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第20話(1)ロボット工学研究所-咲来と麗奈-

前回までのあらすじ

 悪魔軍の卑劣な罠により、村人に化けた悪魔たちから攻撃を受けた明宵と雪奈。さらには幸紀にまで攻撃をしたふたりだが、幸紀の機転により悪魔軍の罠を解除、逆に敵を一掃した。

 敵の本拠点を目指す星霊隊の北上は、尚も続く。


6月25日 朝7:00 愛森あいもり県 白泉しろいずみ

 市の中央にあるロボット工学研究所は、すでに悪魔軍に占拠されていた。ここの悪魔軍の指揮官、鬼族の悪魔であるアクラは研究所の外に部下を展開し、自らも研究所の正門の前で部下たちを率いて星霊隊を待ち構えていた。


「お前ら!『星霊隊』とやらはここで止めるぞ!俺たちの手で!留守番役ばっかりやらされてた恨み、全部奴らにぶつけてやれ!」


 アクラは、右手に機械式の腕を取り付けながら部下たちに声を張り、言われた部下たちも威勢よく声を上げて応える。


 そんな光景を上空から見ていたのは、星霊隊の偵察役のひとり、風音かざね咲来さきだった。彼女は風の霊力により空を飛びながら、アクラとその他の敵の数を数えていた。


「2…4…60体はいますよぉ、これぇ…!ま、私みたいなグズには大変だけど、幸紀さんならお茶の子さいさい屁のカッパ…」


「誰だ!!」


「ひぃん!?」


 咲来がぶつくさと独り言を言っていると、咲来の存在に気づいたアクラは、声を上げ、咲来に指を差す。咲来はアクラに背を向けながら、風を吹かせた。


「お目汚し失礼いたしましたぁあ!!私はさっさと消えますんでぇええ!!」


「逃がさん!!」


 咲来が風に乗って逃げようとした直後、アクラは機械式の腕を咲来に向ける。機械式の腕は、ワイヤーをつけた状態で発射され、伸びていく。そうして逃げようとした咲来の足を、飛んできた機械の腕が掴んだ。


「いやぁっ!?」


「落ちろぉ!」


「ひぇえええ!!」


 アクラは機械式の腕を力任せに引っ張り、空中にいた咲来を地面に叩きつける。


「ほわぁああっ!!あうぅん!」


 地面に体を打ち付けられた咲来は、一瞬意識が遠のいたが、すぐに首を振る。そうして意識を保つと、すぐにその場から逃げ去ろうとしたが、アクラの機械式の腕は、ワイヤーを巻き取る。

 咲来は逃げられず、地面を引きずられ、砂だらけの姿になって地面に投げ出された。


「うぅあっ…霊力がなければ即死だったぁ…!」


 傷で汚れた自分の姿を見て、咲来は少し安堵し、痛みを堪える。そんな咲来を、いつの間にか悪魔たちが取り囲んでいた。


「へぇ?じゃあ、なぶり甲斐があるなぁ!」


「ひぃっ!?」


「やれ!」


 アクラの掛け声と共に、悪魔たちは地面に倒れている咲来へと駆け寄ってきた。


「い、いやあああ!!助けてぇえええ!!」


 咲来は自分の身を庇いながら、悲鳴を上げる。

 構わず悪魔たちは、武器を振り下ろそうとした。

 

 その瞬間、悪魔たちの群れの中に、ひとつの人影が上から降り立つと、悪魔のうち数体を斬り捨てる。


 咲来が顔を上げると、そこにいたのは、猫帽子を被った黄色の髪の少女、児玉こだま麗奈れいなが、2方向に伸びるツインソードを片手に、その場に立っていた。


「おぉぉ!救いの女神の麗奈さまぁっ!!」


「A-5007です」


 麗奈は短く、無機質にそう言うと、ツインソードを2本の剣に分離し、迫ってくる悪魔たちを次々と斬り捨てていく。麗奈は自分よりはるかに大柄で獰猛な悪魔たちに襲われても、冷静な動きでそれらを見切り、悪魔たちを黒い煙へ変えていった。


