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第26話(3)誇り -コーキとポラリス-

同じ頃 時計塔1階

 幸紀が切り拓いた道を進み、日菜子や焔といった接近戦を得意とするメンバーは、時計塔の入り口で悪魔達を殴り伏せていた。

 飛び道具を持つメンバーたちは、江美の運転するバスに乗り込み、時計塔の周りに、未だに数多く存在する悪魔達を轢き、攻撃を浴びせ、排除を続けていた。


「幸紀さんが敵の指揮官を叩いてくれているおかげで、敵があまり強くない…!」


「でも、幸紀から敵を倒したという報告が来ない…一体何をしているというのかしら…?」


 日菜子が悪魔を殴り伏せながら呟くと、焔も目の前の悪魔を燃やしてから答える。

 四葉も目の前にいた悪魔を斬り裂くと、2人に提案した。


「私が上の様子を見に行きます!」


「待って!ここを維持するのが最優先よ。それに、私たちがここを離れたら、バスを支援できなくなる!持ち場を守って!」


 螺旋階段を上りに行こうとする四葉に対し、焔が制止する。四葉はそれを聞き、足を止めた。


「…承知しました…!」


「大丈夫だよ、四葉ちゃん。幸紀さんなら大丈夫!私たちはここを守り抜こう!」


 日菜子はやはり悪魔を殴り飛ばし、四葉に声をかける。

 星霊隊のメンバー達は、高い士気を保ちながら、悪魔達との戦いを繰り広げているのだった。




一方 時計塔最上階


 1階で激戦が繰り広げられているなか、幸紀は最上階でポラリスと向き合っていた。


 険しい表情のままの幸紀に対し、ポラリスは両腕を失いながらもにこやかな表情をしていた。


「どうした?そんなに恐ろしい顔をして。待つのは嫌いか?」


「ああ」


「なら暇つぶしに話のひとつでもしてやろう。まぁ窓の外の景色でも眺めながら聞け」


 ポラリスは幸紀にリラックスしながら提案すると、窓の外を眺めながら話し始めた。


「そうだな…我ら邪族の話をしてやろう」


 ポラリスがそう声を発する間にも、窓の外では、バスが走り回り、真理子や弥生の銃撃が悪魔達を黒い煙に変えていく。ポラリスはそんな光景を眺めながら、言葉を発し始めた。


「我らが邪族と呼ばれるようになったのは、貴様ら悪魔軍に敗れ、同化するようになってからだ…尤も、そんなのは俺もお前も生まれていない、遥か昔の話だが…」


 ポラリスは殺されている悪魔達と、自分たちの過去を重ねていた。


「我らの先祖は強く抵抗したが、結局は敵わず、悪魔軍に同化され、その中で生きることを強いられた。だが、我らの多くは他の種族と違い、『造魔高炉』で生産することもできなければ、戦闘能力も高くなかった。そのせいで我らは迫害され続けてきたわけだ…」


「『紫虫』…か」


 幸紀はふとポラリスたちに向けられていた言葉を思い出し、口にする。ポラリスは宙を眺めながら自嘲的に笑った。


「ああ、そうだ。それが我らに向けられ続けてきた罵声だ。数も増やせず、ただのうのうと生きていると罵られてきたんだ。お前達が勝手に攻めてきた挙句にな!俺はそれが許せなかった!」


 ポラリスが言葉を強めると同時に、窓の外では氷柱の雨と暴風が吹き荒れ、悪魔達が吹き飛んでいく。

 ポラリスは気にせず話を続けた。


「俺は幼い時から頭が良かった。多くの邪族のものが、俺に期待を託し、最高級の学問を用意してくれた。気づけば俺は実質的な邪族の長だ。彼らの想いに応えるため、何度となく戦場に立ち、功績を挙げ、この立場まで上り詰めた!もう一度、邪族の名誉を取り戻すために!」


 ポラリスは熱を入れて話し続けてきたが、ふと鼻で笑い飛ばした。


「…だがこのザマだ。俺は結局、たった一体の悪魔を葬ることすらできん…幼い頃から俺を守ってくれたフェルカドすらも失い、邪族もほとんど全員死んだ。あとに残るのは俺だけだ」


「哀れんで欲しいのか?」


 幸紀はポラリスに尋ねる。ポラリスは首を横に振った。


「まさか!哀れんでやるのはこちらの方だ」


「…?」


 様子のおかしいポラリスに、幸紀は警戒を強める。ポラリスはそんな幸紀の様子を見て逆に笑い始めた。


「なにがおかしい」


「だってそうだろう?お前はこれから死ぬんだ!にも関わらずその傲慢な態度!自分の立場を何一つわかっていない!こんな滑稽なことがあるか?」


「追い詰められているのはお前の方だ」


「そう思っていればいいさ。もうじきわかるさ」


 ポラリスはそう言って部屋の中にある時計に目をやる。そして再び微笑んだ。


「あと5分か…ここが保つのも同じくらいだろう。楽しみにしておけ、東雲幸紀」


 ポラリスは微笑みを絶やさないまま言い放つ。


 幸紀はそんなポラリスの真意を掴めないままでいた。



時計塔外部広場 バス車内


 江美の運転するバスの中では、結依、弥生、雪奈、紫黄里、真理子といった射撃能力をもつメンバー達がバスの窓から車外に攻撃を続けていた。


「江美さん!もうほとんど敵はいませんよ!」


「そ~ですね~。あ、正面にいるんでちょっと待ってくださいね~」


 江美は結依から報告を受けると、軽い空気感で正面にいた悪魔を轢き潰す。そのまま江美はバスを走らせつつ、さまざまな方向へとハンドルを切った。


「どうですか~?敵、まだいます~?」


「もう外にはいなさそうです!」


 江美に尋ねられ、双眼鏡を手にしていた紫黄里が報告する。弥生も続けて報告した。


「日菜子ちゃん達の方にも敵の姿は見えないよー!」


「あら~、結構早く終わりましたね~。じゃあ手筈通り、日菜子さんたちと合流しましょうか~」


 江美はそう宣言すると、日菜子たちが待機する時計塔の入り口へとバスを走らせ始める。


 緊張が解けたバスの車内では、雪奈がひと息ついて、座席に腰を下ろす。そんな雪奈の頭を、隣にいた真理子が撫でていた。


「雪奈ちゃん、お疲れ様!かっこよかったよ!」


「本当ですか!?ありがとうございます…でも、ちょっと疲れちゃいました…」


「休んで休んで!」


 真理子に言われるがまま、雪奈は背もたれに背中を預け、ふと窓の外を見る。


 時計塔に取り付けられた巨大なモニターが見える。電源は付いていない。


 瞬間、若干のノイズが走ったかと思うと、モニターの電源が入り、グレーのスーツに身を包んだ、真面目そうな中年男性が映し出された。


「え…!?ま、真理子さん、テレビですよね、あれ?」


「う、うん、そうだね。なんで急に復旧したんだろう…?」


 雪奈と真理子は突然の事態に狼狽える。状況に気づいた車内の他のメンバー達も窓からモニターを見上げる。

 江美もバスを停め、通信機で日菜子達に呼びかけた。


「日菜子さん~、時計塔のモニターが復旧して、何かのテレビ番組が映っているようなんですけど、何か知りませんか?」


「え?テレビ?...ちょっとわからないです。今、みんなでそっちに行きますね!」


 日菜子はそう返答すると、一緒に戦っていた仲間達を引き連れ、時計塔の入り口から離れ、バスの近くから時計塔の外部に取り付けられたモニターを見上げるのだった。


『みなさん、こんにちは。お昼のニュース、報道官の一塚(いちづか)です』

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