生きていればいいことがある」とか「希望を失ってはいけない」なんていう表面的な綺麗きれいごとより、アニメの最中さいちゅうに聞くマミさんの演じ声に、俺は励まされていた。


 インスタントラーメンを数分で食べ終え、再び、録画アニメの続きを見ようとしたら、珍しくのインターホンが鳴った。来客か。チッ、めんどくさい。ただでさえ、人の相手をするのが億劫おっくう極まりない心境なのに。

 とはいえ、無視するわけにもいかない。これ以上インターホンを押され続ければ、母さんの安眠を妨害してしまう。今夜も夜勤をひかえるが母は、今はまだ夢の中である。

 変な勧誘とかじゃありませんように。祈りながら、俺は足音を立てずに玄関の扉を開けた。

「こんにちは!速達便をお届けにまいりました。こちらにサインをお願いします」

 四十歳くらいの女性配達員が、元気に言った。

 配達の仕事って、体力的にきつそうだよな。しかも、この人は母さんとそう歳が変わらなさそうだ。子供とかいるんだろうか。なぜ、配達の仕事を選んだんだろう。

 小柄な女性配達員。そんな人でも、立派に社会の役に立ってる。なのに、俺は……。

 受け取ったボールペンで雑なサインをすることで罪悪感を打ち消し、封書を受け取ると、俺は軽く礼をして女性配達員を見送った。

「ありがとうございました!」

 女性配達員の元気な声は、自室に戻っても耳から抜けない。久しぶりに、母さん以外の人と話したな……。

 学校に行かなくなってから、他人と関わることにビクビクしてしまう。


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