「つ、強いっ!さすが麗奈さん!!」


「ちっ…!」


 部下たちが次々と麗奈に倒されていくのをみて、アクラは冷や汗をかく。しかし、アクラは麗奈の姿を見て何かに気がついた。


「こいつ、ここのロボットか…!なら…!」


 アクラはそう言うと、自分に迫ってくる麗奈を見ながら、咲来の足を掴んでいる機械式の手を操作した。


「ひぎゃああああ!!!」


 突然咲来の体に電流が流れ始め、咲来はあまりの痛みに震えながら悲鳴を上げる。

 同時に、麗奈もアクラに剣を振り下ろそうとしたその瞬間、何かの糸が切れたかのように力が抜け、その場に膝を折って崩れ落ち、しゃがみ込んだ。


「うぐぐがが…れ、麗奈さん…!ど、どうしたんです…!」


「神経回路に規定を超える高負荷を確認。電波発生源を除去して…」


 麗奈が機械的にアナウンスをしていると、アクラは思い切り彼女を蹴り上げ、麗奈をその場にひっくり返した。


「はぁっ…はぁっ…」


 麗奈は荒れた息のまま、その場から動けない。アクラはそんな麗奈に馬乗りになると、麗奈の顔を掴み、まじまじと見つめた。


「ふん!作ってやった分はよくできてるなぁ!えぇ!?」


 アクラはそう言うと、麗奈の頬をビンタする。麗奈の頬が赤くなるのを見て、アクラは高笑いを上げながら麗奈の顔を容赦なく叩いていく。抵抗できない麗奈の様子を見て、咲来は立ち上がり、アクラへと駆け寄り始めた。


「やめろぉおおお!!!女の子の顔をそんなに無茶苦茶にして!!てめえぶっ殺してやらぁああ!!」


「うるさいぞ」


 走り出した咲来に、アクラは冷徹に言い、咲来の足を掴んでいた機械式の手に、もう一度電流を流す。咲来は悲鳴を上げながら、その場に倒れ、痙攣し始めるのだった。


「れ、麗奈さん…!」


「そこで見てな」


 咲来が麗奈に手を伸ばす中、アクラは落ちていた刀を拾い上げ、麗奈の体を触る。動けない麗奈の瞳に、アクラの刀の切っ先が映っていた。


「死ねオラァ!」


 アクラは叫びながら麗奈の胸に刀を突き立てようとする。


 その瞬間、アクラの刀を握る手が吹き飛び、黒い煙に変わった。


「ぬぁああっ!?」


 アクラは痛みに悲鳴をあげながら、麗奈の上から転がり落ちる。そうしてアクラが顔を上げると、そこに黒いロングコートをたなびかせた剣士、東雲しののめ幸紀ゆきのりが、アクラを見下ろしていた。


「な、貴様は…!」


「死ね」


 幸紀は言うが早いか、一切の迷いなくアクラの脳天に刀を振り下ろし、そのまま一気に刀を引き切る。アクラは真っ二つにされたかと思うと、黒い煙に変わり、空のチリになって消えていくのだった。


「ふん、つまらん」


 幸紀はそう呟くと、咲来の足を掴んでいた機械式の腕に刀を突き立て、破壊する。すると、咲来の体に流れていた電気は止まり、麗奈も動けなかった体が動くようになった。


「おぉぉ、救いの神です、幸紀さん!」


「救援、感謝します」


「礼はいらん。それよりも、研究所の中にも悪魔どもがいるかもしれん。動けるなら俺に続け」


 幸紀は短く指示を出すと、研究所の中を目指して足早に歩き出す。そんな幸紀に置いて行かれないように、麗奈は冷静に立ち上がって歩いていき、咲来は慌てて立ち上がって幸紀を走って追いかけるのだった。


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