表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オラルメンテ コンフリクト  作者: 蒼崎 慶
38/143


「しかし、外に出るって言ってもなぁ。行きたい場所なんて限られてるし……」

 俺はベッドに寝転び、あくびをした。

望月もちづき。普段、君は何をしてるなりか?」

 望月氏って、俺のことか!?何の前触れもなく急に呼び方変わったな。ビックリしつつ、

「普段は、だいたい家にいる」

「それは分かってるなり。それ以外に、何かないなりか?」

「それ以外?んー、そうだなぁ。たまに本屋に行くかな。ゲームの攻略本買う時とか、ニュートン立ち読みしたい時に。高いんだよな、ニュートン」

「ゲームやアニメグッズには糸目をつけないのに、知識欲を満たすための金銭はケチるなりか、望月氏は」

倹約けんやく家と言ってほしいな。欲しい物全てに金を注ぎ込めるほど、俺はリッチじゃない」

「あれだけオタクグッズを揃えた人間の言葉とは思えないなり。望月氏は『矛盾』という単語を擬人化させたような存在なりね」

 というか、タマは俺のことを望月氏と呼ぶことに決めたみたいだ。さりげなく変えてきたな。まぁ、別にいいんだけど、学校には「(なになに)」なんて呼び方する人いなかったから変な感じだ。


 俺の行動範囲が狭いと知りガッカリしたのか、タマは最終手段と思われる意見を出した。

「望月氏。ミーを買ったお店に通うというのはどうなりか?」

末森すえもりさんの店!?あそこって、通うような店なのか?雑貨屋だってことは見てて分かったけど、店内はちょっと怪しい雰囲気だったし、しょっちゅう買うような物は置いてなかったし……」

 それに、あの店にはテーブル席がひとつしかなかった。末森と名乗るおじいさんがオムライスを食べさせてくれたけど、喫茶店ではないみたいだし。その証拠に、テーブルの上にはカフェとかによくあるナプキンや塩、角砂糖入りのビンは置いてなかった。

「店の名前、『言魂ことだま』だっけ、あそこって何やってる店なんだ?っていうか、今さらな質問だけど、タマは、あの店で売られるのを待ちつつ言魂使い(オラルメンテ)の登場を待ってたみたいなこと言ってたけど、いつからあの店にいたの?」

「それは、もう一度あのお店に行けば分かるなりよ。望月氏の疑問も解決するなり。多分ね」



 翌日の朝。

 夜勤から帰った母さんが眠りについた時間を見計らい、俺とタマは『言魂ことだま』に向かった。

 変装はせず、普通のいでたちで。末森さんは俺の素の格好を知ってるから、飾る必要はないだろう。

 マミさんのトークショーへ向かう時に比べたら、気持ちはだいぶ落ち着いていた。


 タマとの会話が出来るようにと思い、パーカーのフード部分にスマホを入れて出かけようとしたら、タマに止められた。

「ミーは、君以外の人間に正体を知られてはならないなり。だから外ではあくまで“ただのストラップ”。望月氏の私物扱いでオッケーなりよ」

「そうか?じゃあ、スマホと一緒にバッグにしまっとくぞ?」

「いや、それは遠慮するなり!ミーは、窮屈きゅうくつな場所は苦手なりよ。スマホとやらはポケットにでも入れて、ミーを外気がいきにさらしてほしいなり」

「分かったよ」

 スマホにつながれてるってだけで充分窮屈そうだが、そこは大丈夫なんだな。もはや、タマは小動物みたいだ。バッグの中はたしかに暗くて狭そうだもんな。タマのことが、リスとかハムスターみたいに思えてくる。


 一度しか行ったことのない場所。地図もなくたどり着けるのか心配だったけど、記憶をたどってなんとか『言魂ことだま』に到着した。

 やっぱり、店の周辺は静かで、人の気配もなかった。ただ、昨日と違う点がひとつ、店は営業中だった。

「今日は開いてるんだな」

 昨日閉じていたカーテンはすっきりまとめられ、いつでも入って下さいと言うように、店内から柔らかく明るい光がこぼれている。

「これって、入ってもいいってことかなぁ?」

 スマホにぶら下がるタマに尋ねたが、返事はない。外にいる限り、ストラップのフリを貫くつもりらしい。家を出る前まではあんなにしゃべってたのにね。

 ややもの寂しい気持ちで、俺は『言魂ことだま』の扉を開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