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最初声を聞いた時はクールな子なのかと思ったけど、本当は優しい人なのかな。忙しいだろうに、彼女は急いで片付けをし、お茶やケーキを持ってきてくれた。
昨日末森さんが言ってた魔法使いって、この子のことかな?
ミステリアスな雰囲気、黒いシフォンワンピース。艶やかな茶色をしたボブヘアー。静かでいて、目に映る相手の心情全てを読んでしまいそうな瞳。淡々とした口調を強調するみたいに、彼女をまとう空気は独特のオーラに満ちていて。
こんな女子に、今まで会ったことがない。
テーブルの中央に置かれた水晶玉の存在感も手伝って、彼女が『ミステリアス』を擬人化した女の子に見えてしまう。
クールな顔つきに合うような合わないような、気の強そうな顔のパーツ。
彼女が放つ独特の空気に圧倒され、俺はすっかりこわばってしまった。ただでさえ小心者でコミュニケーションスキルが低くなりつつあるのだから、なおさら、こんな時沈黙してしまうのは仕方がないと思う。
「…………」
「モンブラン、お嫌いですか?それとも、紅茶よりコーヒー、あるいは日本茶の方がよろしかったでしょうか?」
彼女が、テーブルを挟んで俺の向かいに腰をおろし、尋ねてきた。俺は激しく首を横に振り、
「いえっ、どちらも好きです。いただきますっ」
勢いのまま、彼女に出してもらったケーキと紅茶を交互に口にする。ヤバいヤバい。無言を貫いたせいで、誤解されてしまった。甘いものは好きなのに、緊張で全く味わう余裕がない。
こんな時、どうしたら相手に気を遣わせずに済むんだろ。この子に申し訳ないよ、すごく。
「ごちそうさまでした」
代金はいくらになるだろう、なんて、どうでもいいことを考えながら息苦しいほどの緊張感をごまかそうとしていると、
「申し遅れました」
彼女が涼やかな声音で自己紹介を述べた。
「私は大空瑞希と言います。末森さんに許可をいただき、このお店で占いをさせてもらっています」
ミズキ?
そういえば、末森さんが昨日、そうつぶやいてたな。
占い……か。末森さんの言ってた通り、やっぱり、この子は魔法使いなのか?
「ここは占いをするお店なんですね」
色々考えつつ、俺は答えた。
「あ!俺は、望月永音です」
「望月永音さん。ええ、末森さんから伺っております」
こちらがついうっとりしてしまうような笑顔で、瑞希さんは言葉を継いだ。
「私も、永音さんにお会いできるのを楽しみにしていました」
「えっ?」
彼女、さっきまでと全然雰囲気が違う。フレンドリーというか、優しい話し方だ。瑞希さんのおかげで、リラックス状態が少し戻ってきたかも。不思議な子だな。
「永音さん、あの……」
瑞希さんはこちらの顔色をうかがう。
「さきほど永音さんは、店内に漂う煙の匂いを嗅いでしまったご様子でしたが、頭痛や胃の不快感など感じておりませんか?」
もしかして、イチゴシャンプーの匂いのことを訊いてるのかな。だったら、
「はい。特に、何も。体調不良とかはありません」
普段はこんな言葉遣いしないのに、瑞希さんを前にすると、なぜかかしこまってしまう。ちょっと恥ずかしい。タマと接する時みたく、普通に振るまえたらいいんだけど。




