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いつもは見せない神妙な顔をした俺に、響は恐る恐るといった感じで尋ねてきた。
「おばさん、病気で寝込んでるって?今朝、先生に聞いた」
「結石だって。すごくつらそうでさ……。母さん、このまま死ぬのかな?」
泣きそうになった俺をどん底から救ってくれたのは響の明るい声だった。
「結石かぁ。俺のじいちゃんが昔なったことあるけど、あれって死ぬような病気じゃないんだって。なった本人は死ぬんじゃないかってくらいつらいらしいけど、根気よく水分摂ってればすぐ回復するよ。心配しなくても、おばさんはすぐ元気になる。じいちゃんも、いまだにピンピンしてるし!」
「響のおじいさんも、結石になったことあるの!?」
単純。俺は、響の言葉ひとつで明るい気持ちを取り戻すことができたんだ。
響とは、一生仲良くいられたらいいな。
俺は、響との友情を再確認した。
母さんが病に伏せたことは気が気じゃなかったけど、病院で適切な治療を受けて自宅療養した結果、母さんの結石は体から無くなり、一週間後には体調も回復した。
響がいなかったら、俺は取り乱すばかりで、まともに母さんの看病なんかできなかったと思うし、響が来てくれた翌日学校にも行けなかっただろう。
中学生になっても、響と俺の友情は変わらないと信じてた。結果から言うと、それはノンキ過ぎる考えだった。
楽観的過ぎたとは思わないが、幼かったから、良い未来像しか浮かばなかったんだと思う。
人は、時間の流れと共に変化し、環境もまた、絶え間なく変わっていくということを、小6の俺は知らなかった。
未来を夢見るのに充分すぎる小学校生活の6年間。一方で、6年間は、世の中の負を知るには足りない、短い時間だった。
物事の全てを真っ正面から受けとめて、全力で生きていた6年間。
俺は、思っていたより弱くて情けない人間だったってことを、中学生になって初めて知った。




